制服といっても
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第一章
制服といっても
矢追由衣の勤めている会社は県内でも有名な制服を作っている会社であり店も県内に多く持っている、それでだった。
入学前になるとかなり忙しい、それは今年もだった。
「この時期は大変ね」
「そうよね」
「制服の注文も殺到して」
「作るのも売るのも多くて」
「普段よりもね」
「本当に忙しいわね」
同僚達とそんな話をしながら仕事をしていた、はっきりした大きな目と細く長い眉を持っていてピンクの大きめの唇でやや面長の顔である。
背は一六三位であり黒い豊かな髪の毛を奇麗にセットしてメイクも派手だ、胸も脚もかなり目立っている。実は元々ギャルであり今もプライベートでは派手なファッションである。
兎角今は必死に仕事をしていた、毎晩朝早くから夜遅くまでそうしていた、だがそれが終わってだった。
会社全体がほっとした、由衣は桜を見つつ後輩の結城愛黒髪をおかっぱにしている一五〇位の背で垂れ目の彼女に話した。
「いやあ、桜を見るとね」
「終わったって思いますよね」
「一番忙しい時がね」
会社にとってというのだ。
「私達が作って売った制服を着てくれてるのを見て」
「それで、ですね」
「思うわ、これでほっとするわ」
「そうなんですね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「うちの会社六月に仕事入るから」
こう言うのだった。
「また宜しくね」
「六月ですか」
「うちはね」
自分達の会社はというのだ。
「あんたもそろそろそっちに関わって欲しいから」
「そろそろですか」
「服を作るのも上手くなってきたから」
それでというのだ。
「いい頃だし」
「それで、ですか」
「六月お願いね」
「わかりました」
愛は由衣の言葉に頷いた、そしてだった。
六月になるとだ、愛は県内の繁華街に入った、そこはというと。
「あれっ、ここって」
「そうよ、社長さんはうちの社長さんの従弟だけれどね」
それでもというのだ。
「実は同じ会社なのよ」
「そうなんですね」
「うちは学生さんの制服でしょ」
「はい、扱っているのは」
「ここは制服は制服でもね」
それでもというのだ。
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