死海文書
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第二章
「それに獣も出るしな」
「狼とかが出ないうちにな」
「帰るか」
「それでまた明日な」
「ああ、明日ここに来るか」
「そうしような」
こう話してだった。
二人は今は帰った、そしてだった。
次の日二人で洞窟に向かった、当然羊達も一緒である。
そして別の従兄弟に羊の見張りを頼んでだった、洞窟に入ったのだった。
「ここそうした話あるよな」
「ああ。お宝の話がな」
「昔から色々な人が行き来してな」
「暮らしてきたからな」
ヘブライを含めた古代からの中近東の歴史を振り返るとだ。
「そうだからな」
「遺跡とか財宝とかな」
「そんな話多いからな」
「スレイマーンとかな」
ハールーンはコーランから話した、彼等はムスリムなのだ。
「そうした話あるからな」
「ジンが隠したとかな」
ムハマッドもコーランから話した。
「そうした話あるからな」
「昔の人が隠した金銀や宝石」
「そうしたお宝があるからな」
「それじゃあな」
「ちょっと見てみような」
こうしたことを話しながらだった。
二人で洞窟に入りそのうえでだった。
狭い入り口を潜り中に入るとだった。
暗がりに割れた壺を見付けた、その他に八つの壺があった。その壺を見て二人はここでまた話した。
「壺の中調べるか」
「そうするか」
「壺は価値がない様だし割ってな」
「中を調べるか」
「そうしよう」
二人で話してだった。
壺を割っていき調べた、だが。
七つは空で昨日ムハマッドが石を投げて割ったものもだった。
全て空だった、だが最後の一つを割ると。
「巻き紙か?」
「何だこれ」
「十一あるな」
「何なんだ、これ」
「金銀か宝石と思っていたら」
「何でもないな」
「紙なんかいらないよ」
二人共こう話してがっかりした。
「こんなのは」
「全くだよ、けれど古い紙だから売れるかな」
「折角だし売るか」
「そうしよう」
二人でぼやきつつだった。
その羊皮紙の巻きものを持って帰って売った、実際に二束三文だった。
「何でもなかったな」
「がっかりだったな」
二人はこう言うばかりだった、十一巻のうち五巻はヘブライ大学に六巻はギリシア正教会聖マルコ修道院の大主教に売られた。どちらも別に価値あるとは思わなかった。だがある日。
アメリカ=オリエント研究所の専門家が修道院を尋ねてたまたまその巻きものを見て修道院の者に言った。
「あの、この巻きものは」
「どうしました?」
「これはヘブライ語ですが」
それで書かれていたというのだ。
「古代の、そして文体も」
「実は何の文字だとです」
修道院の僧は専門家に困った顔で述べた。
「修道院の誰もがです」
「思われていましたか」
「ですがヘブライ語とはです」
「思われませんでしたか」
「古い文字だとです」
その様にというのだ。
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