妹の胸が
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第二章
「これといってね」
「目立たないか」
「騒がしくもないでしょ」
「まあな、気遣いはあるし心配りは出来るな」
「別に派手でもないし」
「性格はな、しかしな」
ここでまた妹の胸を見た、そうして言うのだった。
「まあな」
「だから安心してよ」
「安心出来ない理由があるんだよ、俺には」
兄として妹の胸を見て答えた。
「それはな」
「それがわからないけれど」
「わからないならいい、とにかくその相手とな」
「会ってくれるのね」
「そうする」
こう言ってだった。
瞭は咲菜が連れて来る彼が家に来るのを待った、両親は妹を信頼していていい人が来ると思っていた。だが。
瞭は警戒し続けていた、それでだった。
その彼がおかしな人間と見たら絶対に交際を認めないつもりであった、それで彼が家に来た時にだった。
まずその彼、寺内知宏一八五のすらりとした背で黒髪をやや長めのスポーツ刈りにしいていて濃く太い眉と大きな耳、頬がすっきりした面長の顔でしっかりとしたピンクの唇と奥二重の黒目がちの目の彼が来たのを受けた。
知宏はずっと紳士的でありかつ受け答えもしっかりしていた、目の光も奇麗で淀みはなく笑う時目はしっかりと笑っていた。
むしろ咲菜よりもしっかりしていた、それで両親はこうした人なら大丈夫だ家の店の店員に雇いたいとさえ言っていたが。
瞭は密かに彼に真顔で言った。
「連絡交換したいけれどいいか」
「僕とですか」
「一度見たがな」
それでもというのだ。
「まだ見極めていない感じがするからな」
「だからですか」
「君と二人で会ってだ」
そのうえでというのだ。
「見極めたいんだ、あいつと付き合っていいか」
「妹さんと」
「そうしたい、いいか」
「そう言われるなら」
それならとだ、知宏もだった。
頷いた、こうしてだった。
瞭は知宏と二人きりで会うことになった、会う場所は彼が指定した通っている大学の喫茶店だった。あえてホームグラウンドに呼んだのだ。
会うのはお互いの講義そして授業が終わってからだ、二人共それぞれのサークルや部活は用事他ならぬこの話があるからと断り。
そのうえでそこで話の場を持った、知宏は時間通りに来た。瞭はその彼に対してまずはこう言った。
「よく来てくれたな」
「はい、約束ですから」
「だから予定時間通り来たんだな」
「約束は守らないといけないですよね」
「若しここであれこれ理由を付けて来なかったり一人で来ないならな」
知宏がそうしていたらとだ、瞭は言った。
「俺は君を絶対に信じなかった」
「そうでしたか」
「特に来なかったらな」
その場合はというのだ。
「特にな」
「約束は守らないといけないですしこうしたことで嘘を吐いたら」
「駄目だな」
「人間嘘を吐く時もどうしてもあると思いますが」
知宏は難しい顔になって述べた。
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