妹の胸が
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第三章
「ですが」
「こうした時はか」
「はい、やっぱりです」
「吐くべきじゃないか」
「そう思いまして」
「約束の時間に一人で来たんだな」
「そうしました」
こう瞭に答えた、二人用の席に向かい合って座りながら。
「僕も」
「じゃあ俺がここで一人でいると思ったか」
「若し怖い人が一杯いるなら逃げてました」
知宏は素直に答えた。
「その時は」
「危ないからか」
「それか大学の警備員の人でも呼んでいました」
「正直だな、君は」
「そうでしょうか」
「全部そのまま言っているからな、じゃあコーヒーでも飲みながら」
喫茶店にいる、それならというのだ。
「話をするか」
「はい、それじゃあ」
知宏も頷いてだった。
二人はそれぞれコーヒーを注文してそのうえで話を再開した、瞭はまずはコーヒーを飲まないで知宏に問うた。
「率直に聞くけれどな」
「はい」
見れば知宏もコーヒーに手をつけていない、瞭に真剣な顔で向かい合っている。
「咲菜ちゃんのことですよね」
「ああ、わかるな」
「はい、ご家族に紹介してもらってからのことですから」
「そうだ、あいつで最初に見たのはな」
それはとだ、瞭は知宏に問うた。
「胸か」
「今も嘘を吐く時じゃないと思いますんで」
こう前置きしてだ、知宏は答えた。
「答えさせてもらいますね」
「そうしてくれ」
「そうでした」
一呼吸置いてから答えた。
「最初はあの胸にです」
「目がいったか」
「はい、そして」
知宏はさらに言った。
「顔も見て。小柄なのも」
「外見からか」
「それでいいなって思って見ていたら」
そうしていたらというのだ。
「性格も明るくて面倒見がよくて」
「よく気が付くな」
「しかも家庭科の調理の実習で作ったクッキーを一つ食べさせてもらったら」
「あいつ実はお菓子作りが得意なんだ」
瞭はこのことは微笑んで話した。
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