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二股はばれる

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第二章

「引っ越したんですよ」
「何でだ」
「いや、彼女と付き合ってたんですが」
「別れたか」
「しかも二人と」
「おいおい、二股か」
「そうなんです、もう毎晩どっちかの娘が部屋に来て」
 そうしてというのだ。
「代わる代わるで」
「それはお盛んだな」
「ええ、それでどっちの娘にもばれないで」
 それでというのだ。
「もう夜になると。アパートの駐車場にどっちかの娘の車が来て停まって」
「それでか」
「本当に交代で」
「二股楽しんでたんだな」
「このマンション壁薄いから激しいと聞こえるんですよ」
 猿渡は少し苦笑いで述べた。
「それで聞こえていて」
「腹立ったか」
「いえ、僕彼女出来たんで」
 このことは素直に笑って答えた。
「ですから」
「それはないか」
「はい、ただある日お兄さんミスりまして」
 それでというのだ。
「両方の娘が部屋の前で鉢合わせして」
「ああ、それでか」
「二股ばれて」
「痴話喧嘩か」
「そうなりまして、最初は女の子同士の喧嘩だったのが」
「お兄さんも出てか」
「自分の部屋の前での喧嘩でしたから」
 だからだというのだ。
「すぐに出て来てそれからは」
「女の子同士からか」
「はい、女の子達がお兄さんに向かって」
「ギッタンギッタンにされたか」
「叫び声が聞こえてきて」
 それでというのだ。
「僕も部屋の扉少し開けて見ていたら」
「それでか」
「最後は髪の短い女の人のスペシャルローリングサンダーが決まって」
「大技だな」
「ロングヘアの人はコールドニースメルチ決めました」
「そっちも大技だな」
「奇麗な五連続パンチとアッパーでした」
 そうしたものだったというのだ。
「それで女の子達怒って帰って」
「別れたんだな」
「お兄さんそれでどうも縁起が悪いと思ったか」
 そうしたことがあったからだというのだ。
「引っ越しました」
「そうなんだな」
「ええ、それで今お隣空き家です」
「また凄いことがあったんだな」
「ええ、付き合うなら一人ですね」
 猿渡はしみじみとして言った。
「そうすべきですね」
「それはそうだな」
「ですよね、肝に銘じておきます」
「俺もそうするな」
 こう返してだった、新田は焼酎を飲んだ。その酒は美味かったが内心ひやりとしていた。そうして二股はすまいと心に誓った。


二股はばれる   完


                2022・2・18 
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