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二股はばれる

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第一章

                二股はばれる
 この時新田保志は自分の勤務先の後輩猿渡清志の部屋で一緒に飲んでいた、彼に休日招待されてだ。
 二人で昼から宅飲みと洒落込んでいた、共に焼酎を飲んで烏賊の燻製やピーナッツをつまみにしている。
 新田は黒髪を短くしていて面長で小さな優しい感じの目をしている。口は小さく痩せていて背は一七四位だ。
 猿渡は新田より三センチ位高く黒髪を左右に伸ばしブローさせている、細長い感じの顔で眼鏡をかけていて新田よりすらりとしている。
 彼は焼酎を飲みつつだ、新田に話した。
「前は先輩のお家で飲ませてもらったんで」
「今日はか」
「僕が招待させてもらいました」
「悪いな」
「悪くないですよ、お礼ですから」
 猿渡は飲みながら答えた。
「ですから」
「そうなんだな」
「今日は遠慮せず飲んで下さい」
「焼酎をか」
「先輩焼酎お好きですよね」
「飲む時はいつもこれなんだよ」 
 新田はその焼酎を飲みつつ笑顔で答えた。
「そうなんだよ」
「そうなんですね」
「大学の時からな」 
 八条大学経済学部出身で今は八条観光長崎支社勤務だ、猿渡は同じ大学だが文学部で二つ下で会社で知り合った。
「そうなんだよ」
「そうでしたか」
「ああ、この味が好きなんだよ」
 焼酎のそれがというのだ。
「しかもアルコール度強いからすぐ酔えるしな」
「そのこともいいですよね」
「そうだよな」
「僕も好きなんですよ、ワインも飲みますけれど」
 それだけでなくというのだ。
「焼酎もです」
「飲むか」
「そうなんです」 
 二人でこうした話をしながら飲んでいった、そして。
 飲みながら話す中でだ、猿渡はこんなことを言った。
「今右隣の部屋空いてるんですよ」
「そうなのか」
「ええ、ちょっと前まで近所のラーメン屋のお兄さんが働いていたんですが」
「あのちゃんぽんの美味いか」
「ええ、あそこのお兄さんが」
「そういえばいるな、若い明るい感じで赤髪の」
「あの人ですね、今もお店で働いてますが」
 それでもとだ、猿渡は飲みながら話した。二人で卓を囲んで胡座をかいて飲んでいる。 
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