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ドリトル先生とめでたい幽霊

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第一幕その三

「織田作之助さんの小説は純文学かというと」
「違うの」
「純文学じゃないの」
「違うの」
「うん、大衆小説と言うか」
 それかというのです。
「娯楽小説とね」
「言っていいんだ」
「織田作之助さんの作品は」
「文学だから純文学かと思ったら」
「そうでもないんだ」
「そもそも小説は読んで楽しむものだね」 
 先生は真面目なお顔で言いました。
「そうだね」
「うん、娯楽だよね」
「肩肘張らずに読んでね」
「楽しむものだね」
「そうだね」
「源氏物語もそうだったしね」
 日本の古典の代表であるこの作品もというのです。
「当時はね」
「娯楽作品だね」
「そうなんだね」
「それで当時の人達も読んでいたんだ」
「娯楽作品として」
「そうだったんだ、そして織田作之助さんの作品も」 
 この人にしてもというのです。
「娯楽だよ、忍者も出るしね」
「あっ、忍者出るんだ」
「そうなんだ」
「それじゃあ忍者が活躍して」
「それでどうかなんだ」
「そうだよ、それも昔の忍者でね」
 それでというのです。
「妖術みたいな忍術も使うよ」
「ああ、昔の忍者ってそうだよね」
「忍者漫画とかね」
「そうなってるよね」
「もう忍術はね」
「何でもありだね」
「空を飛んだり色々変身したり」
 先生は笑顔で言います。
「凄いね」
「本当に妖術みたいで」
「まさに何でもあり」
「忍者と妖術使いの区別がつかない位で」
「とんでもないね」
「そうした忍者も書いているんだ」
 織田作之助という人はというのです。
「だから純文学というよりも」
「娯楽小説だね」
「そうなのね」
「あの人の作品は」
「何かって言うと」
「娯楽なんだ」
「うん、娯楽だから」
 それでというのです。
「読んで楽しいよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと」
「何かあるの?」
「先生としては」
「若くして亡くなったからね」
 このことを残念そうに言うのでした。
「それがね」
「ああ、そのことだね」
「三十代前半で亡くなるのは確かに早いね」
「まさに若くしてだね」
「長生きしていればもっと沢山の作品を書けたのに」
「そう思うとね」
「残念で仕方ないよ」
 若くして亡くなったことがというのです。 
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