歪んだ世界の中で

「あの人と」
「そうだね。千春ちゃんが戻って来て」
「そしてその状況になれば」
「高校も大学も卒業して」　
　その未来をだ。希望も自分から話した。
「就職して二人で暮らせる様になれば」
「その時にですね」
「結婚するよ。何かこう言うとね」
「そう言われると？」
「死にに行く様に思えるけれどね」
　希望はここでは冗談を入れた。それは何かというと。
「死亡フラグみたいで」
「フラグですか」
「うん。そんな感じだよね」
「そうしたフラグは折る為にあります」
「その為になんだ」
「はい、ですからここは折りましょう」
　真人はそうしたものについてはあっさりとだ。こう言って終わらせた。
「そうしましょう」
「そうだね。折るよ」
　希望もだ。笑顔で答えた。
「そんなものはね」
「では折ってそうして」
「幸せを手に入れて下さいね。ではこれからですけれど」
「千春ちゃんのところに行くよ」
「いえ、その前に何か食べに行きましょう」
　真人は希望をそれに誘ったのだった。
「お昼御飯にしましょう」
「ああ、そうだね」
　希望は今昼食のことに気付いた。終業式なのですぐに終わった。まだ昼食も食べていない。それでこう真人に言ったのである。
「じゃあ何を食べに行こうか」
「お好み焼きとかどうでしょうか」
　真人が勧めてきたのはこの料理だった。
「それにしましょうか」
「ああ、お好み焼きね」
「駅前の商店街で」
「ああ、あそこにいいお店があるからね」
「はい。あのお店に行きませんか」
「そうしよう。大阪風でね」　
　お好み焼きには大阪風と広島風がある。希望も真人も神戸の人間であり関西人だ。関西人ならお好み焼きはそれしかなかった。
「それでいこう」
「何枚でも食べられますね」
「そうそう。お好み焼きならね」
「イカも海老も」
　中の具の話もだ。真人はした。
「幾らでも」
「あのお店って安いしね」
「それもいいですよね」
「そうそう。じゃあ」
「はい、あのお店で二人で食べましょう」
「そうしようか」
　二人で笑顔で意気投合してだった。解散の後で二人でその店に向かった。そうしてだった。
　二人でお好み焼きを注文してテーブルの上の鉄板、お好み焼き屋独特のそれで自分達で焼きながらだ。希望は穏やかな笑みで真人に話した。
　早速お好み焼きが焼ける香りがしてくる。その中で言ったのである。
「これを食べたらまたね」
「あの人のところにですね」
「うん、行って来るよ」
　こう言うのだった。
「またね」
「ではそうされて下さい。そしておそらくですが」
「千春ちゃんが戻ってくるのはっていうんだね」
「それは近いですから」
　励ましでもあったがそれ以上にだ。真人自身が感じていることだった。
　このことを今も希望に言うのだった。明るい声で。
「頑張って下さいね」
「もうすぐだと本当にいいね」
「よい行い、素晴しい行いは常によい結果を招きます」
「いいことをなんだ」
「その通りです。ですから」
「千春ちゃんがもう少ししたら」
「遠井君のお名前ですが」
　真人は話題を変えてきた。今度は希望、今彼の目の前にいる無二の親友に対するものに変えてだ。そのうえでこうその希望に言ってきたのだ。