とある3年4組の卑怯者
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53 競演会(コンクール)
前書き
コンクールのリハーサルに参加した城ヶ崎は島根県から来たという雲沢ゆかりという女子に声を掛けられる。彼女と仲良くなった城ヶ崎はお互い頑張る事を誓う。一方、藤木達は夜の大阪の街を歩き、やたらと食べまくる小杉に呆れる。後に城ヶ崎と合流し、食べ物に夢中の小杉を置いて皆はカニ鍋の店へと行くのだった!!!
小杉以外の皆はカニ鍋を楽しんでいた。
「それじゃあ、明日の城ヶ崎クンのpianoの健闘を祈ろうじゃないか!」
「城ヶ崎さん、頑張ってね!」
「皆、ありがとう、頑張るわっ!」
こうして皆はカニを食べるのであった。
カニを食べ終わった後、皆は小杉が歩き回っているのを見つけた。
「お~い、小杉~。帰るよ~」
まる子が小杉を呼んだ。
「え!?何だよ、もっと食いてえのによ!!」
「悪いけどこれ以上遅くなると城ヶ崎クンにも悪いからね、senhor」
「ちぇっ、んでおめえらはどこにいたんだよ??」
「私たちはカニ鍋を食べていたんだけど・・・」
小杉の質問に笹山が答えた。
「何!?カニ鍋だって!?おい、何で俺を外して楽しでんだよ!!おい、俺にも今すぐカニ鍋を食わせろ!!」
小杉は感情的になって怒った。皆が呆れる。
「小杉君、でももうホテルに帰らなきゃいけないんだ。それに城ヶ崎さんのピアノの応援が大事だしね」
長山が小杉に言った。
「うるせえ!!俺は食う為だけに大阪に来たんだ!!城ヶ崎のピアノなんてどうでもいいのさ!!」
「まあっ!失礼しちゃうっ!じゃあ一人で食べていればいいじゃないっ!!」
城ヶ崎は小杉の態度に怒った。
「もういいよ、皆小杉なんてほっといて行こうよ!」
まる子が小杉を放置することを促した。皆が小杉を置いてホテルへ戻ろうとする。
「あ、おい、待ってくれよ!!悪かったよ!!」
小杉が置いてきぼりを嫌って皆について行った。
一行は城ヶ崎と別れ(城ヶ崎とその父は別のホテルに宿泊していた)、ホテルに戻った。夜、部屋分けは長山と藤木、そして小杉の3人の男子はトリプルの部屋、花輪とヒデじいでツイン、リリィと笹山はツイン、そしてまる子・たまえ・野口の3人でトリプルという部屋分けだった。
男子3名の部屋では、長山と藤木が明日のコンクールの話をしていた。
「城ヶ崎さん、どんな曲を演奏するんだろうね?」
「そうだね、コンクールっていうのは課題曲と自由曲があるから課題曲はみっちり練習しているんだろうね。自由曲は一番自信が持って弾けるものだと思うよ」
長山が詳しく解説した。
「そうか、練習の成果が見せられるといいね、城ヶ崎さん」
(その城ヶ崎の演奏をリリィに笹山さんと聴けるんだ・・・。最高だな)
藤木は城ヶ崎のピアノよりも笹山にリリィと一緒に聴くことを楽しみにしていた。なお小杉は興味がないらしく、二人の話に入ってこず、イビキをかいて寝ていた。
リリィと笹山の部屋では、ベッドに入りながら二人が喋っていた。
「城ヶ崎さんは洋琴ホント上手だから羨ましいわ。私もやろうかな」
「リリィさんは何か楽器できるの?」
「ううん、特にないわ」
「そうなんだ・・・。私もピアノは好きだし、私の従兄はフルートを吹けるわよ」
「すごいわね!」
「リリィさんもピアノ習ってみたらどうかな?もしかしたら藤木君も聴きたくなるんじゃないかな?」
「う・・・、そうね。笹山さんは藤木君に喜んで貰いたいって思ったことあるの?」
「そうね・・・。私は、お菓子作るの好きだから藤木君に私の手作りのお菓子をご馳走することかな?」
「羨ましい・・・!私なんて笹山さんみたいにお菓子どころか料理上手くできないし、藤木君にはママの好きな製造者のお菓子をご馳走しているし、だから私も自分でお菓子作れたらいいのに・・・」
「ならよかったら今度ウチに遊びに来て何か作らない?ケーキとかクッキーとかの作り方教えてあげるわ」
「いいの?ありがとう!」
リリィは自分と同じ藤木に好かれている笹山が一枚上手だと感じていた。こうして二人は眠りについた。
翌日、藤木達はマイクロバスに荷物を入れ、全国ピアノコンクールが行われる音楽ホールへと向かった。なお劇場には駐車場はないため、近隣の月極駐車場にマイクロバスを駐車して向かった。
一方、音楽ホールの楽屋では、城ヶ崎と雲沢が再び顔を合わせていた。城ヶ崎は髪をポニーテールにして、父から買ってもらった紫のドレスを着ていた。雲沢は髪を降ろして緋色のカチューシャとドレスと色が統一していた。
「おはよう、雲沢さん、頑張ろうねっ!」
「あ、おはよう、城ヶ崎さん、うん、学校の皆に自慢できるようぎばむよ!」
「『ぎばむ』って?」
「『頑張る』って意味よ」
藤木達は城ヶ崎の父と出会い1階の客席の中ほどの席に座った。こうして全国ピアノコンクールの本番が開会した。コンクールが始まった。初めから、北海道、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の順に各都道府県の代表が現れ、課題曲と自由曲を演奏するという形になった。藤木は笹山にリリィとこの場で様々な代表のピアノ伴奏を聴くことで心を和ませていた。
(皆凄いよな・・・。ピアノがあんなに上手く弾けるんだから、僕なんて無理だよ・・・。スケートなら自信あるけどな・・・)
藤木は次々に出てくる各代表の演奏を聴かされて彼女らが羨ましく思っていた。なお、小杉は退屈に思ったのかイビキをかいて爆睡していた。
その頃楽屋では、城ヶ崎が自分の番が近づいてくることに、心臓の動きが加速するような感覚を覚えた。
(やっぱり緊張する・・・。でも皆が応援しに来てくれるんだから、頑張んなきゃ・・・)
そして静岡県代表である城ヶ崎の番が来た。ステージマネジャーに呼ばれて舞台袖に向かう。そして城ヶ崎はステージに出た。そしてアナウンスが入る。
『続きまして、静岡県代表、城ヶ崎姫子さんです』
皆が拍手した。
(城ヶ崎さん、きばんで!!)
笹山は無言で城ヶ崎の健闘を祈った。城ヶ崎がお辞儀をすると共に自分のクラスメイト達の姿を見つけた。そして来てくれた皆に心の中で感謝しながらピアノの椅子に座るのであった。まず始めに課題曲を伴奏する。城ヶ崎は県の代表が決まった後の稽古から昨日のリハーサルまで必死に練習してきた曲を成果を見せたいという気持ちを持って弾いた。課題曲を終えると次は自由曲の演奏に入った。自由曲は城ヶ崎が今まで引いてきた曲で最も自身のある曲を選んだ。それを自分の誇りのように伴奏する。(爆睡している小杉を除き)鑑賞している藤木達は城ヶ崎の伴奏に聴き惚れていた。
(ピアノを弾く城ヶ崎の姿、可愛いな・・・)
藤木はそんなことを考えていた。
(っていかんいかん、何を考えているんだ!僕にはリリィと笹山さんという人がいるじゃないか!別の女子を好きになるなんて最低だ!)
藤木は己を叱った。
一方、楽屋のモニターから雲沢が城ヶ崎の伴奏の様子を見ていた。
(城ヶ崎さん、やっぱすご・・・。おちも負けられない!!)
後書き
次回:「誇示」
雲沢ががピアノを弾く番が訪れた。己の取り柄のピアノで旋律を奏でる雲沢。そしてコンクールで全ての参加者の演奏が終了する。賞を取るのは誰か。そして城ヶ崎と雲沢、お互いが誇ることは何なのか・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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