とある3年4組の卑怯者
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52 食歩(たべあるき)
前書き
このエピソードに登場する雲沢ゆかりという少女はお気づきだと思いますが名前の元ネタは出雲大社から来ています。最初は嫌味なキャラにしようかと思いましたが、方針を変えました。
城ヶ崎に話しかけた少女は横の髪を流す一方で、後ろはポニーテールにしていた。
「貴女は?」
「あ、失礼。私は島根県の一畑小の雲沢ゆかりよ」
「私は静岡県入江小の城ヶ崎姫子よ」
「おみゃはんのピアノ、すごいわね。おちにはかなわないかも・・・」
雲沢は謙虚に言った。
「そうかしら?」
「うん、おちには、周りから『ピアノ上手い』とか言われるけど、おちにはそれしか取り柄がなくてな。成績は良かったり悪かったりと中途半端だし・・・」
「そんな、自信持ってよ・・・。唯一の取り柄で頑張ったからこうしてここまで来れたんでしょ?」
「そげだらども、おちはピアノがなきゃ何もできないと思ってね。城ヶ崎さんはピアノの他にも可愛いし、学校でモテるでしょ?」
「いや、そんな事ないわよ。ウチの学校の男子はバカばっかよ。掃除中は野球ごっこしてるし、変ないたずらするし、皆ってわけじゃないけどね・・・」
「そうなんだ。男子ってバカよね。おちには好きな男子いるんだけど・・・」
「へえ、そうなんだ」
「同じクラスメイトの男子だけど、なかなか好きって言えないの・・・」
「そうなんだ、でも雲沢さんがピアノ得意だって知ってるの?」
「うん、おちが全国行くって知ったとき『お前ならきっとできる』って励ましてくれたの」
「ふふ、応援してくれるなら頑張らないとね」
「ええ」
城ヶ崎と雲沢は笑いあった。
「私はクラスメイトたちが応援に来てくれるの」
「羨ましいわ。おちは両親とおじいちゃん、おばあちゃんだけだわ」
「でも来てくれるならいいじゃない。頑張りましょうね」
「ええ!」
そしてリハーサルが終わり、城ヶ崎と雲沢は滞在しているホテルに戻るため別れた。そして城ヶ崎は応援に来るクラスメイト達にチケットを配るために父親と共に彼らが泊まるホテルへと向かった。
藤木達は大阪に到着していた。そしてホテルに到着すると城ヶ崎とその父が待っていた。
「あ、みんなっ!」
城ヶ崎が手を振った。ヒデじいが挨拶をする。
「これはこれは城ヶ崎さんと城ヶ崎さんのお父様」
「こんばんは。皆応援に来てくれてありがとうございます」
城ヶ崎の父は皆に応援の礼をした。
「はい、これがチケットよ」
城ヶ崎は皆にコンクールのチケットを渡した。
(これがチケットか・・・。笹山さんにリリィと楽しい一時が過ごせるぞ・・・)
藤木は笹山とリリィとの妄想に耽っていた。
「それじゃあ、everybody、荷物を部屋に置いたら大阪の街を散歩しようじゃないか」
「賛成!」
一同は賛成した。
「うおお~!!大阪の旨いもん、食いてえ~よ~!!」
小杉は案の定大阪名物を食べることで頭がいっぱいだった。野口が小杉に笑っていた。
「クックック・・・」
一行は夜の大阪の街を歩いていた。
「うわあ、凄いねえ。大阪なんて初めてだからワクワクするよ~」
まる子が感激しながら言った。
「うん、大阪には大阪城、通天閣、それに道頓堀などいろいろ有名な所があるんだよ」
長山が説明した。
「へえ~」
一方藤木は笹山にリリィと大阪の街を歩き回ることに感動していた。
(リリィに笹山さんと一緒に歩けるなんて、こんな嬉しい事は初めてだ・・・)
花輪も散歩を楽しんでいた。ヒデじいの車でいつも移動している彼にとっては外の街を歩いて行くという事は珍しい事なので気分転換にもなっているようだった。
様々な食べ物が売っている街路に来ていた。小杉はあちらこちらの店に目を光らせていた。
「うおおお~!!これが食い倒れってやつか!!うおおお~!!なあ、ヒデじい、ここでうめえもん食っていいか!!??」
「え、ええ・・・、どうぞ、此方で食事としますか」
「よお~し!ジャンジャン食ってやる!!」
小杉は早速、お好み焼きを頼んだ。そして串カツを10本ほど貰い、さらにはたこ焼きを20個ほど食べたが、それでもまだ彼の腹は満たされていないようだった。
(まったく、食べ物のことで迷惑かけて、やっぱり来ないで欲しかったよ・・・)
藤木は小杉を嫌な目で見ていた。笹山が藤木を心配して声をかけた。
「藤木君、どうしたの?元気ないけど」
「あ、いや、何でもないさ!はははは・・・」
「藤木君、あそこのお店のたこ焼き食べようよ!」
「え、うん、いいね・・・」
藤木と笹山はヒデじいに頼んでたこ焼きを買ってもらった。そして二人はたこ焼きを食べる。
「うわあ、美味しいや。本場のたこ焼き食べるのは初めてだよ!」
「私も!」
藤木と笹山はお互い微笑みあっていた。藤木は笹山と一緒にたこ焼きを食べる事ができて良かったと思うのであった。
一方、うどんを食べている野口はまる子とたまえに大阪に行きたかった理由を話していた。
「私、大阪に来てよかったよ・・・」
「へえ、なんで?」
たまえが聞いた。
「大阪はお笑いの町としても有名でね・・・。上方の落語や漫才が聞けるのさ・・・。クックックッ・・・」
「へえ、そうなんだ・・・」
まる子が納得するように反応した。
「まあ、今回は城ヶ崎さんの応援が目的だから寄席に行けなくて残念だよ・・・。あーあ、行ってみたいなあ・・・。クックックッ・・・」
(野口さん・・・。まさか本当はお笑いの場所だからって理由で本当は城ヶ崎さんのピアノはどうでもよかったの!?)
たまえは野口を疑ってしまった。一方まる子は何の疑いもせず、「さすがお笑い好きだねえ」と野口を賞賛していた。
「色々食べて回るのもいいけど、最後は皆でカニ鍋で楽しもうじゃないか?」
リリィ、城ヶ崎、長山と歩いていた花輪が提案した。そばにいるヒデじいも賛成する。
「それはよろしいですね。では皆を呼びましょう」
リリィと城ヶ崎がうどんを食べているまる子達を呼び、長山がたこ焼きを食べている藤木と笹山を呼んだ。
「おーい、藤木君、笹山さん」
「長山君、どうしたんだい?」
「皆でカニ鍋を食べようって花輪クンが提案しているんだけど、どうかな?」
「いいわね、行こう、藤木君」
「うん!」
皆は集合したが、小杉の姿がない。
「あれ、小杉は?」
城ヶ崎が周りを見ながら言った。
「ほっといたほうがいいんじゃない?いたらあいつにカニ独り占めされるよお~」
まる子が小杉が邪魔なように言った。
「まるちゃん・・・」
たまえがまる子に注意するように言う。
「ブーッ!クックックック・・・」
野口が笑った。
「そうだね。小杉君がいるとカニが全部食べられちゃうもんね」
藤木が言った。みんながハハハと笑う。
「それじゃあ、小杉クンは他に色々食べているから皆で食べようか、everybody」
なお、その頃小杉は1人で回っていた。
「うおお~!!このホルモン食いてえぜ!!おい、ヒデじい!!あれ??」
後書き
次回:「競演会」
藤木達は大阪の夜でカニ鍋を楽しむ。そしてコンクール当日、城ヶ崎は雲沢と再会し、お互いの健闘を祈る。そして城ヶ崎は緊張の渦に包まれながら演奏する・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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