レーヴァティン
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第二百二十六話 関を通りその七
「そうね」
「ああ、雪の中でもな」
「それはやっぱりね」
奈央は笑って答えた。
「備えをしていたからよ」
「藁沓を履かせてな」
「そして厚着もしているから」
「雪にも負けていないな」
「しかも蓑もね」
これもというのだ。
「着ているから」
「尚更だな」
「そう、確かに雪の中でね」
「雪に足を取られてな」
「雪に視界を防がれてだから」
そうしたことがあってというのだ。
「進むのはね」
「普段とは違うな」
「遅くなるわ、けれどね」
それでもというのだ。
「備えがあれば」
「普通に雪の中を進むよりはな」
「速く進めるわ」
「そうだな」
「やっぱり備えはしておくべきね」
「全くだな、ではな」
英雄はさらに言った。
「敵の予想以上にだ」
「早く会津に着くわね」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「攻められる」
「そうね」
「大砲もな」
重いこれもというのだ。
「多くの馬に曳かせてな」
「進んでいるわね」
「だからな」
それでというのだ。
「いい」
「そうね、大砲の車輪も雪に備えているし」
「尚更だな」
「楽に進めるわ、それじゃあ」
「敵の考え以上に進むぞ」
「そうしていきましょう」
こう言ってそうしてだった。
英雄は進軍をさらに見た、ここで。
今度は峰夫が言った。
「素早く進み」
「そしてな」
「会津若松城に着き囲む」
「そのうえでだ」
さらにというのだ。
「敵の援軍がくるにしてもな」
「城に着くまでに」
「その前にだ」
まさにというのだ。
「攻め落とす」
「そうするでありますな」
「その為にもな」
「素早い進軍はでありますな」
「実にいい」
そうだとだ、英雄は峰夫に答えた。
「進軍はやはり常にだ」
「速くあるべきであります」
「そうだ、だからな」
「このままでありますな」
「進む、沓に蓑までな」
「備えてよかったでありますな」
「全くだ、寒さに耐えられてな」
「しかも足も然程取られない」
「全て備えの結果だ」
「逆に言えば備えをしていなければであります」
「とてもだ」
それこそというのだ。
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