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レーヴァティン

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第二百二十三話 奥羽に目をその五

「この世界での歳月は結構経っている」
「そうなんだよね」
 桜子がカレーを食べつつ応えた。
「これが」
「起きた時から見ると一夜の夢だが」
 それでもというのだ。
「こちらの世界ではな」
「あたし達十年以上いるしね」
「そうだからな」
「あたし達はどういう訳は歳を取っていないけれど」
 それでもというのだ。
「けれどね」
「歳月は流れている」
「そうなんだよね」
「そしてそのことからも考えるとな」
「やっぱりだね」
「こうした先を見据えた政もだ」 
 これもというのだ。
「必要だ」
「そういうことだね」
「だから進めていく」
 英雄の声は強いものだった。
「食育か、これもだ」
「やっていくわね」
「そしてだ」
「海の魔神と戦う時は」
「体格がよくだ」
 そしてというのだ。
「そのうえでよく訓練され装備もいいな」
「そうした兵を率いてね」
「戦う、一六〇センチの者と一八〇センチの者ではな」
「やっぱり体力が違うからね」
「力もな、そして使える武器もだ」
「大きくなってね」
「威力が高まる」
 こう言い切った。
「同じ訓練を受けているとな」
「体格がいいとね」
「やはり強くなるものだ、小さいことが悪い訳ではないが」
「小柄なら小柄でやり方があるわよ」
 奈央は冷静に述べた。
「柔よく剛を制すでね」
「それだ、確かに体格のいい方が強くてだ」
「体力があるにしても」
「小柄は小柄でだ」
「いいものを食べて」
 カレーもその中にあるのは言うまでもない、食育はただ身体を大きくすることだけが目的ではないのだ。
「体力をつけてね」
「頑健な身体にしてな」
「そして素早さを身に着ければ」
「それでいい」
 こう言うのだった。
「それならな」
「そうよね」
「だからだ」
「小柄でもいいわね」
「小柄でも素早さや技があれば」
 そういったものを備えればというのだ。
「強い」
「そう、嘉納治五郎さんも体格はあまりだったのよ」
 奈央は柔道の創始者の話もした、元々病弱であったという。
「けれどよ」
「柔道をはじめてな」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「物凄くね」
「強かったな」
「技があったからよ」
「柔道のな」
「だからね、小柄でもよ」
 一六〇なかったという、また彼の直弟子であり山嵐で知られる西郷四郎も今から見るとかなり小柄であった。ただし当時で一六〇なくともそれ程ではなかった。 
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