僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結
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4-⑻
11月の初め、美鈴も店が休みだと言うので、遊びに行こうと誘いだした。駅で待ち合わせをした時、美鈴は、コーデュロイのベルト付きのミニスカートにショートブーツで現れた。短めのコートを羽織ってはいるが、細めの足が真っ直ぐで、つい、目がいってしまう。
「うふっ こんな格好 蒼に見せたかったんだ 嫌かなぁ?」
「そんなことないよ 可愛いよ でも、正直言って、短いのって、あんまり他の人には・・」
「たまにはね 蒼と歩くんだから、いいでしょ」と、美鈴は、すましていたが、今日は、長い髪の毛も留めて居なくて、一握りだけリボンで結んで、前に持ってきている。僕は、それだけでも、魅せられていたんだ。
美鈴は、行きたい所も無いと言って居たが、少し、紅葉には遅いかも知れないが、嵐山に行くことにした。京都駅まで出て、バスで向かった。駅前は、平日なのに何でこんなに人が居るんだろうと思いながら。嵐山に着いて、僕達は、散策ルートのチラシを頼りに歩いた。着いたのは、もう、お昼を過ぎていて、食べるところを物色していたが、美鈴が「なんか どこも、高くて もったいないよ」と言いながら、歩いた。
結局、竹籠に数個の小さな枡の容器におそうざいを入れて、お弁当のようなものを食べた。美鈴はどれもおいしいと言って、食べながら
「この炊き込みご飯もおいしいわぁー うちでも、たまに出そうかな 日替わりに入っていたら、うれしいよね」と、同意を求めるように聞いてきた。
「そうだね うれしいかな」としか、言いようが無かったのだ。
「そうだよ そう あのね こういう風に少しずつ、お料理を詰めてね、おせち風オードブルを、お正月用に売ろう 予約だけなら、ロス少ないし 良いと思うでしょ」と、
「そんなこと、いきなり決めても・・ メニューとか入れ物とか、準備大変だよ」
「そんなの、何とかなるわよ どうやって、売って行くかよね」
「わかったよ 美鈴は、なんでも決めたら、前に進んでいくだけだもんな 僕も、教えられること多いよ」
「違うわよ 私 蒼に教えられたのよ」
僕達は、その後、ボートに乗りに行った。受付でチラシを見せると割引になるらしい。暖かい日だったのだが、さすがに漕ぎ出すと、風も冷たかった。平日のせいか、僕達の他には、1組が居るだけのようだった。
「蒼と、こうやっているのって すごいね 私、幸せ感じる」
「僕は、もっと もっと 美鈴を幸せにしなきゃ 光瑠にも、言われているんだ」
「そう 明璃ちやんが言っていたんだけど、光瑠 すごく、私のこと心配していてくれて、何かある度に美鈴はどうしているんだろうって、つぶやいていたって、嬉しいわね」
「あいつって すごいよね 頭もいいし、美人だし」
「蒼 あんまり 光瑠に魅かれないでよー ねえ それ 私も漕いでみたい」
「えぇー できるかなぁー」と、言いながら、片方のオールを渡してみた。
「美鈴のほうからだと、押すようにするんだよ」
「そうだよね」と、言いながらも、懸命にやっていたが、ボートは流されるし、僕が漕ぐと同じ所を周るだけで進んでいない。
「あのさー 全然進んでいないよー 岸からも、変なのって、見てるしさー 恥ずかしいよ 美鈴のパンツも見えちゃってるしな」
「わー 蒼 見えてたー?」
「ああ 足開いて、丸見えだもんな」
「そうかぁー 君は見たのか― 紅いの」
「えぇ― 紅だったの― 白かったみたいだけどなぁー」
「蒼 紅いのが良いんだ ふぅーん」
「なんも そんなこと言って無いよ ちょっと 刺激的だったけど」
「嘘だよ 白 刺繍あるやつだけどね うん」
僕達は、ボートから降りて、野宮神社から大河内山荘まで歩いた。その間、ずーと、僕に腕を組んできていた。その後、夕方近くなって、河原町まで戻ってきた。美鈴がお寿司を食べようと言ってきた。
「今度は、私が出すよ 全部、蒼が出してきたから」
「いいよ そんなのー」
「いいの まだ、学生なんだから、無理しないで」と、言って三条通のアーケードの中を歩いた所のお寿司屋さんに入った。
「普段 海鮮には縁がないから、おいしいよね」と、美鈴は言っていた。僕も、そういえば、久々だったかも。お腹すいていたので、いっぱい食べてしまった。
「すまんな 散財させてしまって お店も物入りなのに」
「なに言ってんのよ 生活費と、お店のお金は分けているわよ 心配しないで」と、美鈴はやっぱり、しっかりしていたのだ。
外はもう暗かった。鴨川を歩こうよと美鈴が言い出したので、降りて行くと、うすら寒いのに川辺に座っているカップルも居た。僕達も、座っていたけど冷えてきていて
「今日は、キスをする場所もなかったね」と、美鈴は言いながら、僕のホッペにチュっとして
「もう、帰ろ―」と、言って立っていた。
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