イベリス
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第十二話 四月を過ごしてその八
「自分が気をつけないと」
「駄目ってことですね」
「うん、謙信さんだってね」
その彼もというのだ。
「昔でね」
「そうしたことはですね」
「詳しく知られていなかったけれど」
「それでもですか」
「お酒のことは言われていたね」
「昔からですね」
「飲み過ぎは駄目だって」
身体の毒になるというのだ。
「だからね」
「このことはですね」
「注意しないと駄目だったよ」
こう言うのだった。
「だからこれからどうなるかって時に」
「織田信長さんと戦うか」
「北条家と戦うかね」
「そうしようかって時だったのに」
「倒れてね」
脳梗塞か脳卒中でそうなってしまってというのだ。
「志半ばで世を去ったんだよ」
「そういうことですね」
「人間五十年って言われて四十九歳ならそんなものかだけれど」
当時では若死にとは言えないというのだ。
「やっぱりね」
「残念でしたね」
「凄くね」
こう咲に話した。
「僕も好きだった人だから」
「そうですか」
「残念だよ」
「もっと活躍出来た人ですか」
「お酒さえなかったらね、それで僕もね」
部長もというのだ。
「気をつけていたんだ」
「お酒そして他のこともですか」
「気をつけてるんだ」
「お身体のことは」
「健康のこともね、ただ運動はね」
それはというと。
「好きじゃないから」
「だからですか」
「どうしてもね」
このことはというのだ。
「しないんだ」
「そうですか」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「それはしないけれど」
「それでもですか」
「食べもの、飲みものには」
「注意されていますか」
「うん、それでお酒も」
これもというのだ。
「ワインをよく飲んで」
「日本酒やビールは控えて」
「そうしていっているんだ」
「そうですか」
「食べものもね」
「気をつけていますね」
「出来るだけ糖分は高くない様にしてカロリーやプリン体も」
そうしたことにもというのだ。
「気をつけてるよ」
「健康志向なんですね」
「そうなんだ、ただね」
「ただ?」
「それで料理漫画も読んでるけれど」
「身体にいいものを食べる為に」
「鵜呑みにすることもね」
読んだそのことをというのだ。
「しない様にね」
「されていますか」
「うん、ある料理漫画なんかね」
部長は顔を曇らせてこうも言った。
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