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イベリス

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第十二話 四月を過ごしてその七

「危ないよ」
「あれっ、ビールにお肉に卵にケーキそれにバターって」
 咲はこの組み合わせにはっとなった、それで部長に言った。
「ドイツですよね」
「あそこはジャガイモの上にバター乗せること多いね」
「そうして食べますね」
「あとケーキ発祥の国だし」
「そうでしたね」
「あのヒトラーも好きだったし」 
 それで官邸のシェフ達はよく激務に励んでいるヒトラーに特製のケーキを作って差し入れをしていたという。
「ケーキよく食べるし」
「そうですね」
「卵もよく食べて」
「ソーセージやベーコンがお肉で」
「ハムもね」
「それでビールですね」
「朝食欲がないとビールに生卵入れて飲むから」
 それを朝食にするのだ。
「お茶漬けみたいにね」
「それだと」
「特にビールは朝からごくごく飲むから」
 そうした風だからだというのだ。
「もうね」
「痛風多いんですね」
「その割合は日本よりずっと多いよ」
「やっぱりそうですか」
「あの国の国民病の一つだよ」
 そこまでなっているというのだ。
「実際にね」
「それは深刻ですね」
「歴史的にもなっている人多いよ」
 部長は咲にドイツの痛風についてそのことからも話した。
「実はね」
「そうなんですね」
「カール五世とかルターとかね」
「どっちの人も教科書に出ますね」
「フリードリヒ大王もだったし」
「その人もですか」
「多いよ、スペインの人だけれどカール五世の息子さんのフェリペ二世もね」
 この人物も教科書に出て来るので話に出したのだ。
「なっていたしメディチ家はビールでなくてもファアグラとかいつも食べていて」
「肝臓も悪いんでしたね」
「そう、そのせいでね」
「痛風がですか」
「代々の持病だったんだよ」
「そうだったんですね」
「カール五世は質素だったけれど朝からビールをごくごく飲んでいたそうだから」
 今話しているその酒をというのだ。
「それでなんだ」
「それは駄目ですね」
「だから僕はビールもね」
「注意されているんですね」
「本当になりたくないから」
 その痛風にというのだ。
「あと糖尿病にもね」
「お身体にはですね」
「気をつけているよ」
「そうですか」
「太っていて運動もしていないけれど」
 それでもというのだ。
「最低限成人病にならない位にはね」
「健康には気をつけておられて」
「それでなんだ」
「飲まれるのはワインですね」
「うん、あと死亡率も実は上下二十五位だよ」
「それじゃああまり」
「太っていてもかな」
「深刻でないですね」
「そうだといいね、健康には気をつけないと」
 何といってもという言葉だった。
「危ないからね」
「それはそうですね」
「自分の身体はね」 
 何といってもというのだ。 
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