モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
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特別編 追憶の百竜夜行 其の五
前書き
◇今話の登場ハンター
◇アカシ・カイト
技量は荒削りだがガッツに溢れた狩猟笛使いであり、演奏よりも打撃を優先する新人ハンター。武器は禍つ琵琶を使用し、防具はクルルシリーズ一式を着用している。当時の年齢は18歳。
※原案は魚介(改)先生。
◇レマ・トール
砕けた敬語が特徴の猪突猛進気味な新人ハンターであり、可憐な容姿に反した怪力の持ち主。武器はウォーハンマーIを使用し、防具はボロスシリーズ一式を着用している。当時の年齢は17歳。
※原案はMegapon先生。
◇ミナシノ・ヤクモ
鉄蟲糸技を巧みに使いこなす太刀使いの少女であり、気刃斬りによる高火力斬撃を最大の武器とする礼儀正しい新人ハンター。武器は狐刀カカルクモナキIを使用し、防具は依巫シリーズ一式を着用している。当時の年齢は18歳。
※原案は奇稲田姫先生。
アダイト達がリオレイアの相手を引き受けている間に、他の同期達は門に迫ろうとしているモンスターの排除に動いていた。
彼らも新人らしからぬ技量と才覚の持ち主であったが、それでも百竜の如き群勢を押し返すには至らず、徐々に防衛線は里に繋がる門へと近づきつつある。これ以上引き下がっては、モンスターの攻撃が門に届いてしまうのも時間の問題であった。
「……ちくしょうッ! このままじゃあ門まで接近されちまうぜッ! もう我慢ならねぇ、俺は行くぞッ!」
遥か後方で禍つ琵琶を奏で、仲間達の能力を強化することに専念していたアカシ・カイトも、痺れを切らして演奏を中断している。ハンマーに通ずる鈍器として狩猟笛を振り上げた彼は、猛烈な勢いで転がってくるラングロトラに、真っ向から強烈な一撃を叩き込むのだった。
「ぐおぉああッ!」
あまりの衝撃に赤甲獣はたまらず横転してしまうのだが、アカシも反動で激しく吹っ飛ばされてしまう。クルルシリーズの防具がなければ、転倒する程度では済まなかっただろう。
ふらつきながらも立ち上がろうとする彼を狙い、一足先に体勢を立て直したラングロトラは長い舌を伸ばそうとする。しかしその前に、真横から飛び出してきた別のハンターに、ウォーハンマーIで殴り倒されてしまうのだった。
「全くもー、アカシさんったら無茶にも程があるッスよぉ! ……でもまぁ、そういうガッツあるところはやっぱり大好きッス!」
「……へっ、うるせぇよレマ! 歯の浮くようなこと抜かしてねぇで、さっさとコイツ仕留めるぞ!」
「了解ッス!」
可憐な容姿に反した怪力で、その鉄槌を軽々と振り回すレマ・トールは、快活な笑顔を咲かせてアカシと視線を交わしている。
その身に纏うボロスシリーズの防具を信頼している彼女は、猪突猛進なまでに真っ直ぐな挙動で、ラングロトラ目掛けてウォーハンマーを振り上げていた。アカシも彼女と共に、狩猟笛を抱えて赤甲獣に猛進している。
「でやぁあぁあぁッ!」
「うおおおぉッ!」
彼らはその手に握る武器の火力にモノを言わせ、全力でラングロトラの甲殻を滅多打ちにしていった。2人掛かりの乱打は凄まじい衝撃を齎し、赤い甲殻に亀裂を走らせていく。
だが攻撃に集中するあまり、赤甲獣の身体を中心に黄土色の煙が噴き上がっていることに気付かず――手痛い「反撃」の瞬間が、近づいて来ていた。
「アカシさん、レマさん! お2人とも、深追いは禁物ですよッ!」
だが、ラングロトラの武器であるガスが噴霧されることは、最後までなかった。その前に、砕かれた甲殻の隙間へと太刀を突き込まれてしまったのである。しかもその刃は、赤甲獣に有効な水属性だったのだ。
「ヤクモ!?」
「ヤクモさんっ!?」
「ここは私にお任せください……はぁあぁああッ!」
その太刀――もとい狐刀カカルクモナキIを振るっていたミナシノ・ヤクモは、鉄蟲糸を使って空高く舞い上がると、追撃の一閃を赤甲獣の眉間に振り下ろしていく。すでに彼女の刃の威力は、「気刃斬り」と呼ばれる奥義によって最大限にまで高められていた。
有効な属性攻撃を最大火力で叩き込まれては、防御力に秀でたラングロトラでも持ち堪えることはできない。たまらず倒れ伏した赤甲獣の姿が、その威力を物語っていた。
「ふ、ふぅっ……野郎、まだやり返す気でいやがったのか。助かったぜヤクモ、さすがだな」
「ホントッス! ありがとうございまッス! さっすがヤクモさんッスねぇっ!」
「……うふふっ、あなた達が甲殻を破壊しておいてくれたおかげですよ。攻撃もお礼もピッタリだなんて……やっぱり、お似合いなんですね?」
その勝利の喜びを分かち合い、お互いの健闘を称え合う。そこまでは良かったのだが、アカシとレマの「相性」に触れるヤクモの発言に、2人は顔を真っ赤にさせてしまうのだった。
「えっ!? あ、いや、それはその、ッスね……」
「そ、それより次のモンスターを狩りに行こうぜ! 皆だってまだ戦ってるんだ、こんなところでモタモタしてる場合じゃねぇだろッ!?」
「ふふ……そうですね。では、私達も参りましょうか。ねぇ、レマさん」
「……う、うッス……」
レマはしどろもどろになり、普段の快活さからは想像もつかないほどしおらしくなってしまっている。自分の口から言うのは平気だが、他人に言及されると弱いらしい。
そんな彼女を一瞥するアカシは居た堪れなくなり、慌てて他のモンスターを討伐するべく走り出していく。
「本当に……次に会う時が、楽しみになってしまいますね。うふふっ!」
2人が「収まるところ」に収まるのは、当分先になるのだろう。その先に期待を寄せるヤクモも、愛刀を手に次の獲物を求め、レマと共に駆け出して行った。
この戦いを無事に乗り切れば。いつかは、その「未来」を見ることも出来るのだと信じて。
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