モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
特別編 追憶の百竜夜行 其の二
前書き
◇今話の登場ハンター
◇レノ・フロイト
常に冷静沈着であり、口数は少ないが物腰は柔らかな新人ハンター。武器は鬼斬破を使用し、防具はガルルガシリーズ一式を着用している。当時の年齢は17歳。
※原案はシズマ先生。
◇ナディア・ゴーシュ
ポッケ村を拠点に活動していた新人ハンターであり、穏やかな佇まいに反した胆力の持ち主。武器は討伐隊制式銃槍を使用し、防具はレイアシリーズ一式を着用している。当時の年齢は16歳。
※原案はエイゼ先生。
◇レイン・ファインドール
ドンドルマから駆け付けてきた同期達の1人であり、堅実な援護射撃でアダイト達を支える。武器はハンターライフルIを使用し、防具はイズチシリーズ一式を着用している。当時の年齢は24歳。
※原案はヒロアキ141先生。
◇カツユキ・ヒラガ
カムラの里出身の新人ハンターであり、百竜夜行の報せを受けて武者修行から帰還してきた古風な武人。武器はパラディンランスIを使用し、防具はバサルシリーズ一式を着用している。当時の年齢は23歳。
※原案は⚫︎物干竿⚫︎先生。
◇カグヤ
ユクモ村出身の好戦的な新人ハンターであり、アマツマガツチを討伐した伝説の先輩を目標にしているという。武器はヒドゥンブレイズIを使用し、防具はミツネシリーズ一式を着用している。当時の年齢は19歳。
※原案は未確認蛇行物体先生。
常軌を逸する巨躯を以て、立ちはだかる人間達をその影で覆い尽くす「大物」リオレイア。そんな強大すぎる敵を相手にしているハンターは、1年目の新人であるアダイトただ独り。
それは誰の目にも明らかなほどに、絶望的な状況であり。アダイトの勝利を信じて、バリスタを撃ち続けている里守達も、表情から不安の色を拭えずにいた。
「……済まない、遅くなった」
「レ、レノ……! カムラの里からは1番遠いところに居たはずのお前が来たってことは……!」
「あぁ。ウツシの頼みを断った奴は、1人もいない。……皆、ここにいる」
その流れを変える、ウツシの同期達。彼らの到来は、見開かれたアダイトの瞳にも、希望の焔を灯している。
最初に声を掛けた、ガルルガシリーズの防具を纏うレノ・フロイトは。多くを語ることなく愛刀の鬼斬破を構え、リオレイアと相対する。
そんな彼に続き、同志達は続々とこの戦場に駆け付けてきていた。
「複数のクエストを同時に依頼することで、『4人まで』という縛りを取り除くとは……カムラの里長も、奇抜かつ大胆な策に出られたものですね」
「ナディア! お前、わざわざポッケ村からここまで来たのか……!?」
「あなたこそウツシの案内があったとはいえ、あのミナガルデからよくここまで来られましたね。……でも、私には分かっていましたわ。例え世界の果てからでも、あなたは必ず来るって」
レイアシリーズで全身を固めつつ、荘厳な討伐隊制式銃槍を手に戦線に加わった、ナディア・ゴーシュ。
彼女は訓練所時代から変わらないアダイトの様子に、ため息をつく一方で。度が過ぎるほどの情の厚さ、という彼の美点が失われていないことに喜び、笑みを溢していた。
自分がこれまで狩ってきた雌火竜とは比にならない巨大を目の当たりにしても、毅然と向き合う彼女の佇まいには全く乱れがない。ガンランスを構え、腰を落としたその姿は、もはや歴戦の風格すら漂わせている。
「我々でアダイト達を援護する。準備はいいな、カツユキ!」
「無論だ。某とて、防御に秀でたランスの使い手。アダイト達の盾となり、為すべきことを為すまでよ」
イズチシリーズに身を包み、ハンターライフルIを構えながら素早くリオレイアの背後を取る、レイン・ファインドール。
そんな彼女の要請に応じて、アダイト達の前に飛び出したカツユキ・ヒラガは、バサルシリーズの防御力にモノを言わせる防御体勢を取りながら、パラディンランスIと大楯を構えていた。修行の旅に出て以来、数年に渡って留守にしてきた故郷を、今こそ守り抜くために。
片手剣、太刀、ガンランス、ライトボウガン、ランス。これらの武器を扱うハンター達で包囲すれば、確かに「大物」の戦力にも引けを取らない立ち回りが可能になる。
だが、まだ仕留め切るには「火力」が足りない。そんな新人達の懸念を払拭したのは、翔蟲を操り空から飛び込んできた、1人の大剣使いであった。
「まだまだそいつを狩るには火力が足りないでしょ!? ここはアタシも混ぜなさいッ!」
「カグヤ!? お前、翔蟲が使えるのか!?」
「ふふーん、さすがのアダイトもびっくりしちゃうでしょ! 日頃の修行の成果ってヤツよ!」
好戦的な笑みを浮かべ、アダイト達の前に舞い降りてきたのは、ミツネシリーズの防具を纏う少女――カグヤ。カムラの里からも地理的に近いところにあるという、ユクモ村を拠点に活動していた彼女は、翔蟲の扱いも村の伝承から学んでいたのだ。
かつてアマツマガツチを倒し、ユクモ村を救ったという英雄を目標に、修行に明け暮れていた彼女の背には今。猛者の証である、ヒドゥンブレイズIの刀身が輝いている。
大剣使いも加わった今、アダイト達の火力はさらに盤石なものとなり。ようやく、リオレイアとの戦いにも光明が見え始めていた。
「くッ……! 俺の太刀から逃げ切るかッ……!」
しかし、敵はそれだけではないのだ。最前線で戦っているフゲンでさえも取り逃がしてしまった強力なモンスター達は、今この瞬間もリオレイアの対処に追われているアダイト達を素通りして、一気に里まで迫ろうとしているのである。
里守達も必死にバリスタを撃ち続けているのだが、やはり急造の兵器では火力が足りないのか、決定打を与えられないまま侵攻を許す一方となっていた。だが、レノ達はそのモンスター達を気にすることなく、リオレイアのみに狙いを定めている。
「ま、まずいぜ! この先にはいくつかの柵があるだけで……もうバリスタがないんだ! このままじゃあ、すぐに里まで突破されちまうッ!」
「狼狽えるな里守達よ! この場に馳せ参じたウツシの同期達は、我々だけではないッ!」
「えっ……!? ど、どういうことだよカツユキ。あんた達の他にも、来てくれた奴らがいるのかいっ!?」
「そうだ! ここを抜けて行った連中なら、私達の仲間が必ず止めてくれる。お前達は余所見などせず、直ちにリオレイアの牽制に掛かれ! こいつを倒さねば、いずれにせよ里は火の海だッ!」
「お、おう! そういうことなら、信じるしかねぇな! 援護射撃なら任せといてくれよ、姐さんっ!」
「誰が姐さんだ!」
カツユキとレインが言う通り、すでに他の同期達は途中にあるいくつかの柵の前に陣取り、迎撃体勢に入っている。レノ達がアダイトの前に現れた頃にはすでに、彼らは動き出していたのだ。
睨み合うリオレイアとアダイト達を置き去りにしながら、他の大型モンスター達は群れを成して、「百竜」の如く里の方角へと猛進している。それを阻止できるのはもう、その先に待ち構えているハンター達しかいないのだ。
故に今は彼らの勝利に賭け、眼前の巨敵に集中するしかないのである。その現実を突き付けるかのように、リオレイアは凄まじい猛炎を吐き出していた。
「くッ……! この先の門は、他の皆が守ってくれるって……信じるしかない! 皆、行くぞッ!」
「おぉッ!」
ある者は緊急回避し、ある者は盾で凌ぎ、またある者は翔蟲を利用して跳び上がり。それぞれの手段で火炎放射をかわしたハンター達は、アダイトの号令に応じて声を張り上げ、一気に「反撃」へと転じていく。
ここからは、「狩る側」の番だと言わんばかりに。
「ハハハッ……何が『新人』だ! ウツシめ、とんでもない奴らを呼び込みおって! これは、俺も負けてはおれんなァッ! 気焔……万ッ丈ォオッ!」
そんな勇猛な若者達の姿に、かつてない昂りと喜びを覚えながら。新人達に焚き付けられてしまったフゲンは、その痛快さに笑みを浮かべ、愛刀を大きく振りかざしている。
カムラの里を未来を賭けた死闘は、新たなる局面を迎えようとしていた――。
ページ上へ戻る