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イベリス

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第九話 部活も入ってその三

「楽天ファンなんだ」
「そうなんですね」
「うん、小山さんは何処ファンかな」
「私はヤクルトです」
「セリーグなんだ」
「一家というか親戚も多いです」
「巨人ファンはいないんだ」
 部長は咲に忌まわしい日本の悪性腫瘍であるこのチームはと尋ねた。
「そうなんだね」
「一人もいないです」
 咲はきっぱりと答えた。
「巨人ファンの人は」
「そうなんだ、実は僕の一家もね」
「巨人ファンの人はいないんですね」
「親戚で二人いたけれど」
「いた、ですね」
 咲はすぐに言葉の過去形に問うた。
「ということは」
「最悪な母親とその息子がいたけれど」
「そのお二人が、ですか」
「そうだったけれど母親は癌で死んでね」
「息子さんは」
「今どうなったか」
 視線を右にやりどうかという顔になっての返事だった。
「行方不明だよ」
「そうですか」
「もう死んでるかもね」
 こう咲に話した。
「とっくにね」
「そうですか」
「二人共どうしようもないね」
「ろくでなしだったんですね」
「文字通りね」
 まさにというのだ。
「そんな人達だったから」
「それで、ですか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「僕は巨人ファンにいいイメージないし巨人にもね」
「ないんですね」
「しょっちゅう他のチームから選手を掠め取って」
 これは別所の頃からである、巨人は常にそうしてきて悪辣に戦力を整えてきたのである。これこそ悪である。
「球界の盟主だって威張ってるね」
「それが嫌ですよね」
「うちの学園本校神戸にあるし」
「それで巨人はですか」
「嫌いな人が殆どだよ」
「そうなんですね」
「セリーグだとヤクルトか横浜で」
 この二チームでというのだ。
「パリーグファンの人も多いよ」
「部長さんみたいに」
「そうだよ、ロッテや西武の人が多いかな」
 ファンの人はというのだ。
「楽天よりもね」
「そうですか」
「それで巨人ファンはね」
「少ないですね」
「かなりね」
「そうなんですね」
「それで漫研の野球漫画でもね」
 こちらでもというのだ。
「巨人を題材にしている漫画はないよ」
「ないですか」
「常に敵になっているよ」
「悪いチームですからね」
「そうだよね」
「東京の真ん中で偉そうに本拠地あって」
 東京ドーム、悪の巣である。
「実際球界の盟主顔していて」
「そうなっているので」
「だからね」
 それでというのだ。
「僕も嫌いだし」
「漫研もそうで」
「学園でもね」
「ファンの人少ないんですね」
「幸い今は万年最下位だけど」
 そうなっているというのだ。 
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