それから 本町絢と水島基は 結末
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3-⑵
実家に帰ってきて、数日後、絢から一緒に京都に行ってと連絡があった。お兄さんのお店とお守りの神社に行きたいと言ってきた。
電車の一番後ろという待ち合わせ。でも、何とか会えた。なんか、目立つ女の子が居るなと思ったら、絢だった。白いサロペットの短パンに、キャラメルのニットベスト、短いツバのストローハット 編み上げのサンダルという服装で、左側の耳を出して、イアリングを付けていた。
もちろん、蝶のネックレスも付けてくれていた。割と目立つ服装なだけに、ちょっと戸惑っていたら。
「うふっ こんなの、もう今年までしか着れないかなって思ったんだもの。可愛い?」
「うーん 二度見してしまうよ」
お店は八坂神社のところを上がって、しばらく歩いて、左に入ったところにあった。表には、ピンクとブルーのネオンの看板、ビヤダルに乗っているモンローのスカートが巻き上がっている人形、コークのブリキのプレートとかが置かれ、ガラス越しの店内も片側はカラフルに様々なものが所せましとあって、もう一方は整然と調理器具なんかが並べられている。
店内には、ジーンのツナギの作業服にバドワイザーのエプロン姿、多分お兄さんだろう。もう一人、同じくジーンの短パンにエプロンの女の子が接客していた。3人組の男子高校生だろうか、相手が女の子のせいか、ふざけなから、ステッカーを選んでいる。
「店長さん」と絢が入って行くと、その子たちの眼も一斉に振り返って、絢に注がれていた。
僕は、店内が狭いので、表で待っていたのだが
「初めまして 兄の紳です。よろしく」と言って、手を差し出してきた。僕も、あわてて差し出したのだが、その手は厚みがあって、少し、圧倒された。
「水島基です そのぅ・・ 絢さんとは・・」言葉が続かなかった。
「聞かされているよ 妹から こいつが前を向くようになってきたのは、君の存在が大きかったと、僕は思っている。とにかく、ありがとう。 肩まわりがいいねぇ 水泳やっているんだって?」
「はぁ まだまだ勝てないんですが もう少し練習して・・」
「そうか ああいうのは、限界を超えなければな 僕なら駄目だ」振り返って
「絢 お昼、まだだろう? そこで、スパゲッティでも食べに行くか」
お兄さんは、絢の小さい頃の話、本町家の古い慣習、考え方とかを話してくれた。帰り際になって、絢が何かお揃いの物を持ちたいと言い出して、店に戻って、ディズニーのアリエルとエリックそれぞれのTシャツを選んだ。お兄さんは「お金はいいよ 君達にプレゼント」と言ってくれたので、僕は、それでは悪いなと、バッファローの皮で出来たキーホルダーをお揃いで買ったのだ。
お目当ての神社は、新京極の中程にある。三条大橋を渡って、向かったんだけど、途中、何人かが、絢のことを振り返って見ているのがわかつた。
絢は、お参りの後、古いお守りを返して、新しいのを買っていた。
「お礼して、これからも仲良しでいられますようにってお願いしたんだー。モト君がくれた なかよしお守り この青と紅の蝶々を合わせると、お願いが叶ったんだよ」と、うれしそうに言って、腕を組んできた。
絢は本をみたいと言って、美術の専門書を買った後、僕は、お好み焼きを食べに行こうと、三条の裏通りにあるお店に入った。古くからの店で、高校の時にも、たまに来たことがあった。2階の大きな座敷に案内されたが、時間的なこともあってか、客は他には誰も居なかった。柱とか畳が煙のせいか全体にくすんでいる。
豚玉といか玉を頼んで、分けて食べた。絢はもちろん、こんな風に自分で焼いて食べるのは、初めてだったので、「まだぁ まだなの」とか、裏返した時も「すごーい」と言って、はしゃいでいた。もう片っぽを、やりたいという言うので、やらせてみたが、半くずれで・・。
「ねぇ さっきのTシャツ 着ようよ」
と、絢は部屋の隅に行って「モト君は あっち見ててネ」と言いながら、着替え始めた。僕も、その場でエリックの絵柄に着替えた。絢がサロペットをはずして、「どう?」と言って、僕の前に立ったが、可愛いんだけど、どうも、膨らんだ胸に眼がいってしまう。
店を出るんで、階段の方に向かった時
「なぁー キスして」と、せがんできた。・・・
「うふっ ソースのにおいがする」と、絢がくすっと笑った。
あたりまえだろう 今、食べたとこやんか
大橋のたもとでコーヒーを買って、鴨川の土手に下りて行った。中には、女子高生らしきグループもいるが、多くのペァがお互い少し間隔を開けて、座っている。すきまを見つけて、僕らも座ったが、みんな何を話しているんだろう。
でも、この辺りに居る誰よりも 絢のほうが可愛いと僕は勝手に感じていた。結局、つないだ手が汗ばんできてたが、陽が落ちるまで、そこに居た。
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