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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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ギリギリ+籠城-作戦=逆転の一手





「……とにかく冗談はさておき、や。このままやとヤバいっちゅうのは分かるな? この女たらし」
「はい。もう完璧に、非の打ちどころのないくらいに理解しております。女王様」

 雪蓮たちと漫才を繰り広げていた俺はいつまでたってもラチが明かないからか、隣で黙り込んでいた姐さんに修正ビンタをされることによってなんとか落ち着きを取り戻した。下の方ではまだ孫姉妹がギャーギャー騒いでいるんだけど、今相手をすると俺の首が飛びかねない。さっき手入れしていたからあんまり力こめなくてもスパン! っていきそうなんだよな。
 まぁでも、このままじゃ確かにジリ貧だよね。

「当初の目的通り、弓兵部隊の雨霰作戦でゴリ押しっていうのはどうっすかね?」
「ウチらには補給があらへんからなぁ。矢を使い切ってしもうたらそこで打ち止めやで? その後は打って出るしかなくなる。あんまオススメはせぇへんよ」
「でも敵の半数は殲滅できますよ? 矢が切れたら、全速力で虎牢関まで退却すればいいんですし。個人的には妥当な策だと思いますけど」
「アホかいな自分。敵さんだって間抜けやないんやで? 上空からの弓矢対策なんて、しっかり固めて来とるに決まっとるやろ。よくてせいぜい五分の一が妥当な所や。今のままだと矢の無駄遣いで終わってまうで」
「じゃあこうしましょう。俺に考えがあります」
「なんや。つまらんモノやったら切り伏せるで?」

 そろそろ姐さんの堪忍袋も限界を迎えてきたようだ。ギラリと光る偃月刀の刃を俺の首筋に当てながら言うあたりがなんとも恐ろしい。あれ、確か俺って董卓軍の仲間だったよね?
 しかぁし! 俺とて役立たずではないことを証明しなくてはならんのだ! このまま大人しく首チョンパなんて御免だね!
 虫をも殺せそうな殺気染みた視線で俺を見る姐さんからわずかに目を逸らしつつ、俺は自分なりに考えた精一杯の意見を展開する。

「まず、姐さんが歩兵と槍兵、騎兵をいるだけ引き連れて敵に突撃していきます。敵はあれでもまとまりがないから、これである程度は混乱させられるはずです」
「ほうほう、それで?」
「姐さんたちにはできるだけ敵を殲滅してもらいます。そうすればすぐに敵味方入り混じっての乱戦になるのが予想されますんで、そうなれば俺の思う壺っス。後は――――」
「なるほど、その後に雹霞達がトドメを――――」

「俺と弓兵たちが思いっきり矢の雨を降らせます!」

「ウチらも一緒に射殺す気かこのアンポンタンがぁ――――――――――――っ!!」
「わぁーっ! ちょっと待って姐さん! ストップ! プリーズストップ俺への攻撃!!」
「……何をやっとるんですか貴方達は」

 さんちゃん! 溜息ついてないで止めてよ! このままじゃ雹/霞になっちゃう!
 すっかりハイライトの消えた虚ろな瞳で俺を見る獰猛な関西弁武将だったが、残念ながら俺の対猛獣スキルは素人のソレを遥かに下回るので対処はできないのであった。後は頼んだぜさんちゃん!

「張遼様。孫瑜様が貴女のことをケモノと申されておりますが」
「首と胴体を効率よく真っ二つにしたろか? うん?」
「ひぃっ! 申し訳ありません姐さん! お慈悲を! お慈悲をぉおおおおおおおおおお!!」

 王族に躊躇いもなく刃向けるとか俺どんだけ貫禄ないんだよ! いやまぁ俺が全面的に悪いんですけどね! 仲間ごと全滅させてしまおうとか、首刎ねられても文句は言えないんだけどんね!

「なんや分かってるやないか、じゃあ今から潔く首を差し出してもらおか」
「ちょぉっと待とうか姐さん! 俺は一応汜水関の重要主語武将的な立ち位置だったはずなんですけどねぇ!?」
「心配あらへん。雹霞の後任はさんちゃんにやってもらうさかい」
「了解しました。ということですので、心置きなく死んでください、孫瑜様」
「ここで見せろや男の意地ぃいいいいいいいいいいいい!!」
「じゃあ大人しく真面目に戦わんかい」
「……はい」

 結局男って奴は女には敵わないのか。なんて不憫な生物なんだろう。涙が出ちゃうよ、だって男の子だもん!
 だがしかし、やはりこのまま籠城するのも無理があるのではないか。向こうはほぼ無限の兵力を持っている。一番妥当な策としては、ある程度狙撃で敵数を減らしてから攻め入るっていうのだな。

「まぁ、それしかないやろうな。このまま籠城しとっても、その内門を崩されて侵入されてまうし」
「ですね。じゃあまずは油と火矢の用意をしますか。火災でも起こせば少しはマシでしょうし」
「混乱に乗じて殲滅しやすくなるしな。いいで、その作戦でいこか」
「じゃあさんちゃん。弓兵部隊に伝えてくれる? 出来るだけたっぷり油を塗った火矢の準備をするようにさ。連合軍の奴らを炙ってやろう」
「承知しました」

 そういうとすぐに走り去っていくさんちゃん。うん、優秀な部下がいると楽でいいね。
 ま、弓矢での攻撃が終わった後の白兵戦に向けて、俺は俺で新武器の製作に励んできますかね。

「それじゃあ俺は『アレ』の仕上げに行ってきます」
「おー。できるだけ仰山作ってきてぇな。数は大いに越したことはあらへんしな」
「了解です」

 たぶんだけど、この時代では絶対にあり得なかった武器だろう。これさえ使えば少しは戦況がひっくり返るかもしれない。
 やれることは全部やってやる。それがたとえ雪蓮達を悲しませることになっても、俺には守らなければいけない人がいるんだから。




 
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