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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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俺×姐さん÷孫呉-さっちゃん=あーもー帰りたい!






 大陸中から集まった反董卓連合軍。自分達の名を上げようという目的が主だからか、さすがにその軍勢は目を見張るものがあった。すげぇ、最後尾が全然見えねぇんだが。

「大したもんやな袁紹も。まさかここまでの数を率いてくるとか、夢にも思わへんかったで」
「そう言っている割には戦いたくて仕方ないって顔してますよ、姐さん」
「あ、わかるん? いやー、華雄ちんがいない分ツッコミに自分を割り当てなくてえぇから、自分に素直になってるんやろなぁ。いやはや、ウチも華雄ちんのこと言えへんで」
「まぁ華雄さんに比べればいくらか可愛いもんでしょうけどね……」

 なっはっは! と豪快に笑う霞姐さん。身体を揺らすごとにでかい双丘がブルンブルンと揺れるもんだから、俺としては目のやり場に困ると言ったところだ。呉にいる時もそうだったのだが、いい加減耐性がついてもいいんじゃないかと思う今日この頃である。なんでだろ、なぁんか落ち着かないんだよな。
 ちなみに猪武者として名を馳せている猛将華雄さんは、現在虎牢関にて待機してもらっている。最初はやっぱり「私が先陣を切って連合軍を壊滅させてやる!」とか言っていたのだが、全員で必死に説得させてもらった。華雄さんは確かに強いが、さすがにあの軍勢を相手にして勝てるとは到底思えない。しかも考えなしに猪突猛進を繰り返すから作戦も何もあったもんじゃないんだよ。
 というわけで、ここ『汜水関』には現在俺の軍と姐さんの軍、後はねねから少し分けてもらった弓兵の皆様が待機しているのでした。うん、こういう落ち着いた冷静な人達がいるとこっちも助かる。無駄に神経をすり減らす必要がないのがいいところだ。
 それにしても……

「一番前にある牙門旗……『孫』って書いてあるけど、アレ明らかにウチの奴らだよな……」

 参加するとは思っていたが、なにも先頭に来ることはないだろうに。あの位置取りだと最初に兵を放ってくるのが我らが呉軍ってことじゃないか。俺としては仲間を殺したくはないんだけど。
 冥琳のバカァー! 何考えてんだよこの年増! 嫁き遅れー!

「雹霞? 急に叫び始めてどうしたんや。孫呉に向かって悪口言っとるんか? この状況での挑発行為はあんまり推奨できへんけど……」
「そういうわけじゃないんですけどね。まぁ聞こえてないでしょうし、構いませんよ。ちょっとばかり故郷の頭が固いクソババアに鬱憤を晴らしていただけですんで。はい、モーマンタイです」
「や、別にえぇけどな。せやけど、たぶん今の叫び声、バッチリ届いてしまってるで? いきなり孫呉勢が騒がしくなってきとるし」
「……マジですか?」
「大マジや。ほら、見てみ?」

 姐さんに促され、ゆっくりと物陰から顔を覗かせる。先ほどまで緊迫した空気が流れていたはずの連合軍側は――――

『殺す! 殺してやる! 出て来い雹霞ぁ! 八つ裂きにして長江に投げ捨ててやる!』
『お、落ち着いてください~! 冥琳様が取り乱してどうするんですかぁ!』
『えぇい離せ穏! あのバカはあろうことか私を【年増】扱いしたのだぞ!? 祭じゃあるまいし、同年代に年寄り扱いされる謂れはない!』
『冥琳、ちょぉっとこっちに来てもらえるかの? 今のことについて少し聞きたいことがあるのじゃが』
『あ、あぁいやこれはえと……』
『言い訳はいいから早く来るんじゃこの大馬鹿者がぁあああああああああああ!!』
『う、恨むからな雹霞ぁああああああああああああ!!』
「…………えーと」

 なんか俺のせいで内部分裂が始まってないか? 冥琳がトサカに来てるって結構ヤバいことだと思うんだけど。怒りに任せて雪蓮けしかけてきたりしないよな?

「このバカ……なにやっとんねんドアホ……」
「えー……まさか聞こえるとは思わなかったんですけど……」
「武将の聴力嘗めてると痛い目見るで、自分」
「それは今ので痛いほど分かりました。俺たぶん、今日確実に死にますわ。幼馴染に刺されて」
「大陸で五本の指に入るくらい悲しい死に方やな、ソレは」

 姐さんは同情交じりに俺の肩をポンポンと叩くと傍に置いてある飛龍偃月刀の手入れを始めた。もうすぐ入用になるから丁寧にしておかないといけないしな。いきなり刃こぼれとかされてもシャレにならないし。それに姐さんほどの実力者ともなればそれなりに強い武将とぶつかるのは至極必死のこと。それを考えれば、手入れするのに越したことはないのだろう。ただでさえ人員不足の董卓軍だ。少しでも敵を殲滅しておきたいというのが本音のところ。まぁここは一応かの有名な汜水関だし、そう簡単に落とされるとは思えないけどさ。

「……ぉ、なんか動き始めたみたいですよ。姐さん」
「んぁ? おー、自分とこの軍からけったいなやつが出てきたやないか。強そうやなー」

 のんびりと言う姐さんだったが、俺は一人冷や汗をかいている最中である。冥琳め、本当に無茶なことを……。
 今まで行動を起こさなかった連合軍側だったが、どうやら話し合いが終わったらしく、孫呉軍から一人の武将が騎馬に乗って俺達の方へと向かってきていた。桃色の長髪に赤を基調としたセクシーな装束。その瞳には強い確固たる意志が讃えられ、腰に差してあるのは孫呉の名剣、南海覇王だ。
 わーお、まさか雪蓮本人が出てくるなんて予想通りを通り越してもはや予言レベルじゃないか。そんなに俺を殺したいのか冥琳よ。さっきの発言がよっぽど堪えたみたいだなぁ……。

「……ちょっと待ちぃな雹霞。なぁにこっそりと逃走準備始めとるんや自分は」
「ごめん姐さん。ちょっと虎牢関に用事思い出しちゃってさ。ちょっとばかし時間がかかるけど、一人でなんとか持ちこたえてください!」
「アホ抜かせ! 無理に決まっとるやろが! この勢力差やぞ!? 瞬殺オチで笑えへんことになる!」
「でもこのままじゃ俺は幼馴染になぶり殺しにされちゃうんですよぉー!」
「今更その程度のことで泣き言抜かすなやこのヘタレ! 月ちん守る言うたんは自分やろ!?」
「おっと失礼。少々取り乱してしまったようです。弓兵に攻撃準備をするように言ってください。指揮は俺がとります」
「月ちんの名前が出た途端に変わり身早すぎやないか!?」

 なにを言うんだ姐さん。俺は月様を守る従順な騎士(ナイト)として、騎士道精神に溢れた紳士的かつ男らしい防衛を見せるだけですよ。
 キランと歯を輝かせれば姐さんは若干顔を赤らめつつもなんとか引き下がってくれる。おぉ、さすがは古来より伝わる女殺しの秘技。イケメンじゃない奴が使ってもこの威力とは、恐ろしいぜ……。
 俺達が悪ふざけしている間に雪蓮は関の目と鼻の先まで接近していた。南海覇王を振り上げ、堂々とした面持ちで口上を垂れ――――

『いい加減に戻ってきなさいよこの馬鹿雹霞ぁああああああああああああああ!!』

「…………」
「…………」
「…………え、いきなり意味不明なんですけど」
「ウチに聞くなや。自分の親族やないか」

 いきなりの馬鹿発言にまったく着いていけない董卓軍の皆様プラス俺。こういうときって普通戦口上で相手の士気を削ぐか挑発して籠城をやめさせるってのが定番の戦法じゃなかったっけ? なんで俺は最愛の従姉に罵倒されてんだろうか。
 雪蓮はなんかリミッターが外れてしまっているのか、顔を真っ赤にして次々と悪口を捲し立てていく。

『私に告白しておいて次の日にいなくなるなんてどーゆーつもりよ! 一回だけの情事で満足するとでも思っていたわけ!?』
「おいこら口を慎めバカ領主! それはこの場で言うべきことじゃあない!」
『なによ! 結局何か月も手紙一つ寄越さないくせに! こっちがどれだけアンタの帰りを心待ちにしていると思ってるの!? 蓮華なんて、アンタがいないことが寂しすぎてアンタの布団で【ピー】しているくらいなんだからね!』
「はっ? え、えぇっ!?」
『姉様ぁああああああああ!! なんで言っちゃうんですか! もうなんかいろいろとマズイですって! 諸侯たちや兵の皆が私を見る目が生暖かいんでもうやめてくれると嬉しいんですけど!』
『なによ蓮華! こんなのまだ序の口じゃない! この前なんて布団に身体を擦りつけ過ぎたせいで雹霞の部屋中に貴女の体液が――――』
『黙れ! 今すぐその口を閉じて戻ってきてください姉様! それ以上言われると私が兄様に嫌われちゃいます!!』
『大丈夫よ。アイツはそういうのもアリだから』
「ちょっと待てや雪蓮んんんッッッ!! 俺の性癖を異常改造するんじゃねぇ!」

 いきなり出てきて何を言いだすかと思えば、身内の暴露大会かよ! 確かに色んな意味で効果抜群だけどさ! 蓮華の本性とかエロい性格とか知れたのはなんか嬉しいけども! 素直に喜べない上に周囲の人達に悪印象を与えちまっているような気がするんだよ雪蓮!

「雹霞……自分そんなに最低な奴だったんかいな……」
「誤解だ姐さん! これは陰謀なんだよ! 俺は清廉潔白な、純情少年なんだから!」
「いや、それはそれで嘘つきすぎでしょう雹霞様」

 おぉっと思わぬところからツッコミが来たので驚きが隠せないぜ。孫瑜軍が誇る奇跡のツッコミ役、歩兵隊長通称【さんちゃん】(男)は江東特有の褐色肌に冷や汗を浮かべながら俺に対して素晴らしい対応を見せてくれている。生まれが同じなだけあって、俺の扱いが上手いなさんちゃん!

「ですが、孫策様の言ってることも一理ありますよね。勝手に城を飛び出して敵軍の客将になっているんですし、そりゃあ周瑜様始め孫呉の皆様がお怒りになるのも仕方がないかと」
「やめるんださんちゃん。そのタイミングでの追い打ちは俺の心を崩壊させかねない。今結構ギリギリな戦で踏みとどまってるんだから、フォローしてくれないと」
「孫瑜様は国に帰っても孫策様達との蜜月があるから降参するのも一つの手ですよ?」
「くぅっ! なんかそれでもいいかもって思ってきている自分が情けない!」
「いやマジで困るんやから勘弁してぇな雹霞! 人手が足りないって言ったばかりやで!?」

 ごめん姐さん。今俺割と揺らぎまくってる。後一押しで董卓軍ごと孫呉に降っちゃうかもしれない。

「傍迷惑なことを素面で言うなやボケェエエエエエエ!!」

 



 
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