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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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Mission:15 玉座

仲間達に背中を押された2人は、休むことなく通路を駆けていく。

ダックビルモールはマッシモが、ラフレシアンはマリノとシナモンが、ナインテイルズはゼロとアクセルが抑えてくれた。

仲間達の想いに応えるためにも、自分達は負けられない。

玉座の間に着いた瞬間、2人は目の前の男に武器を構えていた。

「イプシロン!!」

「貴様の企ては…リベリオンはもう終わりだ!!」

ルインがZXセイバーを、エックスがターボバスターを構えながらイプシロンを睨むが、バスターとセイバーを突きつけられてもぴくりともしないイプシロンの表情は、バイザーの奥の瞳から固い意思と決意を持ってエックスとルインを見据えていた。

あの時と同じように、最強のイレギュラーハンター達を前にしても恐れることなく、しかも他を圧倒するその威圧感はまさに強者揃いの反乱軍を統べる覇者に相応しかった。

「イレギュラーハンターか…」

エックスとルインを見据えながら、立ち上がるイプシロン。

「…ミサイルの超フォースメタルを回収し、我らが“牙”を奪ったと考えているならそれは間違いだぞ?」

「…どういうこと?」

イプシロンの言動にエックスとルインは疑問を抱いた。

スカーフェイスもそうだったが、イプシロンはエックス達が超フォースメタルを回収したことに何の疑いも抱いていない。

「(スカーフェイスも言っていたが、リベリオンが超フォースメタルを回収した訳ではないのなら、一体誰が超フォースメタルを…?)」

エックスが思考を巡らせようとした瞬間、イプシロンは身に纏ったマントで隠された胸の動力炉部分に触れた。

「超フォースメタルはまだここにある!邪魔なお前達を排除し、次にこの我が身をミサイルの弾頭としよう!!」

「なっ…!?」

「あなたは正気なの!?」

エックスとルインはイプシロンの発言に目を見開いた。

自らの身を滅ぼしてまで理想を実現しようとするのは正気の沙汰とも思えないが理想に燃えるイプシロンの瞳は冷静であり真剣そのものだ。

止めなければと、エックスは無意識にバスターを構えていた。

「そんなことはさせるものか!!」

武器エネルギーはフルの状態で放たれたショットは凄まじい勢いでイプシロンに向かっていき、イプシロンに直撃するかと思われた瞬間に何者かが乱入した。

突然の乱入者に流石のイプシロンも目を見開いた。

「スカーフェイス!?」

イプシロンの前に、スカーフェイスが両手と両足を広げて立ちはだかっている。

ターボバスターの最大威力をまともに喰らったにも関わらず、大してダメージを受けていない。

「総統。この場はお任せください!!あ奴らは…エックスとルインは戦いの中で成長する力を持ちます。ここで戦っては、いかな総統といえ必ず勝てる保証はございません!!」

「そこを退けスカーフェイス!この私が負けるというか!!」

「総統さえご無事なら、リベリオンは滅びません!!」

スカーフェイスはイプシロンの憤りを前にしても退こうとはせずに訴えるスカーフェイスの姿は、エックスやルインの目にもイプシロンを守ろうと必死に見えた。

「イプシロン総統は我らリベリオンの理想そのものです!どうか、ここは生き延びる道を…!!」

「逃がさないよイプシロン!!」

スカーフェイスの言葉を聞いた瞬間、ルインはセイバーにエネルギーをチャージしていた。

僅かでもイプシロンかスカーフェイスが動く素振りを見せたら斬り掛かりそうな勢いだ。

「あなた達の理想のために死んでいったレジスタンス達の仲間、そして自分を犠牲にして私達の命を繋いでくれたスパイダーの想いに応えるためにも!イプシロン!スカーフェイス!あなた達を倒す!!」

スカーフェイスはこちらにゆっくりと振り返った。

彼の左手にツインビームランスの柄が握られており、闘志と決意を漲らせながらスカーフェイスは再びエックスとルインの前に立ち塞がった。

「総統をお護りするが我が信念…とくと見ろ!!」

迎え撃とうと身構えたルインの前に、咄嗟にエックスが前に出た。

「スカーフェイスは俺にやらせてくれないか?ルイン」

「エックス?」

「スカーフェイスとは前に一度戦った。奴の手もある程度把握出来た。」

ルインはエックスの瞳を見る。

決意に満ちた瞳を見て、長年エックスの傍にいたルインはこうなったエックスは止められないことを知っている。

ルインはセイバーを下ろすとエックスを見上げる。

「エックス」

「ん?」

「…死んじゃ嫌だよ?」

「…大丈夫、ありがとう」

エックスはハイパーモードを発動してXファイア状態となると、変化したコレダーを構えるとスカーフェイスもツインビームランスを構えた。

「エックス、最早我々に言葉など必要あるまい」

「ああ」

互いに全身から凄まじいエネルギーを身に纏いながら、同時に武器を向けた。

「受けよ!プラズマボール!!」

「シェルバスター!!」

ショットとプラズマ弾がぶつかり合い、相殺された。

「はああああっ!!」

「でやあああああっ!!」

コレダーとツインビームランスが何度もぶつかり合う。

しかし元来射撃型であり、ハイパーモードで底上げしたとしても純粋な近接戦闘型であるスカーフェイスにはパワーで劣るために、スカーフェイスの猛攻に徐々に追い詰められていくエックス。

「Xコレダー!!」

スカーフェイスのツインビームランスの刺突を屈んでかわしながらコレダーによる一撃を繰り出す。

「むっ!?」

咄嗟にツインビームランスで受け止めたスカーフェイスは流石と言うべきだろうが、エックスとて受け止めるのは予想していた。

「喰らえ!シェルバスター!!」

零距離で放たれたショットには流石のスカーフェイスもかわせずに直撃を受ける。

「小賢しい真似を!英雄の名が泣くぞ!!」

一瞬で姿を消したスカーフェイスに対してエックスもダッシュで離脱しようとするが僅かに遅かった。

「せいっ!!」

エックスの背後に回ったスカーフェイスがツインビームランスを振るい、肩口から脇腹を斬り裂く。

「ぐあっ!?」

「強い…以前とはまるで違う。超フォースメタルで能力を底上げしたの?」

「…そうだ。スカーフェイス、フェラム、ボロックは三幹部として選ばれた際に超フォースメタルによる改造と少量の超フォースメタルを与えたのだ。」

「…逃げないの?スカーフェイスが時間を稼いでいるのに…」

「逃げる気はない。我が理想を成し遂げるには貴様らは避けては通れぬ壁。それに…」

イプシロンはエックスとスカーフェイスの戦いを黙って見守る。

何があろうと絶対に手出しをしようとしないのはイプシロンは腹心に絶対の信頼を置いているからだ。

「エックス…負けないで…」

祈るようにスカーフェイスの攻撃を捌いていくエックスを見つめるルイン。

「プラズマランサー!!」

ツインビームランスに凄まじい雷を纏わせながら突っ込んで来るスカーフェイスにエックスは咄嗟に屈んでかわすと必殺技を繰り出す。

「チャージコレダー!!」

フルチャージのエネルギーをスカーフェイスに叩き込む。

この攻撃のみ無属性だが必殺技の名に恥じない威力を持ち、Xコレダーよりも痛烈なダメージを与える。

「ぐおおおおおっ!!?」

「まだまだあっ!!シェルバスター!!Xコレダー!!」

スカーフェイスの見せた隙を逃すようなへまはしない。

弱点の炎属性攻撃を叩き込み、スカーフェイスに確実にダメージを蓄積させていく。

「(強くなっている…私との戦いの中で恐るべき速度で…これが100年前、かつての最強のイレギュラーハンター・シグマが言っていたレプリロイドの始祖たるエックスの無限の可能性というわけか……)」

エックスの成長速度は最早異常だ。

今のエックスは超フォースメタルで強化したスカーフェイスの力を上回りつつある。

「うおおおおおっ!!」

一気に仕留めようとXコレダーを繰り出すエックス。

スカーフェイスもツインビームランスで受け止めてコレダーを弾き、勢いよく弾かれたエックスは体勢を崩した。

「終わりだっ!!」

エックスの首を跳ねようとツインビームランスの光刃がエックスの首に迫るが、エックスは上体を動かすことでギリギリのところで回避する。

「何っ!?」

すぐに体勢を立て直して再びシェルバスターをスカーフェイスに当て、更に残っていたメガファイアまで投擲して追加ダメージを与える。

「ぐああああああっ!!」

弱点属性を立て続けに喰らって吹き飛ぶスカーフェイスは体勢を立て直し、プラズマ弾を連射するがエックスはコレダーを構えてシェルバスターで相殺する。

「(このままでは…これだけは使いたくはなかった…やむを得ん!!)はあああああっ!!」

「!?」

「受けてみよ!!超電磁ブレイカー!!」

ツインビームランスを高速回転させ、スカーフェイスの放った電磁波がダッシュを使う暇すら与えずエックスを包み込むと、エックスのエネルギーがスカーフェイスに吸収されていく。

「ぐっ!?こ、これは…俺のエネルギーを…!?」

身体を襲う虚脱感に、エックスは膝をつく。

早く離脱しなければともがくのだが、スカーフェイスの電磁波はそれを許さない。

「いくら貴様でも超電磁ブレイカーの電磁波からは逃れられん。終わりだ、エックス」

「ぐっ!!」

迫り来るスカーフェイスに膝をつきながらも睨むエックスだが、エネルギーを吸収されたことでコレダーを構える力もない。

「(ここまでなのか……)」

体から力が抜けていき、最早立つこともままならない。

スカーフェイスとエックスの距離は徐々に縮まっていき、諦めかけたその時である。

「エックスーーーーッ!!」

「っ!!」

ハッとなり、視線を彼女に向けると今にも駆け寄りそうになるのを必死に耐えている彼女の姿があった。

「負けないで!最後まで諦めたりしないで!!」

「っ…そうだな…ここで諦める訳には…いかない!レイジングエクスチャージ!!」

エックスの全身から凄まじいエネルギーが迸る。

レイジングエクスチャージのエネルギーにエックスのフォースメタル・Xハートが共鳴を起こしたことで更にレイジングエクスチャージの力を高めていく。

「な、何!?」

「スカーフェイスの超フォースメタルを超えるエネルギー値だと…?」

イプシロンが僅かに目を見開いた。

スカーフェイスに与えた超フォースメタルはボロックやフェラムよりも大きい物だ。

それを上回るエネルギーを発しているエックスに流石のイプシロンも驚きを隠せない。

エックスはコレダーを構えると、レイジングエクスチャージで強化されたエネルギーがコレダーに収束されていく。

「はあああああっ!!」

「何という計り知れないエネルギー…」

超電磁ブレイカーの電磁波の影響を今でも受けているにも関わらず、エネルギーが減少するどころか増している。

これから繰り出すエックスの一撃は凄まじい威力を誇るものだろう。

生半可な威力ではないのは見て分かるが、しかし避ければ確実にイプシロンも受ける。

スカーフェイスも超電磁ブレイカーを中断し、吸収したエネルギーも全てツインビームランスに収束させていく。

「チャージコレダー!!!」

「プラズマボール!!!」

スカーフェイスの全てのエネルギーが込められたプラズマ弾にエックスが突撃し、大爆発を起こす。

しかしレイジングエクスチャージの力で護られたエックスがプラズマ弾を突き破り、コレダーでスカーフェイスの胸を貫いた。

「勝った…」

「我が力…及ばず…」

ルインが目を見開きながら呟き、コレダーに貫かれたスカーフェイスは途切れ途切れに言った。

コレダーで貫かれたスカーフェイスはよろめきながらエックスから離れ、ルインは急いでエックスに駆け寄った。

スカーフェイスは貫かれた胸を押さえながら少しずつ後退していくが、膝をつかなかったのはせめてもの意地か。

「我が力は…貴様に及ばなかったか…だが、イプシロン総統がいる限り…リベリオンは滅びん…リベリオンに…栄光あれ!!」

次の瞬間にスカーフェイスは爆散し、エックスは目を逸らさず見届ける。

忠義に生き、主君であるイプシロンのために信念を貫いたスカーフェイスの生き様を。

「お前の信念…しかと見届けた。…だがスカーフェイスよ。私はここから逃げる気はない!何故ならこれは…我が理想を成すに避けて通れぬ道故。リベリオン総統・イプシロン…参る!!」

エックスとルインの前に立つイプシロンの掌から超フォースメタルの光が放たれた。

「何てパワーなの…これがイプシロンの超フォースメタルの力…!?」

「しかし、怯んでばかりはいられない!行くぞルイン!!」

イプシロンから放たれる威圧感にエックスとルインは息を飲んだが、すぐにルインはハイパーモードを発動させ、エックスはゲインHYPERを使用してエネルギーを回復する。

「行くぞ!!」

「ここまで来たら出し惜しみなし、ハイパーモード・OXアーマー!!」

エックスはコレダーを、ルインは拳を構えてイプシロンに突撃する。

「Xコレダー!!」

「チャージナックル!!」

2人の攻撃がイプシロンに迫るが、イプシロンは動くそぶりすら見せず、2人の一撃がイプシロンに叩き込まれる寸前。

「甘いわ!!」

イプシロンの周囲にエネルギーバリアが張られ、エックスのコレダーとルインの拳を弾いた。

「なっ!?」

「バリア!?」

「超フォースメタルが常時発する強大なエネルギーはそれ自体が強固なバリアとなり、その程度の攻撃では突破することは不可能。」

「馬鹿な…」

「フェイタルアタック!!」

「ぐっ!?」

愕然となるエックスだが、イプシロンは一瞬でルインの目の前に現れると強烈な蹴りを繰り出してルインを吹き飛ばす。

咄嗟に防御したのにも関わらず吹き飛ばされてしまった。

「ルイン!くそっ!シェルバスター!!」

イプシロンにコレダーを向けてショットを数発放つが、全弾当たっても超フォースメタルのエネルギーバリアに微細な罅を入れるだけで終わる。

「ほう…超フォースメタルのエネルギーバリアに罅を入れるとは大した威力だ…。だが…」

「っ!?」

「メタクラッシュ!!」

イプシロンの掌から伸びる光の帯がエックスを拘束すると、超フォースメタルのエネルギーを拳に収束させた一撃をエックスに叩き込む。

「がはっ!?」

あまりの威力にハイパーモードを発動したエックスのXファイアの強化アーマー越しでさえ意識を失いそうになったエックス。

「この…滅閃光!!」

Ωナックルを地面に叩き込むと、放射状に貫通性能の高いエネルギー弾を炸裂させる。

しかし滅閃光の貫通力を持ってしてもイプシロンのバリアは貫けない。

「そんな…滅閃光も通用しないの!?」

「灼熱の業火を受けるがいい!ドギガファイア!!」

「っ!!」

咄嗟に後ろに跳躍してドギガファイアを避けると自分が先程までいた場所に発生した業火の凄まじい熱に戦慄する。

時間経過でイプシロンのバリアが修復されていく。

「ぐっ…レイジングエクスチャージ!!チャージコレダー!!」

レイジングエクスチャージで自己治癒と能力強化をし、フルチャージの必殺技を繰り出す。

「むっ?」

チャージコレダーはバリアに阻まれたが技の性質上、修復途中のイプシロンのバリアに更に罅を入れていく。

レイジングエクスチャージで強化されたチャージコレダーで後少しと言ったところか。

修復速度を上回る勢いで休まず攻撃を与え続ける事が出来ればイプシロンに攻撃を当てる事も可能だ。

運良くXファイアは追撃を苦手としていたエックスの弱点を補えるのが幸いした。

「Xコレダー!!」

罅が入った箇所にコレダーを叩き込むと音を立ててバリアは粉砕された。

「っ!!」

バリアは粉砕され、コレダーがイプシロンに炸裂する。

「今だ!!ダブルチャージウェーブ!!」

駄目押しとばかりにルインがダブルチャージショットとソニックブームを繰り出す。

Xコレダーとダブルチャージウェーブが同時に直撃したのだから流石のイプシロンもただでは済まないはずだ。

「見事だ。超フォースメタルのバリアを破るとはな」

煙が晴れるとマントが焼け焦げ、マントに隠されていたイプシロンのボディが露になる。

イプシロンのボディは完全ではなかった。

超フォースメタルのエネルギーがアーマーから漏れており、背部のユニットからは無数に伸びたコードの束がある。

まるで無理矢理接続を引き千切って出てきたかのような姿だった。

「未完成なのにあの強さなの…!?」

「気をつけろ、奴の強さはまだ未知数だ」

エックスは警戒しながらコレダーを構え、ルインもまたアルティメットセイバーを構えた。

「シェルバスター!!」

「温いっ!!」

ショットはイプシロンの掌によって掻き消された。

しかし、一瞬の隙を突いてルインがホルスターに収められたセイバーを2つ同時に抜き放った。

「ダブルチャージセイバー!!」

チャージセイバーの2連発。

負担は凄まじいが、高い威力を誇るチャージセイバーを同時撃ちし、イプシロンの胴体に傷をつける。

「フェイタルアタック!!」

しかしイプシロンも負けてはおらず、追撃を繰り出そうとするルインに鋭い蹴りを繰り出して吹き飛ばす。

「シェルバスター!!」

ジャンプで空中に移動していたエックスがショットを放つ。

完全に不意を突いた一撃でイプシロンにはスカーフェイス程のスピードはないと判断したのだが。

「舐めて貰っては困る」

イプシロンは巨体からは信じ難い身のこなしでエックスが死角から放ったショットを簡単に回避して見せたのだ。

「なっ!?」

「ドギガサンダー!!」

広範囲に落ちる雷を受け、エックスは地面に墜落する。

「この…アースクラッシュ!!」

「メタクラッシュ!!」

高エネルギーを纏った拳がぶつかり合うが、力負けしたのはルインの拳だ。

ルインの拳から腕にかけて亀裂が入っていく。

「ーーーーーーっ!!」

腕を押さえて声にならない悲鳴を上げるルイン。

ルインのアースクラッシュの威力は決して低くはない。

しかし超フォースメタルの力を持つイプシロンを前にしては力不足過ぎるのだ。

「打ち砕いてくれる!!」

再びメタクラッシュを繰り出そうとするイプシロンだが、エックスが間に割り込む。

「チャージコレ…」

「させんっ!!」

必殺技を繰り出そうとするエックスだが、イプシロンに腕を掴まれ阻止されてしまう。

「っ!!」

「その技は相手に接触しなければ使えん。ならば、腕を掴んでしまえば使うことは出来ん。」

イプシロンがエックスの腕を握り潰そうと力を込める。

「ぐああああっ!ぐっ、シェルバスター!!」

激痛に思わずエックスは叫ぶが、何とか痛みに耐えながらシェルバスターを放つことに成功する。

「ぬっ!?」

「はあ…っはあ…っ」

力が緩んだ隙を突いて距離を取り、荒く息をしながらイプシロンに握り締められた腕を撫でる。

もしシェルバスターを放っていなければ確実に右腕は潰されていた。

「エックス…」

「ルイン…腕は大丈夫か?」

「大丈夫…と言いたいけど。ごめんなさい、あまり無茶は出来そうにないよ」

亀裂の入った腕を庇いながら立ち上がる。

イプシロンはシェルバスターを至近距離でまともに喰らっても大して応えてはいない。

「中々やるな…だが、超フォースメタルの真髄。お前達が真に味わうのはこれからだ」

「何っ!?」

「オメガフォース!!」

イプシロンは体内の超フォースメタルを暴走させ、更にパワーを上昇させていく。

「そ…そんな…。イプシロンのエネルギーが上昇している。意図的に超フォースメタルを暴走させているのか…?」

「受けるが良い。このイプシロン最大最強の一撃を!!ノヴァインパクト!!」

超フォースメタルのエネルギーを超圧縮させたエネルギー弾が2人に迫る。

「くっ!!」

ルインを守るように防御体勢を取るエックス。

庇われているルインも何もしないよりはマシだと、PXアーマーに換装してバリアを展開した。

「如何に防御を固めようと、超フォースメタルの力を前にしては紙の楯同然」

イプシロンの放ったエネルギー弾の威力はエックスの予想を大きく凌駕していた。

「ば…馬鹿な…っ!?」

次の瞬間、エックスの表情が驚愕に歪む。

エネルギー弾の直撃は避けられたが、防御体勢を取っていたエックスをルイン諸とも余波のみで吹き飛ばしたのだ。

「ぐあ…っ!!」

「くっ…!!」

床に叩きつけられたエックスとルインが呻く。

「何てパワーなの…あのシグマやルミネもここまでは…っ」

目の前にいるイプシロンはパワーにおいては、シグマやルミネを上回っていた。

気付けば超フォースメタルのエネルギーバリアも復活していた。

「バリアが復活して…っ」

「くそっ!もう一度だっ!!チャージコレダー!!」

もう一度バリアを破壊しようとチャージコレダーをぶつけるものの、エックスの必殺技を受けても罅すら入らないバリアに思わず愕然となる。

「如何に貴様でも今の超フォースメタルから発生するバリアの突破は至難の業。ドギガブリザード!!」

絶対零度の冷気がエックスに襲い掛かるが、咄嗟に防御したことでダメージを最小限に抑える。

「リミッター解除!オーバードライブ!!喰らえ!!」

バスターショットからセミチャージショットを連射する。

OXアーマーはオーバードライブを発動すればセミチャージショットを連発出来る。

しかし、チャージコレダーですら罅を入れることが出来なかったバリアを破ることは出来ない。

「フェイタルアタック!!」

「ぐあっ!?」

防御を物ともしない強烈な蹴りを受けて吹き飛ぶエックス。

「テラサンダー!!」

「あああああっ!?」

ドギガサンダーを遥かに上回る雷撃を受けるルイン。

「(く、くそ…何て強さだ…これでは例え万全な状態であっても…)」

エックスはスカーフェイスとの戦いで相当消耗したが、OXアーマーを発動したルインと組んでいるにも関わらず圧されているのだ。

「く、くそ!シェルバスター!!」

挫けそうになる戦意を何とか保ちながらショットを放つが、超フォースメタルのエネルギーバリアには歯が立たない。

「チャージセイバー!!」

片腕で繰り出すが、イプシロンのバリアに弾かれてしまう。

今のイプシロンには生半可な攻撃は通用しない。

「(くそ、出来ればもうレイジングエクスチャージを使いたくなかったが………どれ程負荷を掛けた所で最早同じか…)レイジングエクスチャージ!!」

3回目のレイジングエクスチャージで能力を底上げしてコレダーを構える。

「行くぞイプシロン!俺の全身全霊を以てお前を倒す!!」

「ほう…流石は伝説のイレギュラーハンター。その名に恥じぬ姿だ」

どれだけ凄まじい力の差を見せても決して挫けない姿にイプシロンは称賛する。

「チャージコレダー!!」

コレダーにエネルギーをフルチャージし、再びイプシロン目掛けて突進する。

「ぬうっ!?」

チャージコレダーはバリアに弾かれたが、レイジングエクスチャージで威力が強化された一撃はバリア越しでもイプシロンに僅かな衝撃を与える。

「超フォースメタルのバリア越しに衝撃を…だが、一度防いでしまえば…」

「何度でも!チャージコレダー!!」

「馬鹿な、連発だと!?」

この戦いで初めて、イプシロンの目が驚愕で見開かれた。

体勢を戻してレイジングエクスチャージで強引にコレダーのエネルギーをフルの状態に持っていく。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

バリアを粉砕せんと、何度でもチャージコレダーを連発するエックス。

流石にチャージコレダーの連発にはバリアも耐えきれなかったのか亀裂が入り始めた。

「くっ!!」

「ぐっ…!うわああああああ!!」

チャージコレダーとメタクラッシュがぶつかり合うが、力負けしたのはエックスだ。

「っ…!!」

チャージコレダーを相殺した方の腕に亀裂が入る。

しかし、腕に走る激痛に構わずにイプシロンはエックスに追撃を仕掛けようとしたが、エックスの他にも凄まじいエネルギー反応を感じた。

「放てルイン!!」

「喰らえイプシロン!これが私の放てる最高の技だ!裂光覇!!」

極限までエネルギーを収束させた拳を地面に叩きつけると、滅閃光を遥かに上回る威力と貫通力を持つ光がイプシロンに降り注ぎ、バリアに亀裂が広がる。

ルインは損傷に構わず両腕にエネルギーを収束させた。

「ダブルアースクラッシュ!!」

両の拳から放たれたアースクラッシュがイプシロンのバリアを粉砕する。

反動によってルインの右腕が粉砕され、無事だった左腕に亀裂が入る。

「馬鹿な!?」

「エックス!!」

「チャージコレダーーーーッ!!」

無防備なイプシロンのボディにコレダーのエネルギーを叩き込む。

「ぐあああああああああっ!!」

流石のイプシロンも効いたらしく、勢い良く吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

「はあ…はあ…」

流石に限界なのかエックスのハイパーモードが解除されてしまう。

「(何と言う威力だ。まともに受ければこれ程の威力とは…だが…)我は…負けぬ!!」

全身に走る激痛に耐えつつも無理矢理に立ち上がり、超フォースメタルのエネルギーを圧縮させる。

「受けよ!ノヴァインパクト!!」

イプシロンの超フォースメタルの超圧縮エネルギー弾がエックスに迫る。

「っ!!」

「エックス!!」

ルインの声に振り返ると、ルインが残った左の拳を構えながら前に出て、彼女の考えを理解したエックスも頷いてバスターを構えた。

「裂光覇っ!!」

「チャージショットっ!!」

かつての戦いでエックスとゼロが使った合体攻撃。

エックスの放ったチャージショットに裂光覇のエネルギーが吸収されていき、強大な一撃となってイプシロンのエネルギー弾と激突し、相殺された。

そしてルインの左腕も砕けてハイパーモードが解除された瞬間、エックスの手にルインのセイバーが渡され、エックスはダッシュでイプシロンとの間合いを詰めた。

「行けーーーっ!!」

「うおおおおおおっ!!!」

今の自分が出せる一撃をイプシロンに喰らわせ、セイバーはイプシロンの胴体に深い裂傷を刻んだ。

「エックス!ルイン!!」

「あ…っ」

「イプシロンが…」

エックスがイプシロンに致命傷を与えたのと同時にゼロ、アクセル、マッシモ、マリノ、シナモンが到着した。

「みんな…無事だったんだね…」

「ああ、ナインテイルズも、ラフレシアンも、ダックビルモールも片付けたよ。」

「プレオンはマッシモさんが殆ど倒してくれました。残りはレジスタンスの皆さんが相手にしています。」

「そう…」

安堵の笑みを浮かべると、ルインはイプシロンを見遣る。

「ぐっ…ナインテイルズ…ラフレシアン…ダックビルモールが敗れたか…見事だ…」

エックスやルイン、ゼロ達を前に、とうとうイプシロンは膝をつき、自身の敗北を認めたのである。

長きに渡るレジスタンスとリベリオンの戦いに終止符が打たれたのだ。  
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