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レーヴァティン

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第百九十五話 東国攻めその八

「麦飯に抵抗がないな」
「はい、これといってです」
「麦飯には抵抗がありません」
「むしろ幕府に入るまでは麦飯が多く」
「慣れているので」
 それでとだ、幕臣達は口々に答えた。
「麦飯もこうしてです」
「我等は食えます」
「他には稗飯も食えます」
「そちらも」
「俺は稗飯は知らない」
 英雄はこちらの食事についてはこう述べた。
「食ったことがない」
「左様ですか」
「稗飯はどうにもです」
「麦飯は美味いですが」
「それよりも遥かに味が落ち」
「どうにもです」
「そうなのか、麦飯は前から好きだが」
 それでもと言うのだった。
「しかし稗飯はな」
「それが粟でも同じかと」
「やはり五穀で稗や粟はです」
「味が落ちます」
「米よりも」
「そして麦よりも」
「そうか、だからこの浮島でも食わないな」
 英雄も納得した。
「民達も」
「それよりも芋を食っていますね」
「薩摩芋なり馬鈴薯を」
「そうしたものを食っていますね」
「そうだな」
 英雄も頷いて述べた。
「稗や粟よりも」
「芋の方がよく採れますし」
「しかも育てやすいので」
「民達もそうしていますね」
「しかも腹持ちがよくだ」
 英雄は芋についてさらに述べた。
「栄養もある」
「特に薩摩芋がそうですね」
「あれは非常に身体によいです」
「痩せた土地でも多く採れることもあり」
「あれだけいい食いものもそうはないです」
「だから多く作らせている」
 芋達もだ、これは幕府の政の一環でもある。
「そしてだ」
「食わせています」
「民達にふんだんに」
「今も麦飯と共に食わせています」
「あれは実にいいものです」
「あれを食えばな」
 芋をというのだ。
「もう稗や粟よりもだな」
「そうなります」
「味もいいので」
「どちらの芋も」
「そうだな、兎に角身体にいいものをたらふく食う」
 このことがというのだ。
「そこからだ」
「政はですね」
「そして戦も」
「そうなりますね」
「脚気は一人も出さないことは」
 これは絶対だった。
「だからだ、いいな」
「麦飯を食わせる」
「後は西の浮島のパンですね」
「あれも食わせますね」
「時折な、パンはこの浮島ではあまり人気がないが」
 主食はあくまで米だ、この認識はこの浮島においては絶対と言っていいまでのものだ。そこまでこだわりがあるものということなのだ。 
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