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戦国異伝供書

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第百二十八話 僧籍の婚姻その十二

「崇伝殿も天海殿もな」
「公方様の傍にいる」
「今はまさに左右の腕となっていて」
「知恵袋となっている」
「その方々ですな」
「幕府において」
「あのお二人の衣も袈裟もじゃ」
 僧が着るこれはというのだ。
「全て闇の色じゃ」
「左様ですな」
「そしてそれはですな」
「その門徒達と同じですな」
「思えば」
「うむ、そしてな」
 顕如はさらに話した。
「他ならぬ織田家に津々木殿という方がおられたな」
「弟殿の傍にいた」
「出自のわからぬ御仁ですな」
「その御仁も闇の衣を着ていたとか」
「その色の」
「それもな」
 どうにもというのだ。
「拙僧としてはな」
「そのこともですな」
「気になる」
「そうなのですな」
「お二方についても」
「都の者に調べさせよ」 
 顕如は剣呑さを感じる声で言った。
「公方様の周りそして公方様ご自身をな」
「どういった状況か」
「そのことをですか」
「調べてですか」
「そのうえで」
「拙僧に知らせるのじゃ」 
 こう命じたのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「織田家に備えつつです」
「その様にしていきましょう」
「公方様と幕府のことも」
「調べましょう」
 周りの僧達も応えてだった。
 本願寺は石山の守りを厳重に固めつつだった。
 都の義昭と彼の周りを調べさせた、そしてその報を聞くと顕如はいよいよ難しい顔になって述べた。
「公方様は操られておるやもな」
「そうなのですか」
「では崇伝殿と天海殿に」
「そうされていますか」
「そうなのですか」
「そうであろう、お二方だけでなく」
 さらにというのだ。
「他にもであるな」
「闇の色の衣の者ばかりとなっている」
「公方様の周りは」
「これまでの幕臣や織田家の方々は近寄れなくなり」
「そうなっておられるなら」
「それまで公方様は織田殿の言われる通りにされてきた」
 信長、彼のというのだ。
「誇りはあろうともな」
「それでもですな」
「ご自身が織田殿といがみ合っても意味はない」
「そのことがわかっておられ」
「それが故に」
「織田殿と今の様に対されることは」
 それはというのだ。
「お考えにもならなかった」
「左様でありました」
「織田家の天下はもう明らかです」
「そして朝廷も認めておられます」
「誰よりも帝が」
「それで公方様が何を言われてもな」
 それでもというのだ。
「織田家の武と権威は絶対であり」
「そして朝廷がお認めである」
「それならですな」
「もう公方様が何を言われても」
「場を乱されるだけで」
「何もなりませぬな」
「それがわからぬ公方様ではなかった」
 義昭もというのだ。 
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