| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百二十八話 僧籍の婚姻その十一

「これ程おかしなことはない」
「ですな、あの闇の旗の者達は一体」
「何者でしょうか」
「何処から出て来たか」
「やけに具足も武器もよいですし」
「門徒達は百姓達ですから」
 それでというのだ。
「いい武具なぞ持っていませぬ」
「持っていても粗末なものです」
「刀や槍を持っていても」
「侍のものとは違います」
「あるだけましな程度です」
「例えば織田家の槍は長い」
 顕如は鉄砲と並ぶ織田家の軍勢を代表する武具であるこれを話に出した、この長槍も織田家の大きな武器なのだ。
「そうであるな」
「あれだけ長い槍はありませぬ」
「他には」
「それに対して百姓の槍は」
「竹槍かです」
「短い粗末な槍です」
「あの様に長く穂先がよく手入れされている槍なぞ」
 全くとだ、周りの者達も言った。
「百姓達は持っていませぬ」
「百姓達のやることは田畑のことです」
「主はそちらです」
「戦には出来るだけ関わらぬ」
「そうしたい程ですから」
「その者達が何故よい武具を持っておる」
 闇の旗の下にいた門徒達はというのだ。
「それもわからぬ、しかもな」
「しかも?」
「しかもといいますと」
「まだありますか」
「色のことじゃ」
 顕如はこれの話もした。
「他ならぬな」
「それですな」
「思えば我等の色は灰色です」
「本願寺の色は」
「それはしかと定められています」
「悪もせざるを得ない者達の色です」
「その灰色こそが」
 周りの者達も口々に言った、それはとだ。
「我等の色です」
「大名にもそれぞれの色がありますが」
「例えば織田家は青ですし」
「そして我等にも色があります」
「本願寺の色が」
「門徒達の色が」
「それが灰色と定められていてな」
 そしてというのだ。
「決まっておるな」
「はい、一向一揆もです」
「灰色の旗の下に集います」
「灰色のみの旗に」
「何も書いておらぬ」
「その旗の筈が」
 それがというのだ。
「何故かな」
「左様ですな」
「何故かあの者達はです」
「闇です」
「闇の旗を用い」
「そして闇の衣を着ています」
「武具がよいですし」
「何処から出て来たかわかりませぬし」
「一体何者であるのか」
 そのことはというのだ。
「本当にな」
「わかりませぬな」
「わからぬことばかりです」
「あの者達のことは」
「一体何者か」
「門徒達にしては」
「全くじゃ、そういえばな」
 顕如はさらに話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧