IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐
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プロローグ
IS、正式名称「インフィニット・ストラトス」。
宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。
開発当初は注目されなかったが、「白騎士事件」によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要として運用され始める。
ISの核となるコアは完全なブラックボックスとなっており製作者の篠ノ之博士しかコアの製造を行うことが出来ない。
しかし篠ノ之博士はISのコアを467個を作った時点でそれ以上の製造を止め、行方を眩ませる。
故に現在ISの絶対数は467機であり、専用のISを持つ事が許されるのは政府や企業の関係者の中でも、選ばれた者のみである。
そのため、新しいISを開発する際には既存のISを一度解体し、コアを初期化せねばならない。
しかもISは何故か女性しか起動させることが出来ず、理由は製作者の篠ノ之博士すら分かっていないらしい。そのため世の中には必然的に女尊男卑が浸透していくことになる。
――――――『ISが出来てからの歴史』、第一章冒頭より――――――
「ふう……」
もう何度も読み返し、ボロボロになった本を閉じて私は目を閉じる。
今は日本へ向かう政府専用旅客機の中。
先ほどまでの眼下に広がっていた青い海は無くなり、既に旅客機は空港への着陸態勢に入っています。
本来は本にあるとおりISを扱えるのは、ISを扱っている大企業や保有している国家であり一般人は触れることさえ許されない。
それなのに3年前までただの女子学生だった私がIS学園に入学だなんて……運命なんていうのは分からないものです。
『本機はまもなく着陸致します。お立ちのお客様は席に戻ってシートベルトをお締めください』
うん、既に腰には少しきついくらいにシートベルトが締めてある。というより飛行機が離陸してから一回も外していない。
どうしても飛行機は好きになれません。あの巨大な鉄の塊が飛ぶと考えるのは未だに信じられないですから。まだISの方が空を飛ぶのは分かると言いたい位。
着陸の衝撃に備えて少し体を強張らせる。
『本機は着陸しましたが、完全に停止するまでお席はお立ちにならないようにお願いします』
「あ、あれ?」
いつの間に着陸したんでしょう?全然揺れを感じませんでした。
「ははは、この機のパイロットは我が国でも最も腕のいい者を選出したからね。初めての人は驚くのも無理はない」
「はあ…あ!」
隣からかけられた声に思わず生返事をしてしまいました。
「す、すみません!」
「いやいや、そんな畏まらなくても大丈夫だよ」
正面にいるのは付き添いで来てくれている黒いスーツ姿の紫紺の短髪の端正な男の人。オーストラリア政府IS関連の第一人者兼私の候補生管理官。名前はアーノルド・スミスさん。
そうこうしている内に飛行機が完全に停止する。
シートベルトを外して席を立とうとすると、なぜか足が動きませんでした。
「あれ?」
どうしたんだろう?
「あー、離陸してからずっと足を動かさなかったでしょう。そのせいで筋肉が硬直しているんですよ。荷物などはこちらで運んでおきますので動けるようになったら出口までおいでください」
「あ、わざわざすみません」
「いえいえ、今時分はあなたの様な女性のほうが珍しいですよ。では」
そう言いながらスミスさんは出て行った。手で足を伸ばしつつ少し椅子を倒す。
「ん……」
あの人の言っていた通りみたい。感覚のなかった足が痺れてきている。
いくら緊張していたとはいえ恥ずかしいところ見せちゃったなあ。
こういう時は政府専用機っていうのも他の人に見られなくていいかも……
先ほどあの人が言った言葉を思い出す。
ISは本にも書いてあったとおり、何故か『女性にしか反応しない』。
そして現行、世界最強の兵器はそのIS。つまり世界のパワーバランスはISの保有数とそれをより高い技術で操れる担い手、すなわち女性の数で決まってしまいます。
となれば必然的に女尊男卑が当たり前になってしまう。かつては女性に人権を認めず、あらゆる弾圧に屈しなかった宗教国家でさえ、宗教の根本から覆されるほど。
かつての男性優位の国家はISを保有していない国ぐらいでしょう。
そしてそうなれば必然的に横行な女性も増える。自分の周りにはあまりいなかったが、それでも街のマーケットでは奴隷のように男性を使う女性を見かけたこともある。
必要とされているのはISを使える人であって一般の女性ではない。
関わっているから言えることですが、本来ISなど無い方がいいと思う。
ISはどこまで追求しても『兵器』だからだ。開発者の意思では宇宙進出用なのかもしれないけれど、『白騎士事件」によってその芽は完全に断たれたといっても過言ではありません。『兵器』とは敵となった目標を殺傷、破壊するために使う道具。つまりは人殺しの道具。
今はスポーツみたいに扱われていますが、使い方を間違えればそれは簡単に人を殺傷する道具になりえます。
最も懸念されているのは第三次世界大戦……いや、『第一次IS大戦』。これはISが登場した10年前から頻繁に話題になっています。
ならば本来こんなものは全世界的に排除して元に戻したほうがいい、というのが私の考えです。
でも作られたもの、更に言えば便利であるものを人は捨てることは出来ません。
さらに言えば、ISがあることで世界の技術力は飛躍的に上昇していますし、世界経済もISの開発、ということで雇用を生み出し非常に安定している。
デメリットを消せないならせめて今あるメリットを享受するしかない。
なら自分は自分に出来ることを……
そう思って結局私はISを使っている。
「偽善……だよね……」
自然と独り言がでてしまいました。
そんなことを考えていると足の痺れも取れてきた。
うん、これなら歩けるかな。
立ち上がると足はしっかり床を捉えてくれた。
CAさんに案内されて出口へ向かう。
「わ!」
外に出たところで突風が吹いて右側でサイドテールにしている私の赤い髪が思いっきり広がってしまう。風が収まって髪の毛を確認すると……ああ、やっぱり少しバサバサになっちゃってる……
手で軽く直しつつ階段を下りていくと、既に迎えのリムジン車の前にスミスさんが待っていてくれた。
スミスさんは私に気づいたみたいでこちらに手を振ってくれました。
「すみません、お待たせしました!」
「いえいえ。さ、お手をどうぞ」
右手を取られて車へ案内される。車の中はリムジンって言うことでやっぱり広い。今は慣れているけど代表候補生になった当初は本当に落ち着きませんでした。
それでも……うー、やっぱり慣れないなあ。小さい普通の乗用車のほうが温かみがあって好きなんだけど……
車が静かに音を立てて発進する。離陸前の説明では今から大使館へ向かい入国兼入学手続きを行うらしい。
そんなに時間はかからないらしいから日本を見学できるといいんだけどなあ……
「カスト様、右手にIS学園が見えますよ」
運転手に促されて右を見ると海上の一つの島丸々使った巨大な施設が見えた。
あれが…IS学園……
操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される日本の教育機関。
「大きい……」
漠然とした感想だけどそれが一番だ。対岸のここからでも把握できないほどの大きさがある。
「楽しみ……というより不安かも……」
あわわ……手が震えてきた! どうしよう!
後書き
にじふぁん、ハーメルンとお世話になっておりましたグニルです。
誠に情けないながらも原作大幅コピーということで作品が削除されたためこちらで改めて改稿、再投稿という形を取らせていただきました。
自分では大幅に流用していた部分をすべてチャックしたつもりなのですが、ここが模写だろ!って言う部分がありましたらご指摘ください。すぐに直します。
こんな作者ですがこれからよろしくお願いいたします。
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