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戦国異伝供書

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第百二十四話 肥後の戦その十三

「そのうえで、です」
「有馬家に攻め寄せ」
「潰すつもりです」
 有馬家をというのだ。
「そしてです」
「有馬家の領地を制してであるな」
「その勢いで筑後に入り」
「あの国を手に入れてか」
「後は九州を併呑されるおつもりの様です」
「有馬家を倒し筑後を手に入れたなら」
 ならばとだ、義久は言った。
「ならばな」
「それからはですな」
「九州の東にも南にもな」
「兵を進められますな」
「そうなる、だからな」
 それ故にというのだ。
「ここで龍造寺家に有馬家を滅ぼさせる訳にはいかぬ」
「だからこその盟約で」
「そして盟約はな」
「必ずですな」
「当家は守る」
 そうするというのだ。
「必ずな」
「ですから」
「出陣じゃ、無論築後もな」
 この国もというのだ。
「龍造寺殿のものにはな」
「させませぬな」
「筑後と来れば肥後にもじゃ」
 島津家があらたに領地にしたこの国にもというのだ。
「来るやも知れぬ」
「だからですな」
「あの国は渡せぬ」
 決してというのだ。
「その意味からもじゃ」
「この度は」
「こちらもすぐに出陣じゃ」
 そうするというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「有馬家のところに向かう」
 その彼等のところにというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「薩摩隼人の中でも猛者達だけを集め」
 そしてというのだ。
「そうしてな」
「そのうえで」
「出陣する」
 ここでまたこう言った。
「そうする」
「それでは」
「これよりな」
「出陣されますか」
「もう既に用意は出来ておる」
 出陣のそれはというのだ。
「だからじゃ」
「出陣されて」
「有馬殿の方に向かうぞ」
「わかり申した」
「先にあちらに入り」
 有馬家の領土にだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「戦う、よいな」 
 こう言って義久は次に弟達を呼び彼等に告げた。
「わしも出陣するし」
「我等もですな」
「出陣し」
「そして龍造寺家と戦いますな」
「そうする、そして赤星と新納、伊集院、猿亘といった者達もじゃ」
 島津家の中でも武勇に優れた重臣達もというのだ。
「出陣させる、我等が送るのは三千」
「そして有馬家の三千」
「合わせて六千ですな」
「その六千の兵で戦いますな」
「そうする、対する龍造寺家は何万と言われていたが」 
 それだけの数を出すつもりがというのだ。
「四万とのことじゃ」
「増やしてきましたか」
「その大軍で有馬家を潰し」
「島原も完全に抑えますか」
「そして我等の喉元に刃を突き付ける」
 そうもしてくるというのだ。
「そしてさらに攻めるつもりじゃ」
「ですな、ではです」
「その六千の兵を巧みに動かし」
「何としても勝ちましょうぞ」
「だから三千の兵は皆一騎当千の者ばかりじゃ」
 薩摩隼人の中でそうした者達を引き連れていくというのだ。
「猛者の中からな」
「さらに猛者を選ぶ」
「猛者の中の猛者を」
「それが三千の兵ですか」
「そうじゃ、それでこちらの有利な場所で戦い」
 そしてというのだ。
「勝つぞ」
「はい、それでは」
「すぐに出陣しましょうぞ」
「猛者の中の猛者達と共に」
「その様にな」
 義久はここに出陣を命じた、そうしてだった。
 弟達と島津家の中でも猛者を選んで出陣した、今ここに島津家と龍造寺家の雌雄を決する戦の幕が開けた。


第百二十四話   完


               2020・12・1 
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