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戦国異伝供書

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第百二十五話 誘い出しその一

                第百二十五話  誘い出し
 義久は弟達と島津家の中でも猛将そして猛者と言われる者達を率いて船で薩摩から島原に向かった。そうして。
 有馬晴信、生真面目な顔をした彼と会い早速軍議を開いた。その場で。
 義久は有馬にすぐにこう告げた。
「この戦敵を誘い出し」
「その場においてですか」
「左様、戦い」
 そうしてというのだ。
「勝ちましょうぞ」
「この島原において」
「我等この地を調べさせて頂きましたが」
「龍造寺家は大軍です」
 歳久が言ってきた。
「我等は合わせて六千、龍造寺家は四万」
「五万と聞いていましたが」
「それは号してのことです」
 歳久は有馬にこのことも話した。
「実際の数はです」
「それだけですか」
「はい、ですが」
「それでもですな」
「それでもその数は我等の七倍近く」
「恐ろしい数ですな」
「だからこそです」
 数では圧倒的に劣るからというのだ。
「ここは然るべき場所に誘いだし」
「そこで戦い」
「勝ちましょう」
「既に我等は戦に適した場所を調べさせてもらいましたが」
 今度は義弘が言ってきた。
「沖田畷はどうでしょうか」
「沖田畷ですか」
「我等はあの地に陣を敷き」
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「龍造寺家と戦うと」
「そうしてはどうでしょうか」
「あの地は東が海で」
 有馬はその沖田畷の話をした。
「そして一本道で南北は沼地です」
「しかも草が高く兵が隠れやすい」
「道の前は開けて山もあります」
「その山の方に主力を置きまして」 
 家久も言ってきた。
「そこから布陣してです」92
「戦うのですな」
「伏兵を置いたうで」
 そうしてというのだ。
「そうしましょう」
「そうして勝つと」
「はい、我等は」
「ここが一番かと存じますが」
 義久は有馬に強い声で問うた。
「島原で大軍と戦うには」
「それにはですな」
「有馬殿としては」
「ここしかないかと」
 有馬は義久に強い声で答えた。
「やはり」
「そう言われますか」
「それがしもそう思いまする」 
 こう言うのだった、見れば義久だけでなく彼と共にいる彼の弟達に対しても言っている。言葉だけでなく目でもだった。
「やはり」
「それでは」
「そこに移り」
 その沖田畷にというのだ。
「戦としましょう」
「それでは」
「龍造寺殿は敵がいればです」
 それならというのだ。
「ならばです」
「そこに来る御仁ですな」
「はい」
 まさにというのだ。 
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