Fate/WizarDragonknight
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エピローグ
「うえええええええええん!」
ハルトがチノをラビットハウスに連れ帰っての第一声が、ココアの泣き声だった。
顔をぐちゃぐちゃにして、彼女はそのままハルトに付いてくるチノに抱きついた。
「よかった、よかったよおおお!」
「ココアさん! やめてください! あと、顔拭いてください」
「びえええええええん! チノちゃんの誕生日、会いに行けなくてごめんねえええええ!」
「止めてくださいココアさん。まあ、それは静かな誕生日でしたけど……だから、離してください」
「チノちゃんそういう割には満更でもなさそうだけど?」
「違います」
ハルトの言葉に、チノは首を振った。
「ハルトさん、いいから早く助けてください」
「あとでね」
ハルトは二人を眺めながら、ラビットハウスの奥へ歩く。
もう、あの事件から一週間も経っている。
見滝原は復興へ向かっており、見滝原中央病院の水を飲んだ人たちも、それぞれの医療機関で検査を受けた。
フラダリが、病院に溶原性細胞の研究データを残していたことが幸いし、それぞれの機関も問題なく溶原性細胞の有無を調べられた。
結果、水を飲んだ人の大多数は陰性。陽性であった一部の人も、フラダリの研究室にあった検体よりワクチンを開発し、今では快方に向かっている。
それでも、アマゾンが付けた爪痕が消えるわけではない。
ハルトは、ラビットハウスの天井を見上げる。
昨日から営業を再開し、テレビもニュースを流している。そこには、アマゾン事件についての報道がされていた。
『犠牲者 合計四千人』
「これも……聖杯戦争だっていうのか?」
ハルトの口から、思わずその言葉が出てきた。
真司と友奈から聞いた話によれば、フラダリはサーヴァントである千翼の細胞を利用したらしい。つまり、聖杯戦争がなければ起こり得なかった悲劇ということになる。
「もう……ここでは、誰が参加者で誰が参加者じゃないかなんて、関係なくなっているんだね」
そう言ったのは、一階に降りてきた可奈美だった。
「可奈美ちゃん」
「……ごめん。ちょっと、付き合ってくれない?」
可奈美に連れてこられたのは、見滝原公園の一角だった。
公園の中でも、深い森の部分。ほとんどが自然のままの状態であり、滅多に人の来ない場所で、ハルトは可奈美と向かい合っていた。
「何? こんなところに連れてきて」
「……」
それに対する彼女の返答は、千鳥の抜刀だった。
「立ち合い。お願い」
「どうして?」
「練習。新技のね」
可奈美は鞘を地面に置いた。
ハルトはウィザードライバーを起動させるが、そこで手を止めた。
「このタイミングで新技?」
「……うん」
「それって……もしかして」
「受けてくれるの? くれないの?」
少し語気が強めだった。
ハルトは仕方なく、ルビーの指輪を使う。
ウィザードの変身とともに、可奈美も白い写シを纏った。
「一つだけ聞かせて。それは、何のために使うの?」
「新しい剣の可能性を見たんだよ? 習得したがるのは当然じゃない?」
「……ああ、そうだね。君はそういう人だったよ」
『コネクト プリーズ』
ウィザードはウィザーソードガンを掴む。
可奈美は千鳥をクルクル回しながら続ける。
「それに、覚えておきたいんだ」
「?」
「たった一人。私だけにしか使われなかった技だから。あの子がこれを作ったってことを、しっかりとこの世界に残しておきたいから」
「そっか……」
ウィザードは、ソードガンを構えた。
「悪いけど。俺も本気で行くよ」
「うん!」
冬の空気の中。
魔法使いと刀使は、ともに動き出した。
「うわっ!」
予想通りの大きな声が上がった。
友奈は真司の頬に当てたアイスコーヒーを離す。
「ビックリした……友奈ちゃん、ずいぶん古典的なことを……」
「えへへ。ちょっとイタズラしたくて。何考えてたの?」
「ん? ああ」
真司はゆったりと河原の芝に寝そべる。
「昔言われたこと、考えていた」
「言われたこと?」
友奈は真司の隣で腰を下ろす。
真司は夕焼けの空を見上げながら言った。
「俺が龍騎になって少しの時にさ。その甘さで誰かを殺せるかってさ」
「……」
友奈は、静かに真司の顔を見つめながら耳を傾けた。
「俺さ。前にも、こういう聖杯戦争みたいなのやったことあるんだ」
「……そうなんだ……」
「あの時は、結局俺も途中で倒れてさ。なんていうか……結局、止められなかったんだよ。戦いを」
「……」
「でもさ。実際に、人にファイナルベントを……戦いを止めるためとはいえ、使ったからさ。なんていうか……キツイな」
真司は、懐からカードデッキを取り出した。カードを引き抜くと、彼の必殺技のカードが現れる。
「俺さ。もう、このカードを人に使わないようにしたいんだ」
「うん」
「だからさ」
「分かってるよ」
友奈は、真司の言葉を引き継いだ。
「絶対に止めよう。この戦いを」
友奈は、静かに真司に拳を突き出した。
少し驚いた様子の真司は、静かに頷く。
「ああ」
河原の夕日の中、二人のサーヴァントは静かに拳を合わせたのだった。
次回予告
『Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl』
「ハッ、お前そういうこと言っちゃうタイプ? バリかゆ」
「お前たちに渡すものか!」
「こういうオカルトものって、実際に研究している人もいるんだね」
「さあ? どっちかな?」
「計画通り……!」
「これって……心象変化?」
「三つの石が、封印を破ったとでもいうのか……?」
「なぜなら、オレは一人だからだ。オレがたった一人残された……○○の生き残りだからだ!」
「これが七十億の……○○だあああああああああ!」
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