幻の月は空に輝く
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修行の章――意外なフラグ発生
九尾来襲事件から早5年。私もそれなりに大きくなった。
ちなみに、ナルトとは会えておりません。そろそろ天華の術が安定するだろうと思うから、会っても問題ないと思うんだけどねー。
「ラン。余所見してると危ないぞ」
「──っと」
お父さんが刀を一線させるけど、それを半歩右斜め後ろに下がる事で体勢を崩さずに避ける。勿論刃先から目を逸らす事はしない。そのままステップを踏むように振り下ろされた刃に沿って前へと足を踏み出し、お父さんの鳩尾に掌底。
が、避けたはずの刀をそのまま横に一線され、私は距離を取る事を余儀なくされる。急ぎ過ぎかな。距離を詰めてもこうして距離をとらされる。
普通のクナイよりは長く。小刀よりは短い私専用に打ってもらった武器を何本か取り出し、私はそれにチャクラの絃を巻きつけた。近接戦の方が手っ取り早いから持ち込んじゃうけど、これはお父さんだから出来る戦法だ。実際忍として戦場に出たら、近接戦は避けたい。
そうなると中距離。長距離の戦法をここで身に着けておいた方がいいね。そう思いつつ、私は両手の指先を器用に動かし、10本のクナイを手足のように操る。イメージは傀儡師。とはいっても、人形は使わないけどね。
私を確認しながら、お父さんは背に差していた太刀を一瞬で抜き去ると同時に、今まで使っていた刀を腰に差す。どちらもチャクラ刀になるんだけど、まったく…。鍛冶屋だからって色々なもの趣味で作りすぎだって。
その技術はちゃっかりといただいてる途中だから、私も人の事は言えないんだけどさ。
さてさて。お父さんの太刀と私のクナイ。チャクラをのせているっていっても、威力的には心許ない。そうなると下手な鉄砲数打ちゃ当たるんじゃない?作戦決行というわけで…。
ホルスターにいれていた小さな親指程度のクナイを掴むと、それを宙へと放り投げた。これら全てに私のチャクラを張り巡らせ済み。ほいほいっと次から次へと放り投げ放り投げ、360度私の周りは武器だらけになる。
白眼とは違うけど、ある意味これも絶対防御。名前はつけてないんだけど、どうしようかな。と考えてたらお父さんが太刀に火のチャクラを纏わせた。私は風なんだけど、今回は風じゃなくて水でいこうと印を組む。
しかし如何せん子供の身体。まだお父さんのチャクラに対抗出来るようなチャクラを練る事は出来ない。その辺りは子供だけど大人だった経験を活かして、水の球体を幾つも作ってお父さんに向かって放つ。
これで少しでも削れればいいけど。
「まだ甘いな!」
「知ってる」
太刀を振るうまでもなく蒸発。生半可な水じゃお父さんの作る火には負けてしまう。ふむふむ。この間よりも水にチャクラは練りこんだんだけど、やっぱ駄目かと観察する事も忘れない。
なら、やっぱり得意な風で攻めるのがいいかと、包囲網を作るために起点となるポイントにクナイを配置していく。
小さな小さなクナイ。クナイが乱舞する中で、何が止まって何が動くと見破るのは難しい。けれど一応用心として、止めて動かしてを繰り返す。
あぁ。乱舞をつけるのはいいかもしれない。剣乱舞だとありきたりだしそもそも剣じゃなくてクナイだ。どうするかなぁ、なんて必殺技名を考えている私に向かって、お父さんの作り出した剣圧と火が──ここまでくると炎が私へと襲い掛かる。
私の水球とは対になるような火球。私の水じゃ相殺所か水が蒸発した蒸気が逆に私に対して視界を狭める事になるだろう。
ちらり、と視線を走らせ、クナイの配置を確認する。指先で繋がってるから目視は必要ないんだけど、如何せんまだ未熟。目視に頼らざるを得ないんだけど。まぁ、要修行って事で勘弁してもらおう。
所詮まだ五歳だ。
クナイに回転を与え、そこからも風を発生させる。
「風は火を煽るだけだぞー。俺の火炎急襲が避けれるかな?」
「………」
そのまんま。ネーミングセンスがいまいち感じられないお父さん。気をつけないと、と心底思う。だって、今の私はその血が混ざってる。
「中途半端な風ならね。でも、真空状態を作り出せば、火は消える」
要は使い方だよ。そう言って笑えば、その通りだとお父さんも笑う。
木ノ葉は火の国と言われるだけあって火の属性が多い。それとは逆に風は少なめ。風は火の助けになる、って言ってたっけ。けれど火を助けるはずの風で、私は火を喰らう。
足止めをする為に宙に浮かせたクナイを絶え間なく放ち、更に印を組んで風の威力を高める。風を流すんじゃなくて、留める。真空状態を作り出さなきゃ、火は消えない。加減を調節するんだけど難しいと、私が更にチャクラを込めようとした瞬間、視線を感じて無意識にクナイをそれに向かっていっきに放ってしまう。
「あ…」
「あー…」
私とお父さんの声。
ここはお父さんの結界の中だから、許可がなきゃ入れないはずなんだけど…だから思わず攻撃しちゃったんだけどね。お母さんじゃなかったから。
けれどその姿を確認した瞬間、僅かに表情を崩して侵入者──もとい来客の様子を確認した。
流石上忍。無傷だ。
ちょっと悔しいな、なんて思ったのがばればれだったのか、私と同じ銀の色彩を持つ男がやれやれとばかりに肩を竦めた。
「お久しぶりです」
カカシさんイタチさん、と、名前は声に出さないでおく。ぺこり、と軽く頭は下げたんだけどね。
「やぁ、カカシ君イタチ君。また壊したのかい? で、ハニーにいれてもらったのかな? でも修行中にぶしつけな視線はいけないよー。俺の可愛い子供をそんな目で見たら武器打たないよ?」
「はっは。カシュウさん冗談でしょ。流石に俺にそういう趣味はありませんよ」
「……弟と同じ年か」
ちなみに、私は性別を間違われてます。
色々と間違われてます。お父さんが親馬鹿を発揮して、こんなに可愛いのに女の子の格好をしたら攫われる!なんて叫んで、否定しないでおいたらいつのまにかランセイ=男の子っていう認識になってた。
将来的にはナルトの親友ってポジションにつきたいから、女の子なランセイより男の子なランセイの方が便利そうでいいんだけどね。
「………」
さて。そろそろイタチは里抜けの時期かな、なんて思ったら上手く喋れなくて、私はもう一度だけ頭を下げて身を翻した。
「ホント、カシュウさんと似てないですよね」
あまりの無口っぷりに、しみじみと呟くカカシの声が聞こえる。あー。馬鹿だなぁ。と私が呟くと同時に、ジリジリと燃える音。
「俺の気にしてる事を。カカシくぅん。覚悟はいいかなぁ?」
「え? 気にしてたんですか??」
「カカシさん。有名な話しですよ」
あらら。イタチにまで言われてる。新客がお父さんにソレを言って、たたき出された事件は有名だと思ってたんだけど…。可哀想に。カカシは不在だったか。さっきまで私と修行してた所為か、お父さんの準備はオッケー。チャクラの練り方も相当気合が入った状態。
対するカカシは壊れた武器を打ち直しにきた客人。
私のクナイ攻撃を完封した上忍だけど、あくまで客人だ。仕方ないと、私はホルスターから組み立て式の扇子を取り出すと、それを開いてチャクラを乗せた。
ふわり、と私から発せられる風によって靡く髪。
「ちょっとカシュウさん!」
焦ったように叫ぶけど、その実動きは冷静そのもの。写輪眼のカカシは伊達じゃなし見てて勉強にはなるけど、流石に客人にそれはまずい。まぁ、ここで怪我をしてもお父さんの所を利用するだろうけどね。
お父さん。鍛冶屋カシュウは木ノ葉でも腕利きとして名が売れているし、それに四代目であるミナトさんが利用していた鍛冶屋でもある。
それでカカシとお父さんも顔見知りで前々から顧客さんなんだけど。
「イタチさん。避けて下さい」
避けるだろうけど、一応声をかけておく。
「あぁ」
私の方は見ずに、イタチが頷く。
印を組んで本格的な打ち合いに発展してきたお父さんとカカシに向かって、私は風を纏わせた扇をブーメランの要領で投げた。ついでに追尾型にしておく。
「「ッ!?」」
2人して同時に息を呑む音が聞こえたけど、あえて淡々と声をかける。
「お父さん。カカシさんはお客さんだよ。ちゃんと対応して。カカシさん。適当に避けてお父さんに対処させて下さい。イタチさん。お茶でも準備します」
着いて来て下さいと言えば、イタチに断る理由は無い。
「ランセイーーー」
その男がいいのか? イタチがいいのか!? なんて涙ながらに叫ぶお父さんはスルー。
「巻き込まれ。俺にお茶は!?」
と叫ぶカカシもスルー。
そういえば美味しい茶葉と茶請けがあったよな。
「イタチさん。美味しい茶菓子があります」
「そうか」
「甘いの大丈夫でしたよね?」
「あぁ」
しかし、イタチはいいお兄ちゃんだ。話してみると本当に思う。
こんな兄ちゃんだからこそ、サスケはから回って回ってあんな事をやったんだろうけど。
考え込む私の頭の上にぽむっと手の平を置いて、ゆっくりと撫でるイタチ。実は子供好きだよねぇ。
「俺の弟も同じ年だが、ランはしっかりとしているな」
「サスケ君でしたっけ」
「あぁ」
「同じ年の友人がいないのでよくわかりませんが……イタチさんの弟なら相当出来るんじゃ?」
「ランよりは劣る」
「(腕が…だよね。まぁ、私は規格外だし。)俺は、父からあんな修行を受けてますし」
中身大人だし。
「今度会ってくれ」
「別にいいですけど」
「ランとなら、良い友達になれると思う」
「………」
あれ?
ここでサスケと?
別に断る理由も無いから頷くと、イタチは唇の端を上げて満足そうに笑みを浮かべてた。
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