魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百五十四話
学習塾跡、くらやみによって開けられた穴に腰掛けているとその下の階の教室に羽川翼が入ってきた。
俺を見るなりすごく不満そうに顔をしかめた。
「出会い頭に顔をしかめられると流石の俺も傷つくんだよ。
ねぇ、羽川翼さん?」
「黒幕が何か言ってる」
「失礼な。俺がいつ貴方たちに不利益をもたらしたと言うのかね」
大げさな身振りをしながら言うと彼女は頭を押さえた。
「頭が痛くなってきた」
「お? 障り猫? 暦さん呼ぶ?」
「結構よ。彼今忙しいみたいだし」
「うん。この教室をこんな風にした奴から逃げてる途中だよ。行先は知ろうと思えば知ることもできるけどやらないし言わないよ。ああ、これは意地悪じゃなくてその相手から逃げるのに必要かもしれないからだよ」
迷っているという言葉の定義が曖昧だ。
「それで? ここに何の用なのかな? 焼け出された可哀そうな子猫さんは」
「言わなくても知ってるくせに」
「ウン知ってる。だから差し入れ」
彼女に懐中時計を投げる。
「それISの劣化版ね。中にここで過ごすのに困らないだけの物資が入ってるから。
食料は自動で補充されるから心配しないで。
自営用の武器とISスーツも入ってる。あ、でも水と服と…あと下着とか生理用品とかは入ってないから自分で買ってね」
水は浄水器入れといたから大丈夫だろう。
気分は置いといてトイレの水でも飲めるようにするほどのスペックだ。
「デリカシー」
「ああ、ごめん人間ってそういうの気にするよね」
とおどけてみる。
「キミが言うと洒落にならないね」
「洒落なのにね」
羽川翼に渡すものを渡したので帰ることにする。
俺は忙しいのだ。
飛んで帰ろうと空中に立った時に呼び止められた。
「これ、どう使うの?」
「脳波コントロールだから考えるだけで使えるよ。ああ、それは返さなくていいよ。廉価版だし、これから刺激的な海外旅行に行く貴方には必要になると思うから。
ま、便利な魔法のバッグとでも思っときなよ」
「こんなのポンと私に渡して返さなくていいなんてどうかしてる。それに........隠さないんだね」
「貴方に隠したところで。貴方にそれを貸すのは未来への投資だよ。貴方に恩を売っておけばあとで役立ちそうだし」
打算込みであることを明言しておく。
その方が彼女は安心してペンダントを使えるだろう。
「じゃぁ、またその内」
学習塾跡を後にして、帰宅する。
side out
一夏が学習塾跡から飛び去った後、翼は夜を過ごすための部屋を探すことにした。
大穴の空いた教室で夜を過ごすのはさすがにしないようであった。
翼はようやく見つけた屋根も床も抜けていない教室で椅子に腰かける。
「えっと…起動」
翼がペンダントを握ってそう唱えると、翼の周囲をホロウィンドウとホロキーボードが取り囲む。
SFチックで近未来的なその光景に流石の翼も驚きの表情を浮かべた。
しかし驚いてはいられない。
ホロウィンドウを見渡すと、大半がこれと言った情報が表示されていない状態だ。
表示されているのはちょうど翼の正面のホロウィンドウ。
基本的にはパソコンの画面と変わらない。
翼は中身を確認しようとした。
アイテムリスト、そう書かれたアイコン。
すると手を動かすまでもなく別ウィンドウでアイテムリストが開く。
「脳波コントロール…すごいなぁ」
アイテムリストはさらに食品、家具、インフラ、武器などの小項目に分かれている。
食品の欄はその名の通り食品。
ただし全てが保存食である。
それでもサバイバル用ハイカロリーバー、乾パンとジャム、即席麺、フリーズドライ食品など種類には事欠かない。
家具の欄は簡易ベッドやパイプ椅子やツールナイフなどで、内容だけ見ればやや豪華なキャンプ用品といった所か。
インフラの項目を開くと浄水器、発電機などの聞き覚えのあるもの。
そして見慣れぬ[エネルギーバリアジェネレーター]など。
翼が見たくないなぁと思いつつ武器の欄を開いた。
拳銃、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、サバイバルナイフ、魔法の杖(仮)、エトセトラ。
「私に何させる気なの..........?」
引き気味に呟くとそっと武器の欄を閉じる。
残りの調理器具などの欄を一通り見終えると、翼はインフラの整備を始めた。
とりあえず浄水器と発電機を量子展開してみる。
どちらも箱型でユーザーインターフェースと機能的に必要となる注排水口やコンセントしかないシンプルな見た目。
翼が恐る恐るエネルギーバリアジェネレーターを展開した。
出てきたのは一辺十センチ程の銀色の立方体。
ただし八つに分割線が入っており、マスの少ないルービックキューブにも見える。
翼が使い方に悩んでいるとキューブがひとりでに浮き上がり、バラバラになった。
八つの小さなキューブが教室の八つの角に嵌ると、ブゥンと音を立てて光る壁を作り出した。
「なにこれすごい」
出てきた言葉の意味は賞賛であったが、その音には呆れの意味が九割は含まれていた。
いや、もしかしたら十割を通り越して十二割くらいの呆れだったかもしれない。
やや疲れた表情を浮かべながら、翼は服を買うべく教室を後にした。
どういう基準かエネルギーバリアは素通りすることが出来た。
side in
夜の九時ごろ。
「もしもし」
箒とにゃんにゃんしようとしたタイミングで、直木から電話が掛かってきた。
箒がものすごく不機嫌になったが、予想してたし事前に言ってはいたので問題なし。
「どったのひたぎん」
『羽川さんの居場所、貴方なら知っているでしょう?』
「知ってるし、俺が出来る最大限の支援もしてるけど。それがどうかしたの?」
『どこなの!?』
「例の学習塾跡」
電話の向こうから息を飲む声が聞こえたのでスマホを遠ざける。
『貴方何を考えてるの!? 女の子が一人であんなところに泊まるのを認めたの!? 次会ったらただじゃおかないわよ!?』
それだけ言うと電話がぷっつり切れた。
うん。原作通りなんだね。
育さんが電話してくるかもと思ったんだけど…。
エネルギーバリアは身内なら素通りできるし大丈夫だろ。
後は任せればいい。そう思い、俺は箒とにゃんにゃんすることにしたのだった。
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