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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第二百五十五話

8月23日

「よっす駿河」

学習塾近くで駿河を待っていると、曲がり角から走ってくる駿河が見えた。

おれは片手を挙げて挨拶をしたのだが…。

「ご主人様! 許せ!」

数メートル、もしかしたら十メートルほど手前で飛び上がった駿河が俺に向かって強烈な飛び蹴りを繰り出した。

主人に反逆するとは。

これはお仕置きをせねば。

と、まぁ冗談は置いておいて。

おそらく直木になにか言われたんだろうな。

つーかほんらいこれって暦さんがやられる奴だよな。

この役回りも俺か。

でも俺は大してウィットに富んだジョークは言えない。

前世でも今生でも文学や古い娯楽作品にあまり興味がなかったからな。

ああ、とりあえず受け止めないと。

停止させるべく駿河に減速術式を掛ける。

つかこいつ穿いてねぇじゃん。

前張りかよ。馬鹿じゃねぇの?

減速術式と浮遊魔法で駿河が目前でぴたりと止まる。

「お仕置きのメニューは何がいい?」

「鬼畜の限りを尽くして凌辱してくれれば私に悔いはない!」

「あっそ」

浮かせている駿河の足を掴んでぶん投げる。

勿論駿河は器用に体を使って衝撃を殺して着地した。

「んでなんでお前そんな恰好なんだよ。下着はどうした下着は?」

「ん? 今日はご主人様が私の純潔をもらってくれるのだろう?」

「だろわないが?」

「違うのか? 私はてっきり阿良々木先輩の前で私を犯すものだとばかり」

「お前頭沸いてんの?」

「いやいや、こんな時間こんな場所に男二人から連名で怪しげなメールで呼び出されたとあってはそうも思うというものだ」

「俺はともかくとして暦さんはないだろ」

「いやいや、人前で吸血鬼として鬼畜の限りを尽くすご主人様と言うのも」

「待て。それはお前の妄想じゃないのか」

「私は”こよ×いち”ではなく”いち×こよ”派だ」

「前者は直木か」

「うむ」

あとで絶対なんかしてやる。

駿河の手を取り、学習塾跡へと足を向ける。

「それで、私の処女が目的でないならいったい何の用なのだ?」

「ああ、それに関して詳しくは暦さんに聞いてくれ。用があるのは俺じゃなくて暦さんのほうだからな。だからと言って俺も無関係じゃないし」

「そうなのか?」

「嫌か?」

見上げると駿河は特に嫌そうな顔をしていない。

若干落胆の感情が見えはするが。

「嫌ではない。阿良々木先輩は尊敬に値する人間だからな。よほどのことでなければ、まぁ」

「ふーん」

「お? やきもちかご主人様?」

「いや、意外だなって」

「阿良々木先輩の突っ込みが無ければ私や戦場ヶ原先輩のギャグは不発に終わるからな」

「なるほどね。俺はお前みたいにサブカルにそこまで詳しくないからな」

「謙遜することは無い。ご主人様だって十分に詳しいと思うぞ」

「いや何十年も前の漫画やアニメ出されてもわからんっつの」

大したことのない、とりとめのないような話をしながら暦さんの居る部屋へ向かう。

「暦さん。入るよ」

どうぞ、と中から声が聞こえた。

これで入れる。

というのは冗談で二人へヒントへのつもりだ。

「久しぶり、暦さん。元気そうで何より」

「元気だよ。うん」

暦さんは教室の奥で壁に背を預けたまま、覇気のない返事を返した。

「駿河連れてきたよ。俺は詳細知らないし、こっからの説明は暦さんに任せるから」

「キミなら知ってるんじゃないのかい?」

「ねぇ俺あんたらカップルに嫌われるようなことした? 羽川さんといい暦さんといい。
まぁ、あの年増の要件なら予想はついてんだけどね」

説明を丸投げして俺は武器を取り出しておく。

疑似聖銀弾を込めた拳銃だ。

疑似聖銀弾というのは俱利伽羅と同系統の術を仕込んだ炭素素材の弾丸だ。

効果のほどは不明だが、破魔の力を持っていると期待したい。

今日思いついて作ったので一切の実験をしていないのだ。







ガンガンガンと閉じたドアが叩かれた。

そしてそれに対して何の警戒もなく入室を許可する駿河。

「バカかよ、お前。俺がせっかくさっきヒント挙げたのに」

入室してきたのは甲冑。

鎧武者だ。

物々しい雰囲気を纏っている。

「伏せろご主人様! あと阿良々木先輩!」

飛び出した駿河が鎧武者、死屍累生死郎に殴りかかる。

怪異の腕でだ。

加えて数メートルの短さであれば誰よりも速いと称される彼女が全力で助走をつけての一撃。

その重い一撃で鎧武者はその身を砕かれた。

正確にはバラバラにされた。兜やらなにやらが崩れるように床に落ちて音を立てる。

「駿河ー。ソイツたぶんまだ倒せてねぇから下がりなー」

「そうなのか?」

「そうだよ。駿河、ステイ」

「ワン!」

そう言うと駿河がバックステップで戻ってくる。

冗談交じりか俺の隣でお座りをしている。

とりあえずあごの下を撫でておく。

「よくやった。駿河」

「おお!? ご主人様がデレた!?」

駿河の事は一旦無視だ。

「さて」

ワンピースの裾を挙げてレッグホルスターから拳銃を抜く。

「一夏君。あれは?」

「見りゃわかんだろ? 今回あの年増が言ってる依頼のターゲットだよ」

目の前で甲冑が組みあがっていく。

さっきバラバラになったのをちょうど逆再生にするように。

「暦さんは下がってて」

「僕だって何かできるはずだ。囮だろうと何だろうとやるよ」

「そうかい」

影の中からサイコEカーボンのブレードを取り出す。

影の中に置いていて、奏が文句を言っていた予備の装備だ。

「白騎士の中核フレームを成す超硬質かつ霊的親和性の高い素材で作った刀だ。貴方なら使いこなせるはずだよ」

緩やかに波立つ暗闇に刺さる刀を暦さんが抜く。

「暦さん。気功を使えるとはいえ今のあなたは弱体化している。気を引き締めて」

「わかってる」

駿河が隣で不満そうに言った。

「ご主人様私には何かないのか?」

ふむ。無くはないしこの日のために作ってはいたが、少々戦力過剰ではないか。

下手したらここで死屍累生死郎倒せるんじゃないのかな。

出来れば大筋には沿いたいけど、倒せるならそれでもいいか。

「ほらよ」

神原駿河専用装備を影から取り出す。

それは大型のグローブだ。

レイニーデヴィルの腕の上から被せるための物。

手首あたりまでしかないそれは炭素繊維で織られたグローブにスパイクと装甲を被せたものだ。

イメージはアームストロング少佐のグローブ。

「芸術的な錬金術が使えそうなグローブだな」

「モチーフは諸それだしな。お前の機動力を殺さず攻撃力と防御力を挙げるにはIS以外じゃそれしかなかった」

駿河が腕にグローブをはめて握りしめる。

「うん。しっくりくるな」

俺が銃を構え、暦さんが刀を構える。

そしてファイティングポーズを取る駿河。

「援護してくれご主人様!」

思い切り飛び出す駿河。

数歩でトップスピードに乗った。

そのまま腰を回してグローブを填めた左腕を大きく引き絞る。

初代怪異殺しは、動かない。

駿河の渾身の一撃は俺が援護を入れるまでもなくターゲットを捉えた。

甲冑の心臓のあたりを思い切り撃ちぬいたその一撃で甲冑が再度バラバラになる。

避けるそぶりを見せない当たり…。

いや、別にいいか。

「どうだろうか」

着地した駿河が散らばった甲冑を確認する。

「神原気をつ」

けろ、と暦さんが続ける前に動きがあった。

足元に落ちていた籠手。

それだけが動き出し、駿河の右足と左腕に掴みかかった。

「なっ!?」

「神原!」

「動くな駿河!」

移動術式展開。

加速術式オクテッド。

ターゲットは籠手!

トリガーを二回引く。

銃口から放たれた弾丸は八重の加速術式で速度を増しつつ、移動術式で定義された弾道を通る。

音速の数倍の速度で進む弾丸は空気との摩擦で温度が上がる。

温度上昇を足がかりにして着弾寸前で疑似聖銀を発動。

弾丸用俱利伽羅である擬似聖銀弾により弾丸は燃焼を始める。

疑似聖銀の効果によって移動術式も加速術式も壊れる。

が、問題は無し。既に籠手への直撃コースだ。

破魔の焔を纏った弾丸が、籠手を撃ちぬいた。

「今だ下がれ駿河!」

威力は定かではないが、破魔の力を持つ弾丸で撃ちぬかれ籠手の握力が下がったのだろう。

駿河は二つの籠手を振り払い、バックステップで戻ってきた。

そしてがくりと膝を地面についた。

「なんだ…これは…体が、重い!」

「大丈夫だ呪いの類じゃない。後ろで休んでろ駿河」

流れは原作に沿っている。

暦さんの声が奪われる下りは…別にどうでもいいか。

奴も馬鹿じゃない。不利とわかれば撤退するだろう。

それに時間はこちらの味方だ。

防戦一方でも勝つことができる。待っていれば苛虎の焔がここを焼き尽くす。

焔を苦手とする死屍累生死郎は必ず撤退する。

..........あれ? これやっぱ勝てるのでは?

さっきの疑似聖銀弾でひるんだのは破魔の力よりむしろ焔なのでは?

隣で刀を構える暦さん。

その握る刀の刀身は、サイコEカーボン。

霊的現象への親和性が高く、構成素材の大部分は炭素。

その刀身に手をかざす。

「俱利伽羅」

刀身に俱利伽羅をかけ、刀身を燃やす。

「その剣は不動明王が俱利伽羅を模して焔を纏ってる。後はわかるね?」

「後でいろいろ聞かせてもらうからな! 気功防御!!」

暦さんは吸血鬼でこそなくなったが気功で強化された脚力と防御力を持っている。

刀を大きく振り上げ、振り下ろしながら暦さんが死屍累生死郎に向かっていく。

振り下ろしながら走っていれば、仮に途中で切られても勢いで相手を切り相打ちにできる。

「あー…。ダメだったかぁ」

が、それは互いが剣で戦っているときの話だったのかもしれない。

もしくは相手が一枚上手だったとか、相手が俱利伽羅を警戒してたとか。

まぁともかく、暦さんは死屍累生死郎を切ることができなかった。

駿河の足の速さを奪ったのだろうか。

華麗なステップで暦さんの一撃を避けきった奴は暦さんの手を蹴り上げて刀を取り落とさせた。

体制をくずす暦さん。

その首をがっしりと掴んだ。

それもご丁寧に暦さんを俺に対する盾にしている。

「まぁ構わず撃つんですけどね」

死屍累生死郎の周囲へ銃口を向ける。

パァンパァンパァン。

今度は減速術式で速度を墜とす。

十分にコース干渉できる速度のそれに移動術式で干渉する。

三発の低速弾丸が死屍累生死郎の腕を穿つ。

籠手にめり込む弾丸!

「聖なる焔に抱かれて死ね!」

弾丸が燃え上がる。

死屍累生死郎はとっさに手を放す。

もう片方の手で埃をよけるように弾丸を払い落す。

「えほっ!えっほ!」

首を抑えて苦しむ暦さん。

刀に手を伸ばす暦さんに対して死屍累生死郎はそれを阻止するように手を伸ばした。











伸ばした腕は、突如溢れだした焔に阻まれた。 
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