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強い彼女

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第二章

「お前の家って剣道の」
「中に入ればわかるから」
「だから痛いっての」
 今度は手の甲を抓ってきた美里に言った。
「そんな怪力で抓られたらな」
「片手三本指立て伏せ二百回出来るから」
「右でも左でもだよな」
「そう」
「本当にプロレスラー並だな」
「その力の理由がわかるから」
「お家の中に入ったらか」
 手を離した美里に抓られていた部分をさすりながら問うた。
「それでわかるんだな」
「ここでは言わないから」
「知りたいなら中に入れ、か」
「そう。じゃあ」
「ああ、じゃあな」
「案内するから」
 美里はこう言ってだった。
 光弘を家の中に案内した、その立派な屋敷の中に。
 大きな道場があった、そこでは二十人位の大人と多くの子供達が稽古に励んでいた。光弘はその経彼等を見て言った。
「ああ、やっぱりな」
「うちは八条家お抱えの道場の一つ」
「そうなんだな、けれどな」
 それでもとだ、光弘は美里に問い返した。
「普通に剣道していてもな」
「あの怪力はない」
「プロレスラー並の数値にな」
 握力やそれがというのだ。
「陸上部顔負けの記録なんてな」
「それはうちの流派のこと」
「流派?」
「うちは直新陰流。これ持って」
 こう言ってだ、美里は。
 とんでもない形、八角の見るからに重そうな木刀を出してきた。そのうえで光弘に言うのだった。
「よかったら」
「えっ、これってな」
 光弘はその木刀を持って驚きの声を挙げた、重くてとても持ち上げられなかったのだ。
「何だよ」
「十一キロの木刀」
「十一キロかよ」
「直新陰流はこれを毎日千回二千回と振る」
「二千回かよ」
「そうなるまでに身体を鍛えて」 
 そしてというのだ。
「そのうえで」
「毎日二千回か」
「振るの」
「とんでもないな」
「私も毎朝振ってるから」
「毎朝かよ」
「それでヒンズースクワットもしていて」
 それでというのだ。
「鍛錬をしているから」
「スクワットもか」
「毎日」
「それでその身体能力か」
「勿論剣道の稽古もしているから」
 こちらもというのだ。
「だから」
「それでか」
「そう」
 それ故にというのだ。
「私はそうした身体能力になったから」
「そうだったんだな」
「あと」
 ここで美里は光弘の服の袖を持って囁いてきた。
「お家に来たから」
「ああ、そうだよな」
「お父さんお母さんお兄ちゃん公認だから」
「もう言ってたのかよ」
「これから紹介するから」
 自分の家族にというのだ。
「来て」
「じゃあな」
「あと部屋にも来て」
 美里のそこにもというのだ。 
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