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レーヴァティン

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第百七十九話 渡河その十一

「馬は粗末にはな」
「扱わなないことですね」
「そのこともな」
 何といってもというのだ。
「徹底しないとな」
「傷付いたら手当をして」
「飯もたらふく食わせてな」
 そうしてというのだ。
「よく休ませる」
「そうしますね」
「絶対にな、馬は消耗品じゃないんだ」
 間違ってもというのだ。
「生きものだからな」
「粗末にはしないですね」
「その消耗品だってな」
「粗末にはですね」
「したら駄目だからな」
 絶対にというのだ。
「勿体ないだろ」
「鉄砲も剣も鎧も」
「だからそういうのも粗末にさせてないだろ、俺は」
「軍律でも定めていますね」
「武器だってただじゃないんだ」
 そのことを言うのだった。
「それにものにだってな」
「魂が宿る、ですね」
「そうだろ」
 こう順一に話した。
「やっぱりな」
「そうですね、ですが」
「ですが?」
「それは日本的な考えですね」
「他の国だとか」
「特に欧州では」
 こちらではというのだ。
「キリスト教で魂があるのは人間だけです」
「そうした考えだったな」
「ですから」
「ものそして他の生きものもか」
「魂があるとはです」
「考えないか」
「今の久志さんの考えはまことに日本的で」
 それでというのだ。
「ギリシアや北欧は違いますが」
「ここにはキリスト教もあるしな」
「そのキリスト教の考えもあるので」
 それでというのだ。
「どうしてもです」
「ものにそうした考えはか」
「ないかと」
「そうなんだな」
「ですがものを大事にすることを定めたのは」
 軍律でというのだ。
「非常にです」
「いいか」
「はい、そして馬もです」
「大事にすることはか」
「正解か」
「非常にいいことです」
 まさにというのだ。
「馬も粗末にすると倒れます」
「そうだよな」
「はい、実際にナポレオンの頃フランスは馬不足になりました」
「戦争が続いてか」
「騎兵隊は常に馬に乗って移動していました」
 フランス軍ではそうだったのだ。
「人を乗せている分馬が疲れ」
「倒れていってか」
「数が減りました」
「そうだったんだな」
「ですから」
 それでというのだ。
「深刻な馬不足になりました」
「あそこ騎兵隊強かったよな」
「豊かな農業国なので馬も増やしやすいのです」
「そうだよな」
「ですから古来より騎兵隊が強かったです」
 そうだったというのだ。 
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