レーヴァティン
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第百七十六話 雪溶けと共にその十
「そうした国人はいないな」
「そして幕府もですね」
「悪政は許さない」
「己が私利私欲を貪ることは」
「そのことは」
「贅沢をするなとは言わない」
一切というのだ。
「俺はな、しかしな」
「それでもですね」
「民を苦しめるな」
「そうして贅沢を貪るな」
「それが上様のお考えですね」
「質素にしろとも言わないが」
それでもというのだ。
「民を苦しめるな」
「そういうことですね」
「上様のお考えは」
「どうした贅沢もいいですが」
「質素にせよとも言われないですが」
「民を苦しめないことだ、他の者を苦しめての贅沢なぞ何がいい」
英雄はこうも言った。
「それこそな」
「だからですね」
「そうした輩は許さない」
「決してですね」
「起きた世界でも本朝では殆どいなかった」
日本の歴史においてというのだ。
「いたが一揆を起こされた」
「そうでしたか」
「そうして破滅した」
「そうなのですね」
「公家でもいなかったしだ」
そうした者はというのだ。
「殆どな、国司は倒れるところに土を掴むと言ったが」
「それでもですか」
「その実は、ですか」
「言われる程ではですか」
「なかった様だしな、一揆を起こされた大名は領地を没収され処刑された」
島原の乱の松倉という者だ、三万石程の領地で十万石を公称しその十万石の格の為に民に恐ろしいまでの重税を課したのだ。それが島原の乱に至ったのだ。
「しかも大名だが打ち首だった」
「切腹でなくですか」
「打ち首ですか」
「それはまた厳しいですね」
「実に」
「それだけの罪を犯したということだ」
その松倉はだ。
「だからだ」
「武士そして大名でしたが」
「切腹を許されずですね」
「打ち首となった」
「そうなのですね」
「そうだ」
これは史実にある、一揆だけでなく悪政の責も問われたのだ。
「俺も同じ考えだ」
「悪政を敷く者はいらない」
「そうした輩からは領地を没収する」
「そして必要とあればですか」
「処刑もする、そもそも俺は世界を救う為にここにいる」
それならというのだ。
「その様な輩を許す筈がないな」
「ですね、ではですね」
「そうした輩も断する」
「そうしていきますか」
「いればな、悪政は獣や魔物よりも性質が悪い」
英雄はこうまで言った。
「賊が上にいる様なものだ」
「確かに。並の賊よりも質が悪いです」
「山や湖の賊は成敗しやすいですが」
「そうした賊は成敗しにくいです」
「多くの兵や城に守られているので」
「そして力も持っているからな」
並の賊達よりもだ、多くの兵という武力悪く言えば暴力に権力だ。この二つの力を備えているのが悪政を行う主だ。
「尚更だ」
「ですね、しかしですね」
「上様はそうした輩をお許しにならない」
「左様ですね」
「今言っている通りだ、優れた者は敵でも許すが」
そして用いるがというのだ。
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