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レーヴァティン

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第百七十一話 見破った伏兵その一

               第百七十一話  見破った伏兵
 英雄は進軍をしつつ空船や術で空を飛べる斥候の者達からも話を聞いていた、その話はどういったものかというと。
「敵の動きはこれといってです」
「おかしなものはありません」
「進軍は遅いですが」
「これといって」
「ただ」
 それでもというのだ。
「進軍は常に森や山の間と間です」
「これは甲斐の地形の為ですが」
「その中を進んでいっています」
「常に」
「森や山は伏兵を隠すには最適の場所だ」
 英雄は戦のこのことを話した。
「特に夜だ」
「夜に伏兵で奇襲を仕掛ける」
「まさに戦の常道の一つですね」
「寡兵で大軍に対するには」
「それが常道の一つですね」
「そうだ、だからだ」 
 それが常道の一つだからだというのだ。
「敵もだ」
「そうしてきてもですか」
「おかしくない」
「そう言われますか」
「そう思う」
 まさにとだ、英雄は斥候の者達に答えた。
「薩摩の釣り野伏だがな」
「それをですか」
「この甲斐でもしてくる」
「そうしてくるかも知れませぬか」
「十二万の大軍もだ」
 それが如何に大きな力でもというのだ。
「夜に急にだ」
「横や後ろから襲えば」
「最早ものの数ではない」
「そういうことですね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「ここはだ」
「是非ですね」
「備えておく」
「上様は先に少数の兵のそれに気をつけよと言われましたが」
「釣り野伏せにもですか」
「気をつけるべきですか」
「その方がいいな。敵はとかく数が少ない」
 英雄は敵の立場に立って話した。
「その兵でどう勝つか」
「そう考えるとですね」
「釣り野伏せは充分有り得る」
「そうなりますか」
「薩摩のお家芸だが薩摩だけがしていいという決まりはない」
 そうしたことはないというのだ。
「だからだ」
「この甲斐でもですか」
「敵がしてくることは有り得る」
「ではですか」
「そちらにも気をつけてですか」
「先に進みだ」
 そしてというのだ。
「敵軍と戦うが」
「深追いはしませぬか」
「それは」
「決して」
「そうだ、そして夜にまで追う様なことはな」
 これはというのだ。
「決してだ」
「せずですね」
「そしてですね」
「慎重に進み」
「敵に隙を見せない様にしますか」
「若し隙を見せれば」
 その時はというのだ。
「言うまでもないな」
「確かに」
「釣り野伏せなぞ受ければ」
「如何に大軍といえど」
「敗れる」
 そうなるというのだ。 
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