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魔王の友を持つ魔王

作者:千夜
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§???--《大晦日リターンズ!》

 
前書き
前回の話。
完全に僕のミスですね、すいません
年明けたら修正します(汗
ご指摘感謝です

とまぁ色々ありましたが(っか前回更新から間が空いてませんが)今年最後の更新です
このネタをやりたいが為に教主編今月中に終わらせたかったのよ……!!(苦笑


あ、よーか君の黎斗の呼び方が「師祖」になっていますが師父の師父が師祖らしいので。
本当は作中で説明出来れば良かったんですが大聖編の終わりまでロクにれーととよーかの会話が無いので説明する機会がありませんでした。
こんなとこで説明すんなよ、って話なんですがタイムリーなネタの都合上ここでの解説をお許しくださいませ

マトモに作中時系列適用するとランス戦も終了してたり色々カオスなんですが……そこは、まぁいいじゃない(爆

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 全ては黎斗の一言から始まった。

「そうだ。大掃除をしよう」

「「「はぃい?」」」

「おまえんちの?」

 呆然とするエリカ、祐理、リリアナ。少女達に悩まされることが無いような案件だからか案外護堂は乗り気だ。

「うんにゃ。僕の倉庫(・・)

 いくら昼休みとはいえ人目もある。本来なら教室でするような話では無いのだが。

「そろっと年末総整理の時期でさ。メンテしないと呪物達(みんな)がグレる」

 一人でやっては新年になってしまう。新年に気付かず元旦を掃除で過ごした、屈辱のあの日以来、黎斗は掃除を一人でやらない。神様(スサノオ)や鬼達、媛や僧に手伝ってもらっていたのだ。おかげでこの時期になると黒衣の僧正は黎斗達の小屋に現れない。

「スサノオ達が今年は忙しいからさ」

 基本下界には我関せず、なスタンスを取る古老だがまだ被害の掌握が終わっていない。天叢雲の一件で黎斗が殲滅した仲間分をカバーするのにてんてこ舞いだ。大将(スサノオ)を金属化して長期間放置していたツケがこのタイミングで回ってきた。所詮、自業自得である。

「それで俺達に白羽の矢が立ったと」

「そ。信用出来る人に絞るとあとよーかと恵那、エルかな? あぁ、あと翆蓮がいたか」

 陸鷹化については教主に直談判して借りる手はずになっている。ついでに教主が申したててくれたのは嬉しい誤算だ。

「はぁ!? 義姉さんも来るのか!?」

 思わず叫ぶ護堂に、クラスの皆からの白い視線が突き刺さる。まぁ、気持ちはわからないでもない。黎斗にとっても予想外の事態だったのだから。

「凄まじい人員ね……」

 エリカがドン引きするところなど初めて見た気がする。

「うん。あ、人間の皆には幽世で動けるように札渡すから」

「……ちょっと待て水羽黎斗。その倉庫とやらは幽世にあるのか?」

 顔をひきつらせたリリアナに黎斗は即答する。何を言っているんだ、と言わんばかりの口ぶりで。

「そうだよ? 幽世の衛星軌道上に隠してある。あ、ヒミツだかんね」

「言わないし、言っても誰も信じないわよ……」

 平然と話す黎斗にエリカが苦言を呈する。

「な、なんだか大変なことになりそうです……」

「……万里谷、それは霊視か?」

「これは予想、です」

 波乱の予感に護堂と祐理は二人揃ってうなだれた。





 想像以上に黎斗の段取りは壊滅的で、結局掃除開始は十二月最終日までずれ込んでしまった。そんなグダグダな有様でも、まぁ日頃の感謝もこめてそれなりにはやってやろう、とは各自がうっすらと思っていたのだが。

「……なんか、もう疲れたわ」

 憮然とした様子のエリカ。彼女の反応もやむを得ない。

「この階にある奴は危険性(・・・)は無いけど取り扱い超注意ね。プレミアばっかだから」

 整理開始前の黎斗の台詞だ。ふざけるなといってやりたい。

「カール大帝の直筆サインにマント、ファウスト博士の誓約書。ゲーテの手書きの物語にモーツァルト手書きの楽譜。これは……ナポレオンの帽子だと?」

「ニュートンの羊皮紙に直江兼継の愛の兜。チンギスハンとの文通にヴラド公の食器。ロゼッタストーン(本物)って何よ。馬鹿と冗談が総動員よ。何なのこれ」

 酷すぎた。黎斗の手書きの文字で名称が書いてあるのだが、信憑性の怪しい品のオンパレードだ。「世界最初の羅針盤!!」などとかかれても反応に困る。

「ヴィクトリア女王の王冠、リンカーンさんの顎髭、コルベールさんの手帳、ヴァスコ=ダ=ガマさんの香辛料……黎斗さんは何者ですか。と、いうかコロンブスの卵って……」

 ギャグなのか真面目なのかわからない辺りがタチが悪い。ちなみに少女達が百科事典と思い本棚に納めた分厚い本は、黎斗が出会った著名人の手形がひたすら保存されている。信憑性なんか欠片もないが。

「歴代将軍のちょんまげとか何を思って集めたんだ……」

「……とりあえずこの階は終わりね。下に行きましょう」

 ちなみに上の階は黎斗と教主と護堂が作業している。第一級の超危険物の集まりだ。なんでも聖騎士如き(・・)では死ぬとなんとか。どんな代物だと文句を言いたい。兎にも角にも三人は恵那とエル、陸鷹化が作業していく下の階へ降りていく。

――真の地獄は、ここからだった。

「この階は基本的(・・・)に人間でも使える道具が多いです。が、危険なので気をつけてくださいね」

 基本的にって何だ、と言おうとして鷹化は諦める。突っ込んだら負けだ。

「うわー。この武器キレイだねぇ」

 恵那が瞳を輝かせて長剣を見る。

「あぁ、ダーインスレイヴですか。マスターお気に入りの一品ですよそれ」

「……ねぇ。ダーインスレイヴって呪われし秘宝だと思うんだけど。というかまだ呪い健在じゃないこれ?」

 ドヤ顔で解説するエル。やってきてすぐに、一目で危険性を見抜いたエリカが警告を発するが。

「マスターが呪い程度に屈服するワケないじゃないですかー。この呪いさん逆にマスターに屈服してるから大丈夫です」

 黎斗が握った瞬間こそ、呪いは黎斗を操ろうとした。握った瞬間こそは、だ。当然黎斗に敵う筈も無く、武器が完全に沈黙するまで一秒もかからなかった。黎斗に従属した彼らは黎斗の眷属たるエルが触れた程度で呪いをかける程命知らずではない。

「「「…………」」」

 唖然とする一同。エルが硬直している祐理の手からひょい、と取り上げたのは分厚い冊子。下手くそな絵と字がびっしり書き込まれている。特に文字は日本語とは思えない。

「あ〜。コレこんなところにあったんですか。……どおりでマスターが探しても見つからないワケですね」

「……エルちゃん。コレなに?」

 恵那の指さす絵は三角丸四角が縦に連なっており、丸の中には×印が三つほど描かれている。四角の四隅からは棒線が飛び出しており、その横に書かれているのはH2SとCOの文字。初見で理解出来るわけがない。

「それは毒ガスのレシピです」

「「……え゛」」

「……ねぇリリィ。私幻聴が聞こえる程に疲れてるみたい。護堂の元で休んでくるからここお願い」

「逃げるなエリカ。これは現……現実だ」

 卑怯だ、とか外道だ、とかそんな感想すらも出て来ない程疲れきった、否、無表情なリリアナが漏らした感想は、全員の内心を代弁していた。

「毒ガスなんかなにに使うのさ……」

「経口接種ならば呪いは神にも有効です。無色無臭ならそれなりに有効らしいですよ?」

 マスターは権能(ヤマ)のおかげで毒へっちゃらですし、と続けるエルに一同はぐうの音も出ない。

「周囲が荒野ならばこれでまつろわぬ神を倒せるのではないか、と考えたらしいのですが結局没になりました」

 まつろわぬ神は無人の地に行きませんし都会で毒ガスは危険ですからマスターは没案になさいました、と補足する。

「……いや、そーゆー問題じゃ」

 流石に恵那も表情がひきつる。まつろわぬ神相手に毒ガスなどというチャチな代物が通用するものか。

「毒ガス程度で倒せるのならば苦労しないわ」

 憮然として言い返すエリカにエルは笑う。

無色無臭(・・・・)かつ神獣を秒殺出来る威力の毒なら如何です?」

「「馬鹿な!」」

 そんな毒など有り得ない、そう否定する大騎士達に対し、何かに気づいた鷹化が横から口を挟む。

「……いや。有り得る。狐の姐さん、それは師祖の権能かい?」

「ご明察」

 黎斗の権能「闇夜に眠る夢をみる」で発生させた邪気を利用しているらしい。らしい、というのはエルには理論がわからなかったからだ。威力を下げる代わりに邪気の気配を薄め無色にすることで転用する、とは本人の弁。どっちにしろわかりたくないしわかったら負けな気がする。

「コンセプトは「規格外(ぼくら)が出張らなくても神を殺せる必殺兵器」「あなたの町の鉄壁★守護者」らしいですよ。もっとも使用者が最初に毒を浴びて即死するので没案化しましたが」

「神をも殺せる毒ならばそれはそうでしょうねぇ!!?」

 怒鳴る彼女を責めるものはここに誰もいない。思考を停止させたまま、黙々と一同は掃除と整理をこなしていく。





 六階。倉庫最上階にして神殺しや神以外は取扱い不能な品が眠る、超危険エリアだ。

「あ。ソレ黎斗がよく用いる槍だよな」

 ロンギヌスを拭いている黎斗の背後から護堂が声をかけてくる。

「そーだよ。ロンギヌス。神殺しの槍」

「ん?」

 聞き覚えのあるフレーズに脳から情報を引っ張り出す。はて、どこかで聞いたような。

「ロンギヌスって聖絶の言霊じゃないかそれ!!」

「ん。あぁ、そだね」

「煩いですよ義弟よ」

 どうでもよさそうな二人の声に、護堂は自分がおかしいのではないだろうか、などと錯覚を受ける。否、断じて否だ。自分が間違っている筈が無い。

「……なんでそんなもんがここにあるんだ?」

「いや。そんなこと言われても……僕の相棒だし?」

 なぁ、などと槍に語りかける黎斗。

「いや。じゃあエリカの聖絶の言霊って……」

「んー。よくわかんないけどロンギヌスの力の一端を使ってるっぽいカンジだよね」

 微妙に修得してないからよくわかんないけど、などと続ける黎斗に護堂は戦慄する。

「おい、まて。それじゃあこの槍はエリカのやつが聖絶の言霊を使っているのと同じ威力を常時出せるのか!?」

「何言ってんのさ。コイツがそんな雑魚なワケないじゃん」

 呆れたような黎斗の視線とそれに同意する教主に果てしない疎外感を護堂は感じる。

(駄目だ……ここにいる二人は人間やめてる。話が全く通じていない……)

「お義兄様、こちらの武器はどうすれば」

 教主が小首を傾げた先には古びた剣がソファーの上に置かれていた。

「天之羽々斬とかジュワユーズ、オハン達か。そいつら結構メンドくさいから僕がやろう。愚者の翼(イカロス)やアンドヴァリナウト、賢者の石とかお願い。こっちにあるから。あ、そのお酒飲んじゃダメよ。酒呑の大将を殺しかけたヤバい酒だから」

「わかりました」

「おかしい……絶対おかしい……」

 護堂が部屋の隅で唸っている間にも、作業は刻一刻と進められていった。





「いやー。今日は手伝ってくれてありがとう!」

 現世に戻ってきて黎斗が皆に感謝を述べる。場所が取れなかったので草薙家の玄関前で閉会式だ。

「いや。うん。お前が良いならそれで良いんだ……」

「よ、良かったですね……」

「「「……」」」

 教主の奮闘の甲斐もあり、予想以上のペースで片付けが終わった。嬉々とする黎斗。微妙な顔の護堂と祐理。言葉を出すことすら諦めてその他、と実に対照的な表情だ。

「お義兄様。また何かありましたら呼んでくださいませ。では羅濠はこれで失礼いたします」

「あ……もっとゆっくりしていけば良いのに」

 丁寧に一礼し、姿を消した羅濠教主に黎斗がぼやく。

「まったく恥ずかしがり屋だねぇ」

「「「それはない」」」

 しょうがない、といった風の黎斗に対し、この場の全員が同じ事を口に出して否定する。全員が全員、見事な満場一致っぷりを見せつける。

「……まぁいいや。じゃあ僕はこれから帰省するかな」

「え。お前これから帰省すんの?」

 考えてみればアパートが消滅し、日々アパートを探しながらホテル住まいをしている黎斗に年末帰省をしない、という選択肢は無いだろう。

「うん。甘粕さんからレンタカー借りて」

 見れば護堂の家の前にいつの間にか止められているレンタカー。

「……れ、れいとさーん? 車の運転免許はまだ取れないですよー?」

「じゃーん。コレ、なーんだ?」

 これはマリアンヌと同じく危険なニオイがする。黎斗の年齢で車の免許証など取れる筈が無い。十中八九、偽造だろう。

「そんな目で見なくても大丈夫だよ。一応自動車学校卒業しているから」

「こっから地元まで距離あるだろ。今年中に帰れるのか?」

「うーん。今からなら、高速ぶっぱすれば夕方には帰れる筈。道に迷ったら死ねるけど」

 時刻はまだ正午を少し回ったころだ。時間的な余裕はかなりある。

「さて、それではみんな、本当にありがとう。では」

 感謝の言葉と共に黎斗が運転席に乗り、狐に戻ったエルが後部座席に座りこむ。

「あ、そうそう来年もぜひ掃除をお願いしま」

「「「絶対イヤ」」」

「……oh」

 間髪入れずに拒否の言葉を受け取って、少し凹むも気を取り直す。

「まぁ、来年になったらまた頼む思」

「「「だからイヤ」」」

「れーとさん、ドンマイ」

 苦笑しながら助手席に乗る恵那。誰だってあんな万魔殿、やりたくないに決まっている。

「しゃーない。来年は羅濠と護堂と恵那とエルと媛さんとスサノオ、かな」

「おい、俺を勝手に巻き込むな!!」

「じゃあみなさんよいお年を~」

 護堂が何か喚いているが、無視。みんなに挨拶をして出発だ。

「「「良いお年をー」」」

「ちょ、お前ら、俺を売るのか!?」

 護堂の悲鳴が、年末の空に虚しく響いた。 
 

 
後書き
それでは皆様良いお年を! 
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