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レーヴァティン

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第百六十四話 幕臣その六

「ですから」
「道教や回教はあるな、神戸や長崎には中華街もある」
 言うまでもなく華僑達がいる場所である、この浮島にも西の浮島にも中華街は存在していてそこに中華の世界が存在しているのだ。
「だからな」
「はい、ですから」
「道教もあるな」
「回教はアラブの商人達が信じているので」
「それもあるな」
「ですが」
 それでもとだ、平野はさらに話した。
「他の多くの教えはです」
「今はこの浮島には入らないな」
「伝える者達が石になって海の中にあるので」
「では仕方ないな」
「はい、ですから」
「そのことはわかった、では今はそうした教えだけをな」
「考えていきますか」
「そうする」
 こう平野に答えた。
「さしあたってな」
「今は」
「そうする、あと耶蘇教にも宗派があることは今言ったな」
「異端ですね」
「あの教えはこの世界では自分達とは違う宗派を嫌っていてもな」
「争いまではいっていませんな」
「西の浮島でもそうだった」
 英雄がかつていて久志と共に旅をしていたこの浮島の話をした。
「旧教と新教、正教がある」
「その三つが」
「大きく分けてな、そしてお互いにだ」
「異端とですか」
「相手は正しい教えでないと言い合っている」
「それはどうも」
 平野は英雄のその話にどうかという顔になって述べた。
「仏教徒はです」
「違うな」
「はい、仏教では宗派は違えど」
「そこまでは言わないな」
「日蓮宗でも」
 この世界でもある宗派である、他宗派を攻撃しているが別に攻め滅ぼしたりはしないことはこの世界でも同じだ。
「流石に」
「そうだな、だがだ」
「耶蘇教は違い」
「俺達が起きた世界ではそこまでな」
「争いますか」
「そして殺し合う」
 そこまで至ることも話した。
「それも互いに一人残らずだ」
「そうなるまで殺し合うのですか」
「無制限にな、だが」
「この世界での耶蘇教はそこまで至らない」
「異端と言い合い嫌い合っても」
 それでもというのだ。
「そこまでだ、精々教えで言い合いになってだ」
「喧嘩程度ですな」
「それで終わる、だがその喧嘩もな」
 教えを巡っての論争、そこからそれに発展してもというのだ。
「止めることだ」
「喧嘩は法に反するので」
「そうだ、止めてだ」
 そしてというのだ。
「罰する」
「そうしますか」
「論争はいいがな、むしろな」
「存分にですか」
「してだ」
 そのうえでというのだ。
「お互いを磨けばいい、しかし」
「拳を出すことは許さない」
「他の教えもそうだが」
「耶蘇教は特にその傾向が強いので」
「宗派同士で嫌い合っているからな」
 それだけにというのだ。
「そうなりやすいからな」
「では」
「そこもな」
「気をつけます」
「そして特定の宗派が幕府の政に関わることはさせない」
 このこともだ、英雄は言った。 
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