銀河転生伝説
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第13話 帝国領侵攻
イゼルローン要塞陥落――この報は帝国全土に大きな衝撃を与えた。
この数十年、帝国本土の安全を支え続けたイゼルローン要塞が奪取されたということは、今までの帝国と同盟の立場が逆転することを意味する。
すなわち、イゼルローン要塞を落とさぬ限り帝国は一方的に反乱軍(自由惑星同盟)から攻められることになるのだ。
この事態に、イゼルローン要塞の駐留艦隊司令官ゼークト大将は要塞陥落の責任を取らされ2階級降格の上で左遷された。
また、軍務尚書エーレンベルク元帥、統帥本部総長シュタインホフ元帥、宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の帝国軍三長官も辞表を提出したが、擦った揉んだの末それは却下された。
<アドルフ>
イゼルローン要塞が陥落したか。
帝国内は大騒ぎだ。
ま、反乱軍の侵攻を6度も粉砕した難攻不落の要塞が敵の手に渡ったんだから混乱するなという方が無理だわな。
原作との最大相違点はゼークトが生き残ったことだろう。
前に、ゼークトのオヤジに『一時の憤りで兵を無為に失うのは愚将することだ。指揮官のプライドを満たすための無謀な突撃は帝国の貴重な艦や兵を無為に損なう。そして、その結果はただ敵を利するのみだ。これは帝国に対する裏切り行為に等しい』とか言っといたから、それを覚えてたんだろう。たぶん。
ゼークトはイゼルローン要塞陥落の責任をとらされ、2階級降格の上、左遷された。
が、そこを俺が麾下の分艦隊指揮官としてスカウトした。
このオヤジ、無能……というわけじゃないからな。
純粋な戦術能力でなら一流と評して問題ないだろう。
現に、原作と違って生き残ったのもその証明になるかもしれない。
先日の敗戦で多少傲慢さも無くなっただろうしな。
ついでに、ナトルプのおっさんの教え子であるクリストフ・フォン・ドロッセルマイヤー少将も麾下に加え、分艦隊司令を任せた。
この後は……反乱軍の帝国領侵攻か。
* * *
――自由惑星同盟 首都星ハイネセン――
ヤン・ウェンリーは難攻不落の代名詞と言われたイゼルローン要塞を味方の血を一血も流さずに奪取した。
本来ならば、この後帝国軍の侵攻をイゼルローン要塞で防ぎつつ、国力の増強に励むのが上策であっただろう。
だが、人の心はそう単純ではない。
この数十年間、一方的に攻められるだけだった同盟市民はこの狂喜の前に理性など軽く吹き飛ばしてしまい、いつしか貪欲に勝利を求めるようになる。
自由惑星同盟領内では出兵論が市民の間に蔓延し、マスメディアもこれを煽る。
支持率を気にする政治家たちもこれに便乗し、最高評議会では帝国領への出兵が可決された。
そして、同盟軍統合作戦本部で帝国領侵攻の作戦会議が行われた。
「さて、今回の帝国領への侵攻作戦はすでに最高評議会によって決定されている。先ず部隊編成を後方主任参謀を勤めるキャゼルヌ少将から説明して貰おう」
「はっ、先ず総司令官は宇宙艦隊司令長官であるラザール・ロボス元帥閣下が勤められます。総参謀長グリーンヒル大将、作戦参謀コーネフ中将以下5名、情報参謀ビロライネン少将以下3名。後方参謀は4名。実戦部隊としてルフェーブル中将の第三艦隊、ビュコック中将の第五艦隊、ホーウッド中将の第七艦隊、アップルトン中将の第八艦隊、アル・サレム中将の第九艦隊、ウランフ中将の第十艦隊、ボロディン中将の第十二艦隊、そしてヤン中将の第十三艦隊と、合わせて8個艦隊を投入します。その他を含めた総動員数3022万7400名」
会場の彼方此方から『おお~』と感嘆の声が上がる。
「この遠征軍の具体的な行動計画はまだ立案されていない。本日の会議はそれを決定する為のものだ、諸君の活発な提案と討論を希望する」
「本部長閣下、作戦参謀フォーク准将であります。今回の遠征は我が同盟開闢以来のそうきょであると信じます。幕僚として、それに参加させて頂けるとは武人の名誉。これに過ぎたるはありません」
提案でも討論でも無い自分の想いを語るフォーク准将。
周囲の所々から白けた視線が飛ぶが、彼は気にしない――気づかない。
次いで、第十艦隊司令官のウランフ中将が発言する。
「総司令官にお尋ねしたい。我々は軍人であるからには、行けと命令があれば何処へでも行く。まして、ゴールデンバウム王朝の本拠地を突くというのであれば尚更だ。しかしそれには周到な準備が欠かせない。先ずこの遠征の戦略上の目的をお聞かせ願いたい」
「作戦参謀、説明を」
「はっ、んん。大軍をもって帝国領土の奥深く侵攻する。それだけで帝国の人間共の心胆を寒からせしめることができましょう」
「では、侵攻するだけで戦わずに引くというわけか?」
「そうではありません。高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」
「もう少し具体的に言ってくれ。あまりにも抽象的すぎる」
「要するに、行き当たりバッタリということではないのかな」
提督たちの中で、最年長である第五艦隊司令官アレクサンドル・ビュコック中将が皮肉を利かせる。
「他に何か?」
「いいですか?」
「ヤン中将、どうぞ」
「帝国領内に侵攻する時期を現時点に定めた理由を聞きたいのだが」
「選挙が近い為ではないかな?」
ビュコックが軽口を挟み、周りから笑いが漏れる。
「戦いには機というものがあります。それを逃しては結局運命そのものに逆らうことになります」
「つまり、現在こそが帝国に対して攻勢に出る機会だと言いたいわけだ」
「攻勢ではありません、大攻勢です! イゼルローンを橋頭保と為し、ここから帝国領深く侵攻する。さすれば帝国軍は狼狽し為すところを知らないでしょう。同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列を成し、自由惑星同盟正義の旗を掲げて進むところ勝利以外の何物もあり得ないのです」
「しかしその作戦では隊列があまりに長くなり、補給にも連絡にも不便をきたすことになる。しかも敵は我が軍の細長い側面を突くことにより、容易に我が軍を分断することができる」
得意気に持論を語るフォークに、ヤンが反論する。
「なぜ分断の危機のみを強調するのか小官には理解致しかねます。我が艦隊の中央部へ割り込んだ敵は前後から挟まれ、集中砲火を浴び惨敗することは疑いありません。ヤン中将の仰ることは取るに足らぬ危険です」
だが、フォークは気にも留めない。
彼は敵が自分の思惑通りに動くと信じて疑っておらず、それ以外の可能性を考慮しようともしない。
「いや、帝国軍の指揮官はおそらくローエングラム伯となる。彼の軍事的裁量を考慮に入れて、今少し慎重な計画を立案すべきだ」
「ヤン中将、君がローエングラム伯を高く評価していることは分かる。だが彼はまだ若い、失敗することもあるだろう」
「それはそうです。ですが彼が犯した以上の失敗を我々が犯せば、彼が勝って我々が敗れるのです」
「それは予測にしか過ぎませんなヤン中将。敵を過大評価し必要以上に恐れるのは武人として最も恥ずべきところ。ましてそれが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては、いわば敵を利する行為でありましょう。どうか注意されたい」
「フォーク准将! 貴官の今の発言は礼を失しておるぞ」
「どこがです?」
「貴官の意見に賛同せず、慎重論を唱えたからといって利敵行為とは何だ! それが節度ある発言と言えるか!」
「私は一般論を申し上げただけです。一個人に対する誹謗と取られては甚だ迷惑です! そもそも、この遠征は専制政治の圧政に苦しむ銀河帝国350億の民衆を解放し救済する崇高な大義を実現するためのものです。これに反対する者は結果として帝国に味方するものと言わざるを得ません。小官の言うところは誤っておりましょうか? 例え敵に地の利有り、あるいは想像を絶する新兵器が有ろうとも、それを理由として怯むわけにはいきません。我々が解放軍として大義に基づいて行動すれば帝国の民衆は歓呼して我々を迎え、進んで協力するに違いないのです。さすれば、この戦いは――」
一人嬉々として演説を始めたフォークに諸提督たちは嫌気が差し、その後会議は消化試合の如く進み終了した。
結局、この作戦会議において、帝国領侵攻作戦の実態は何の戦略的意義も無い行き当たりバッタリの作戦でしかないということがハッキリしただけであった。
* * *
自由惑星同盟の帝国領遠征軍は総司令部をイゼルローン要塞内に設け、3000万人の将兵を擁する8個艦隊約20万隻(その他の艦艇含む)を帝国領に向けて出撃させようとしていた。
これに対し帝国では、ローエングラム伯ラインハルトを迎撃の任に当てるべく勅命が下った。
もっとも、帝国上層部では勝利によってラインハルトの名声が高まり過ぎることも恐れたため、門閥貴族筆頭のアドルフ・フォン・ハプスブルク上級大将にも反乱軍迎撃の勅命が下る。
銀河は、再び血に塗れようとしていた。
<アドルフ>
え、俺も参加すんの?
せっかく、先日2人目のメイドさん(ミーナ)を孕ませたばかりだってのに。
もうちょっと侘び寂び萌えってもんを考えてほしいよね。
あ~あ、またエロゲやる時間が減ってしまうな。
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