アクタイオンの鹿

　犬達と共に山に入った、そうしてこの日も見事な狩りを行っていたが。
　この時アルテミスはその山にいた、そして自身の侍女達と共に狩りを楽しんでいたがそれが一段落した時にだ。
　汗を拭きつつこう言った。
「いい汗をかきましたね」
「はい、今日も」
「楽しい狩りでした」
「獲物も多く獲りましたし」
「よかったですね」
「全くです。それで汗をかいたので」
　それでとだ、女神は侍女達に話した。
「汗を流したくなりました」
「では泉に行きましょう」
「そちらに行きましょう」
「そこで汗を流しましょう」
「そう致しましょう」
「いいですね、では」　
　アルテミスは侍女達の言葉に頷いてだった。
　そのうえで泉に向かいそこで身体を清めた、その泉にだった。
　アクタイオンは向かっていた、彼は犬達を見て言った。
「よく動いて汗をかいて喉が渇いたね」
「ワン」
「ウォン」
　犬達は主にその通りだと応えた、アクタイオンは彼等の言葉を聞いてさらに言った。
「じゃあ泉に行ってお水を飲もうか」
「ワン」
　犬達はそれならと応えた、そしてだった。
　泉の方に行った、そこで水を飲もうとしたが。
　木々をどけて泉のところに出るとだ、その泉の中に。
　アルテミスと侍女達がいた、アクタイオンは伝え聞く姿のままの女神の姿、見事な波がかった金髪を後ろで束ねはっきりとした中性的な顔立ちに緑の大きな瞳、長身で見事な白い肢体の女神を見て驚きの声をあげた。
「アルテミス様！？」
「人間！？」
「人間の男！？」
　侍女達がアクタイオンの声に声をあげた、そして。
　すぐに女神を囲んで女神の肢体を見せない様にした、だが。
　長身の女神は顔だけが見える、アクタイオンはその女神に咄嗟に謝罪した。
「す、すいません！」
「ぶ、無礼者！」
　アルテミスはアクタイオン、弓を手にし周りに犬達がいる彼に顔を真っ赤にさせて怒った顔で怒鳴った。
「女神の裸を見るなぞ！」
「す、すぐに帰ります！」
「許しません！」
　こう言ってだった、女神は。
　アクタイオンにこう告げた。
「鹿になりなさい！」
「うわっ！」　
　アクタイオンは女神の言葉を受けてすぐに鹿になった、服はその場に落ちた。
　その彼にだ、アルテミスはさらに言った。
「三日の間そうしていなさい！神罰です！」
「ヒーーーーーーーーン！！」
　アクタイオンは鹿の鳴き声を上げてその場を駆け去った、アルテミスはその彼を怒った顔で見送ってから言った。
「全く、不届きな」
「全くです」
「女神の裸身を見るなぞ」
「わざとはないといえ不遜です」
「まさに不届きです」
「三日あの姿で反省していなさい」
　アルテミスは頬を膨らませて言った。
「三日で元の姿に戻るからいいです」
「あの、ですが」
　ここで侍女の一人が女神に言った。
「あの狩人犬を連れていました」
「狩人なら当然ですね」
　アルテミスはその侍女に平然として返した。
「それも数匹連れていましたね」
「はい、それでなのですが」
　侍女は主におずおずとして述べた。
「犬は鹿を襲いますね」
「となると」
「はい、あの狩人は今は鹿の姿ですから」
　それでとだ、侍女はその顔を次第に青くさせつつ話した。