魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第8章:拓かれる可能性
第247話「再起奮闘」
前書き
引き続き戦闘です。
前回描写したキャラ以外の戦闘になります。
「恭也……!無事だったか……!」
「父さんこそ……!」
優輝達が通っていた学校の門にて、士郎と恭也が合流していた。
他にも、忍や桃子と言ったそれぞれの家の者も来ていた。
「……やはりと言うべきか……歯が立たなかったよ」
「こちらの攻撃が当たらないというのは、聞いていた以上に厄介だな……」
二人と美由希は神界から来た“天使”と戦った。
月村邸と高町家、どちらもたった一人しか来ていなかった。
対し、こちらは全身全霊で挑み……一切、歯が立たなかった。
当然だ。今だ戦い続ける優奈達と違い、“格”が足りないのだから。
「妖が再度出現した時はどうなるかと思ったが……」
「とにかく、私達も避難しましょう」
忍の一言に、士郎たちも話を切り上げる。
現在、とこよと紫陽達の奮闘によって、国守山周辺以外の敵は一掃した。
避難に関しても、幽世に還った紫陽が門を通して呼びかけており、士郎たち以外にもたくさんの人が幽世に避難していた。
「そうしよう。美由希、歩けるかい?」
「何とか……」
戦闘に出ていた三人は、見事なまでにボロボロだ。
三人以外にもノエルとファリンもボロボロだった。
自動人形でもある二人の場合、体の一部が欠損している程だ。
「………」
「桃子?」
ふと、桃子が国守山の方を見る。
そこには、学校からでもはっきり見える程、極光と“闇”が飛び交っていた。
「……なのは達が心配なのかい?」
「……ええ、そうね……」
「僕達には、信じて祈る事しか出来ない。……辛いだろうけど……」
「分かってるわ。……行きましょう」
そう言って、士郎達は幽世の門を通って避難していった。
「フェイトとレヴィは落ちてきた人達の保護!ユーノはそのフォローだ!はやて達はまだ回復していない人を守れ!……他全員は、応戦だ!」
クロノの指示に、全員が一斉に動く。
緋雪を始め、一部の者はまだ目覚めていない。
まだ祈梨の障壁は残っているが、飽くまでそれは余波を防ぐためだ。
護衛が必要なため、はやて達をそこに着けた。
シャマルも回復のため残っているので、順当な組み合わせだ。
「レヴィ、最高速で……ううん、それを超えて皆を助けるよ」
「任せて!スピードならボクも自信あるからね!」
次に、スピードの速い二人が、上空から落ちてくるリンディ達を保護する。
優奈が展開した理力のネットで、地面との激突は避けられているものの、戦場に野ざらしはさすがに危険すぎるからだ。
二人のフォローとして、結界やバインドで支援できるユーノを充てている。
「(あの二人を主軸に動けば、まだ僕らでもやり合えるはずだ……!)」
魔力弾とバインドを駆使しつつ、“天使”の一人を相手取るクロノ。
一対一では圧倒的に不利だが、それでも簡単には負けない強さはある。
加え、今は心強い味方としてエルナとソレラもいた。
復帰出来ていない人の分、数は減ったものの、戦力は上がっている。
「(そもそも、僕自身が真正面からやり合う必要はない。連携を取れば……!)」
後退しつつ、バインドと魔力弾で上手く攻撃を凌ぐ。
そして、設置型バインドで一瞬動きを止め……
「はぁぁあああっ!!」
「(支援だけでも、十分な効果を発揮する……!)」
そこへ、エルナの一撃が突き刺さった。
「……援護する……!」
「ありがたい……!さすがに押され始めていた所だ……!」
短く言葉を交わし、クロノはエルナとソレラの中間……中衛の位置に収まる。
オールラウンダーであるクロノとしては、最も動きやすいポジションだ。
「(他の皆は……よし、上手く連携が取れている)」
神夜はクロノと同じようにエルナとソレラの支援をするように立ち回っている。
アリシアとリニスは連携を取りつつ、上手く“天使”の攻撃をいなしていた。
サーラとユーリに至っては、神を二人相手に耐えていた。
キリエとディアーチェもエルトリアで連携を鍛えていたのか、“天使”とギリギリ互角に戦えていた。
「(他はまだ目覚めていない。……それでも、現状互角なら突破口があるはずだ)」
相手はイリスの“闇”でさらに強化された。
数も多いため、エルナとソレラがいなければ負けているのは確実だ。
それを今は互角に持ち込めている。
まだ目覚めていない人もいる状態で、だ。
「(経験と慣れが、僕らを後押ししてくれている。それに、敵の数も減っている)」
祈梨とイリスの戦闘の余波で、何人かの“天使”は倒れている。
そのおかげで、人数差も縮まり、劣勢を覆していた。
「ッ……!」
その時、アリシアが刀を大きく弾かれてしまう。
リニスのフォローも間に合わず、隙だらけな体に攻撃が直撃しようとするが……
「っ、ちぃっ……!」
“ギィイン”と、“天使”が繰り出そうとした理力の剣が逸らされる。
逸らしたのは、遠くから飛んできた氷を纏った槍だ。
「はぁああっ!!」
さらに、追撃のように炎を纏う人影が飛び出す。
アリサだ。先程の槍はすずかの仕業だろう。
「(二人が目を覚ました。……いや、二人だけじゃないか)」
「ちぃっ……!」
「っ、隙を晒したな!蛮神!!」
炎の魔力弾が“天使”を襲い、それを“天使”は理力の障壁で防ぐ。
それを好機と見たディアーチェが、殲滅魔法を叩き込んだ。
「(シュテル……それにアルフも目を覚ましたか)」
次々と目を覚まし、戦闘に参加していく。
シャマルの治療もあるが、やはり世界の法則が一部書き換わっているからだろう。
全員、かなりのスピードで回復していた。
神界の神と違い、“領域”の強度が低い代わりに回復も早いのだ。
「……墜ちなさい!」
プレシアも目を覚ましていたらしく、広範囲に雷が降り注ぐ。
半分ほどの神や“天使”は躱し、残りもほとんど防がれてしまう。
挙句の果てには、何人かは雷をものともせずに突っ込んできた。
「ふっ……!」
だが、クロノはそれを読んでいた。
移動魔法で敢えて前に突っ込みつつ、魔力をデュランダルに流し込む。
冷気を纏った渾身の一突きが、突っ込んできた“天使”に突き刺さる。
「“ブレイズカノン”!!」
そのまま、砲撃魔法を放つ。
無論、非殺傷設定など適用していないため、“天使”の体がバラバラになる。
「(……いつも理屈を考えてしまう僕でも、さすがに慣れたな)」
強く“意志”を込めて放った攻撃だったからか、あっさりと攻撃が通用した。
倒しきれた訳ではなく、四散した“天使”はすぐに元の体に再生した。
「さすがに倒しきれないか……!」
「下がってください!」
間髪入れずにソレラの攻撃が“天使”の体を焼く。
クロノも後退しつつ魔力弾を連続で叩き込み、設置型バインドを仕掛けておいた。
「(白兵戦ならバインドも十分役に立つ。イリス相手ではバインドごと殲滅されていたが……これなら何とかなる……!)」
大半の攻撃をエルナが受け持ち、隙を見てクロノ達が攻撃を繰り出す。
司が世界そのものの“領域”を強化した事もあって、基本的な戦法も通用していた。
「……今は耐え凌ぐ時です。彼が正気に戻るまで……」
「優輝が?確かに、司達が何とかするみたいだが……」
「“可能性”を信じるしかありません。……自分の、そして彼女達の“可能性”を」
「…………」
“信じる”。最早、勝算などはなく、そう願うしかない。
だが、それこそが突破口のように、ソレラは言う。
「(……勝ち筋は見えない。それでも、自分や皆を信じる……か)」
普段の自分であれば、そんな理論は切って捨てただろう。
しかし、今はそれに縋るしかないと、クロノは考えた。
実際、限界以上の力を発揮し続けている。そんな考えも悪くないと感じていた。
「ぉぉおおおおおおおおおおっ!!」
一方、上空では。
固有領域を使いながら帝が途轍もない速度で飛翔していた。
神界では周囲にも展開していたが、今はさらに使いこなし、周囲ではなく“王牙帝”という存在の内側に展開出来るようになっていた。
相手の“性質”を抑える力は弱まるが、その分体力の消費も抑えられた。
また、力を持て余す事も減るため、今の帝にはちょうど良かった。
「な、なんだこの力……!?」
対し、神や“天使”は大いに驚いていた。
何せ、たった一人の人間が物理的戦闘力において自分達を圧倒してきたからだ。
先程までの魔導師や退魔士とは訳が違う。
「はぁっ!」
初手、神達からの集中砲火を抜けると共に、肘鉄を一人の“天使”にかます。
直後に体を捻り、回し蹴りを叩き込み、他の“天使”にぶつけるように吹き飛ばす。
「ちっ……!」
即座に何人かの神や“天使”が動く。
二人が理力の剣で斬りかかり、他が弾や閃光で帝を攻撃する。
「何ッ!?」
「遅い!!」
だが、当たったのは残像だ。
帝は既に斬りかかった“天使”の後ろに回り込んでいた。
そして、振り返った所に掌に気弾を構えてそれを顔面に叩き込んだ。
「ッ……!?」
「やっぱ、あの世界の奴らは皆強さがインフレしてんだよなぁ……ッ!」
もう一人が剣を振るう。
しかし、それはたったの指二本で挟むように止められた。
さらには、遠距離からの攻撃もこの世界の物ではない魔法陣に止められた。
「受け取れよ、天使のような悪魔の一撃をなぁっ!!」
―――“天撃”
もう一人の“天使”も吹き飛ばし、掌を上に掲げる。
すると、そこに途轍もない魔力が集束する。
その密度に、魔力が闇色に変色する程だ。
そして、その魔力が放たれた瞬間、範囲内の敵を防御の上から消滅させた。
「―――は?」
「なんだお前ら?これも神界とは無関係な存在の攻撃だぜ?これぐらいで音を上げる訳ねぇよなぁっ!」
その威力に、一部の“天使”が呆ける。
そして、そこへ間髪入れずに帝が追撃を放つ。
「はぁああああああああああ!!」
両手で挟むように、気を集束する。
そして、それを雨霰のように解き放つ。
元ネタにおいて“スターダストフォール”と呼ばれる技だ。
名前の通り、いくつにも分かれた閃光が、滝のように敵に襲い掛かる。
「ッ、ッ……!」
ほとんどが被弾ないし防御で動きが止まる。
ごく一部のみが、弾幕を抜けて帝に殴り掛かった。
「(動きからして、白兵戦向きか!)」
その速度は他の神や“天使”よりも速い。
武器を使うのよりも、理力を纏った肉弾戦が得意なのだろう。
「ッ……!」
防ぐ、防ぐ、防ぐ。
振るわれる拳を、手刀を、的確に防ぎ、または振るわれる直前で阻止する。
「……ちっ」
「ぐっ……!?」
至近距離で気弾を炸裂。目晦ましと共に飛び退く。
そのまま、帝に向けて放たれていた理力の弾や閃光を回避する。
「(数もそれなりに多い……いや、それよりも……)」
互角以上に戦えている帝だが、当の本人は内心苦々しく思っていた。
「(……体が重い。とにかく、魔力消費がキツイ……!やっぱり、地球だと神界よりもこっちの法則に引っ張られるか……!)」
神界と違い、“意志”による回復よりも魔力消費による疲労の方が大きかった。
それによって、徐々に帝の動きが鈍くなっていく。
「(しゃあねぇ……弱くはなるが、燃費を重視する……!)」
気弾をばら撒き、一度距離を取る。
そして、先程まで出ていた赤く煌めくオーラを引っ込める。
代わりに金色のオーラに包まれ、プラズマが走る。
「っ……!」
直後、再び肉薄される。
攻撃を防ぎ、躱すのだが、先程までと比べて余裕はなかった。
「くっ……!」
隙を見て一人を蹴り飛ばすが、直後の攻撃に防御の上から後退させられた。
そこへ、後方の神達から集中砲火を喰らう。
ガードはしているが、それでもジリジリとダメージを負う。
「さっきよりも弱くなったな。今が攻め時だ!」
目聡く帝の弱体化に気付いた神が、他の神達に呼びかける。
「……へっ。さすがに俺も、燃費だけで弱体化を受け入れる訳ねぇよ」
それを聞いて、帝は不敵に笑う。
直後、帝の脇をすり抜けるように、地上から理力の矢が連続で飛んでくる。
「何っ!?」
「ちぃっ……!」
咄嗟に回避や防御をしてほとんどの神や“天使”の動きが止まる。
それでも数名が帝に肉薄し……
「……助かる」
「礼には及びません。よくぞそこまで強くなりましたね」
帝の前に割り込んだミエラにより、何人かが纏めて剣で貫かれた。
残りも、もう片方のミエラの剣で防がれていた。
「初めてお前らを目にした時は、理解の埒外の存在だったが……今は頼もしいぜ」
「そちらこそ、主に影響されたとはいえ、見事な“可能性”です」
「もう一人は?」
「すぐ追いつきますよ」
並んで構えると同時に、ルフィナも二人に追いつく。
同時に、極光を薙ぎ払うように放った。
「一応聞くが、なのはと奏は無事なんだろうな?」
「当然です。私達に依り代の魂を消すつもりはありません」
「ならいい」
一応の懸念を確認し、改めて帝は敵を睨む。
戦闘力は落ちたが、代わりに二人の戦力が加わった。
相手も地球の法則に引っ張られているため、神界の時よりも降ろしやすいだろう。
……既に、帝の心に敗北の二文字はなくなっていた。
「……来いよ」
「ッ……舐めるのも……いい加減にしろぉっ!!」
ただでさえ梃子摺った上に、挑発される。
洗脳されているとはいえ、人間相手にそんな行為をされて、ついに神がキレた。
問答無用とばかりに“性質”の力を帝達に差し向ける。
「はぁっ!!」
それを、帝は“気合”で弾いた。
ただの気合ではない。“気”によるバリアのようなものを張ったのだ。
そもそも、“性質”が確実に相手に効く訳ではない。
“意志”で、別の“性質”や“領域”で、それこそ気合で。
いくらでも防ぎようはあったのだ。
優輝も、最初の時点で意図的に無視する形で“性質”を無効化していた。
帝も、同じような手段を用いただけに過ぎない。
「お前らこそ……人間を、舐めるなぁああああああああああっ!!!」
気が膨れ上がる。
“弱体化?そんなの関係ない”とばかりに、帝から圧が放たれる。
遥か高みから見下ろすだけの神に、必死に足掻き続ける人間が負ける訳ない。
主人公への憧れと、その意志が合わさり、さらに帝は昇華される。
「ッ、ァ……!?」
一瞬、顎を蹴り飛ばされた“天使”は目の前の出来事を認識出来なかった。
先程より弱くなったはずだ。遅くもなったはずだ。
それなのに、さらに早い。
「シッ!!」
集中砲火を潜り抜け、一人を殴り、大きめの気弾を炸裂させる。
爆風で“天使”が散り散りになる。
「私達を忘れてもらっては困りますね」
「彼ばかり気にかけていると、その脳天を即座に射貫いてしまいますよ?」
直後、一人の“天使”が理力の剣で切り裂かれ、もう一人が矢に射貫かれた。
ここにはミエラとルフィナもいる。
その二人が戦闘に参加しない訳がない。
「ちぃっ……!」
帝だけでも厄介だというのに、“天使”二人もいる。
その事に焦りを感じつつ、何人かの神と“天使”がミエラとルフィナを囲む。
残りも帝を包囲し、何としてでも叩き潰すつもりのようだ。
「『助けは必要ですか?』」
「『……いや、こっちが請け負う人数を減らしてくれるだけで十分だ』」
「『わかりました。こちらも心配無用なので、存分に力を振るってください』」
念話でお互いに助けが必要ないと確認し、敵と改めて向き合う。
「……まだまだ“手札”はある。……そう簡単に勝てると思うなよ?」
オッドアイからごく普通の黒目になったはずの瞳を蒼く輝かせ、帝は言う。
直後、飛んできた理力の攻撃を、文字通り“殺した”。
「(……酷い視界だ。吐き気がするぜ……)」
蒼い瞳の視界には、夥しい程の“線”と“点”が見える。
先程攻撃を“殺した”のは、攻撃にあった“線”をなぞったからだ。
「(“直死の魔眼”……やはり、“格”さえ足りれば効くんだな)」
“月姫”及び“空の境界”にて登場するモノの“死”を視る事の出来る魔眼。
さすがに神や“天使”そのものの“死”は視えないが、攻撃を“殺す”事ぐらいはそこまで難しくはなかった。
「さて……行くぞ、神界の神共。理力の貯蔵は十分か?」
白兵戦も“性質”も通じず、攻撃も殺された。
たった一人の人間に苦戦どころか圧倒された事で、神達は戸惑っていた。
そんな神達相手に、帝は再び挑発し……
「―――行け」
無数に投影した剣を射出した。
「受けよ、天軍を束ねし聖なる剣!」
「我が身は明けの明星、曙の子。地に投げ堕ちた星、勝利を得る者!」
―――“天軍の剣”
―――“明けの明星”
剣から放たれる斬撃の極光と、眩いばかりの光が神に叩き込まれる。
一人、また一人と“天使”が攻撃に貫かれ、吹き飛ばされる。
「やはり、洗脳された神は“領域”が抑圧されて比較的弱いですね」
「そうですね。この程度の数なら、今の私達でも負ける事はないでしょう」
イリスや優輝を相手にしていた時と違い、二人には余裕があった。
無論、単純な強さでは一人一人と拮抗しているだろう。
だが、そんな単純な強さに当て嵌まらないのが、神界の存在だ。
「“可能性の性質”……今再び見せましょう」
「さぁ、どこからでもかかってきなさい」
ミエラとルフィナは背中合わせとなり、敵を迎撃する。
「シッ……!」
「ふっ!」
攻撃を躱し、逸らす。
さらには、理力の武器で敢えて攻撃を受け、その反動で体を捻る。
そして、その勢いのまま目の前の“天使”を切り裂いた。
「魔法、借りますよ」
攻撃を受け流し、ミエラがその場から掻き消えるように動く。
奏の使っていた“ディレイ”だ。
即座に敵の後ろに回り込み、首を斬り飛ばす。
―――“Accel Shooter Satelite Shift”
「っづ……!?」
「ッ!!」
ルフィナを守るように多数の魔力弾が展開される。
至近距離で展開されたため、“天使”の一人が被弾し、そのままルフィナに理力の一撃を叩き込まれて吹き飛んだ。
「はっ!」
ルフィナにさらに襲い掛かろうとした所を、逆にミエラに襲われる。
剣で攻撃を弾かれ、そのまま切り裂かれ、蹴り飛ばされる。
さらには、剣を投げて二人の“天使”を貫く。
「シッ、はぁっ!!」
武器を失ったミエラに、別の神が襲い掛かる。
だが、ミエラは分かっていたとばかりに理力の槍を展開。
牽制の一突きの後、強烈な薙ぎ払いで一瞬近づけなくする。
「ミエラ!」
ルフィナの合図と共に、ミエラはルフィナの傍に転移する。
そして、ルフィナは周囲に展開した魔力弾を増やし、広げた。
「っつ……!」
球状に広がる魔力弾の弾幕に、肉薄しようとした“天使”が怯む。
防御で耐え忍んでいるようだが、足を止めていた。
「―――何!?」
だが、ミエラが転移出来たように、神達も転移が出来ない訳ではない。
攻防一体の弾幕を転移で飛び越え、何人かが内側に入ってくる。
……尤も、既にそこにはミエラとルフィナはいなかったが。
「物理的戦闘力及び“性質”による干渉は確かに強力……ですが」
「肝心の戦術や戦闘経験が浅いですね」
―――“Angel Star Fall”
二人は突っ込んでくるタイミングに合わせて転移で外側に移動していた。
さらに、転移直前にバインドを仕掛けておいたため、神達が引っかかる。
そこへ、二人の魔法による集中砲火が放たれ、罠にかかった神達が消え去る。
「……二人仕留め損ないましたか」
「ですが、これで数を減らしました」
突入した神五人の内、三人を倒す事に成功した。
二人は耐えたが、負ける一歩手前と言った所だろう。
「“天使”如きに……!」
「人どころか、“天使”すらも見下しますか……」
「その人間と“天使”に良いようにあしらわれてるのですけどねぇ」
耐えた神の呟きに、ミエラは呆れ、ルフィナは嗜虐的に嗤う。
間髪入れずに二人に襲い掛かろうとする“天使”達がいるが、それも避ける。
余談だが、普段ミエラより物腰柔らかく見えるルフィナの方が嘲たりする。
「どうしました?まだ、こちらには傷一つついていませんよ」
「私達や人間が“可能性”を信じて足掻いているのです。そちらも何か魅せるくらいの器量が欲しいのですけど……」
理力の槍と、矢が先程の瀕死の神の“領域”を貫く。
肉体は既になくなっていたが、“領域”は別だ。
そこを的確に貫いた事で、今度こそ二人の神も沈黙した。
「……まぁ、あのイリスに洗脳されては無理な事ですか」
突貫してきた“天使”の腕を絡め取るように逸らす。
そして、至近距離で理力を叩き込みつつ、そう呟いた。
「彼らとて、洗脳される前は抵抗していたのです。そうなじるのは酷ですよ」
同じく剣で攻撃を弾き、投げるように生成した槍で貫きながらミエラが言う。
いくらリンディ達を圧倒した神達とはいえ、全員が全員物理戦闘特化ではない。
むしろ、事象が概念に干渉する方に優れている神ばかりだろう。
だからこそ、物理的な力でごり押してくる帝に圧倒され、堅実に攻防を続けるミエラとルフィナを倒せずにいた。
「……尤も、地上にいる二人の神はその洗脳を自力で解いたので、いつまでも洗脳に従っているというのは、些か情けなく思います」
祈梨とソレラが特殊なのだが、そんなのは二人にとっては些事だ。
“可能性”を信じる者としては、何も抵抗しないのは呆れの対象だった。
「さて、出来れば全滅させて地上の援護をしたかったのですが……」
「さすがに警戒していますね。これでは倒すのに時間が掛かります」
戦闘経験が浅いとはいえ、不用意に突っ込めば危険だというのは理解したようだ。
今まで二人はカウンターを用いて攻撃を繰り返していた。
だからこそ、神を五人も仕留める事が出来たのだ。
しかし、警戒されて遠くから攻撃ばかりされては、同じようにはいかない。
二人から突っ込むのは、敗北の危険を無闇に増やす愚行でしかない。
結果、撃破までどうしても時間が掛かる事になる。
「(……あちらも、負けないように動いているせいか、時間が掛かっていますね)」
そして、それは帝の方も同じだった。
帝の場合は、神達が帝から離れるように動き続けていた。
さらに、ミエラとルフィナに比べ、“領域”へのダメージがあまり出せない。
その事が相まって時間が掛かっていた。
「(いえ、本来の目的は時間を稼ぐだけでも十分ですね)」
梃子摺りはする。だけど、時間が稼げるだけでも十分なのだ。
優輝を正気にさえ戻せば、戦局は変えられるのだから。
後書き
天撃…ノーゲーム・ノーライフより。天翼種が使う必殺技的な技。全力で使うと体が子供になるが、帝はそのデメリットを無視している。
スターダストフォール…ドラゴンボール超の映画にて、ゴジータがブロリーに放った技。
直死の魔眼…月姫及び空の境界より。モノの死を視る事が出来る魔眼。
“可能性の性質”…ミエラとルフィナの持つ“性質”。ありとあらゆる“可能性”を任意で掴む事が出来る。―――例え、その可能性が万に一つのものであっても。
Accel Shooter Satelite Shift…魔力弾を衛星のように展開する攻防一体の魔法。今回はルフィナが使ったが、なのはも使える。
Angel Star Fall…なのは&フェイトにおけるブラストカラミティ。羽のような魔力弾を周囲への牽制としてばらまきつつ、閃光と魔力弾で集中砲火、トドメに極光が貫く魔法。今回はミエラとルフィナだが、奏となのはでも放てる。
帝は前々回、前回、今回の順に弱くなっています。戦闘力インフレを起こしているDB勢の力はやっぱり身に余りました。段階で言えば、ゴッドブルー(245話)→ゴッド(246話冒頭)→超2(今回)な感じです。代わりに、燃費は比較的よくなっていますが。
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