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レーヴァティン

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第百五十一話 自信を砕きその九

「その時はな」
「どうするのかしら」
「あそこの元首は騎士団長だったな」
 鋭い目になっての言葉だった、久志はその目で言うのだった。
「そうだったな」
「ええ、そうよ」
 双葉もその通りだと答える。
「ロードス島はあの島を拠点とする騎士団の領地で」
「本拠地でな」
「その元首もね」
「騎士団長だな」
「そうよ」
「それならな」
「騎士団長に使者を送るわね」
 久志に問うた。
「そうするわね」
「ああ、どうしても戦うっていうのならな」
「一般市民を退避させろ」
「財産を全部持ってな」
「そう言うのね」
「一般市民を狙う真似なんかするか」
 久志は強い声で言った。
「何があってもな」
「軍勢にも許してないし」
「誰が許すか」
 これもというのだ。
「だからな」
「そうね、じゃあ」
「ああ、まずはロードス島に進軍だ」
 次はそちらだとだ、久志は正式に決定した。
「そしてな」
「包囲して」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「後はな」
「使者を送って」
「市民を退避させるな、そこで逃げる騎士がいてもな」
 それでもというのだ。
「武装を解除させてな」
「逃がすのね」
「武器を持たない奴は攻撃しない」
 腕を組み強い口調での言葉だった。
「世界を救いたいのならな」
「もうこのことは」
「守らないといけないしな」
「それも絶対にね」
「そう思うだろ」
「勿論よ、というか」
 双葉は久志に考える顔になって話した。
「私達にしてもね」
「どうしてもだな」
「ええ、今の日本にいるとね」
「起きた世界でな」
「そうした考えになるわね」
「戦前でも一般市民を狙うっていう戦争はな」
「しなかったわ」
 大日本帝国陸海軍もというのだ、一般市民を便衣兵即ちゲリラと誤認したり攻撃に巻き込んでしまったことはあっても最初から一般市民を標的とする様な作戦を立てたことも考えたこともなかったのだ。
「これはね」
「もう歴史調べたらわかることだしな」
「おかしな学者さんは言うけれど」
「そうした作戦もあったってな」
「事実をどう間違えたか」
「そうだな、けれど事実はな」
 そうした学者達の言うこととは違い、というのだ。
「違ってな」
「日本は戦前からそうだったわ」
「もっといえば昔からな」
「もう戦になっても」
「侍同士のことでな」
「普通に観戦が出来たから」
 戦見物が出来たのだ、戦国時代戦があると近所の民達が弁当を持って離れた見晴らしのいい場所に集まって戦を見て楽しんだのだ。
「民を狙う戦をしていたら」
「そんなこと絶対にないな」
「十字軍や三十年戦争だと」
「もう軍隊に近寄ったらな」
 その時点でとだ、久志は言った。 
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