戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第11節「フィーネの再誕」
前書き
今回のハイライト、翼vsマリア第二戦!
推奨BGMは勿論、「烈槍・ガングニール」、「獄鎌・イガリマ」でお届け致します!
それではどうぞ、お楽しみください!
……やばい、そろそろストックが……()
「つまり、異端技術を使う事から、フィーネの名を組織に準えたわけでなく……」
「蘇ったフィーネそのものが、組織を統率しているというのか」
仮設本部艦内、発令所。
藤尭、並びに友里は突如現れたマリアの出現地点を捕捉するべく、各種機器を操作する手を休めずにそう零した。
「またしても先史文明期の亡霊が、今を生きる俺達の前に立ちはだかるのか……俺達はまた、戦わなければいけないのか……フィーネ……」
俯きながら呟く司令の言葉は、この場にいる全員の心境を表していた。
フィーネの末路を見届けた者達にとって、マリアがフィーネであるという事実は、とても受け入れ難いものなのだ……。
ff
朝日を背に、海面を抉って浮遊するアームドギアの柄を足場に立つマリア。
ウェル博士からの受け入れ難い言葉に、響は思わず呟く。
「──嘘、ですよ……。だってあの時……」
「ああ……フィーネはあの時、確かに……」
『……胸の歌を……信じなさい』
響達を受け入れ、了子に肉体の主導権を返して消滅した筈のフィーネ。
その最後の一言からも、やはり復活した彼女がこのような事件を起こすなど、響や翔には信じられなかった。
「リンカーネイション」
「遺伝子にフィーネの刻印を持つ者を魂の器とし、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システム……ッ!」
「……って事は、アーティストだったマリアさんは……」
「さて……。それは自分も知りたいところですね」
クリスと純の困惑に、ウェル博士は肯定でも否定でもない答えを呟く。
(自分も知りたい……? フィーネのリンカーネイションは、器となった肉体の主の意識を完全に塗り潰すものではなかったのか……?)
翔が疑問を浮かべたその瞬間、洋上のマリアと翼が動き出した。
ff
(ネフィリムを死守できたのは僥倖……だけどこの盤面、次の一手を決めあぐねるわね)
マリアが動こうとしたその時、水柱と共に翼が海面から跳躍した。
両足のブレードからのジェット噴射で水上を滑り、真っ直ぐにマリアへと斬り込む翼。
「はあぁぁッ!」
マリアはそれを軽く避ける。が、翼はそのままマリアの頭上へと跳び、アームドギアを大剣型へと変形させる。
「甘く見ないでもらおうかッ! ハァッ!」
振り下ろされる、蒼き破邪なる一斬。
〈蒼ノ一閃〉
しかし、マントがマリアの身体をカーテンのように包み隠し、斬撃を通す事を許さない。
「甘くなど見ていないッ!」
「くッ!」
大技直後の隙を突かれまいと、大剣でそのまま斬りかかる翼。
しかし、またしてもマリアのマントはそれを阻むと、翼の身体に強烈な打撃を打ち込み、仮設本部の方へと吹き飛ばす。
本部の甲板になんとか着地した翼は、アームドギアを刀に戻し、体制を立て直す。
その間にマリアは、その手に握り続けていたネフィリムのケージを頭上へと放り投げる。
ケージは一瞬にして、空へと溶けるように消失する。
(消えたッ!? 何処へ!?)
両手が自由になったマリアは、石突から飛び降りると、空中で一回転して甲板へと降り立つ。
天へと掲げた手に、アームドギアは引き寄せられるように収まる。
翼と向かい合ったマリアのギアからは、既に歌が流れ始めていた。
『Kort el fes Gungnir. Kort el fes Gungnir.』
「だからこそ、私は全力で戦っているッ!」
アームドギアを握ったマリアは跳躍し、翼へと飛びかかる。
「くッ!」
「はああッ!」
翼が刀を構え、防御姿勢を取る。
体重に落下時の勢いが乗った一撃は、翼を後方へと吹き飛ばす。
空中で体制を立て直し、華麗に着地する翼。
片手で槍をブンブンと振り回すマリアへと、翼は刀を構え、再度接近する。
「この胸に宿った 信念の火は──」
歌と共に、伸縮したマリアのマントが巨大な刃となって翼へと襲いかかる。
跳躍し、空中で回転しながら進み続ける翼。
マントは火花と共に、甲板の表面へと切り傷を刻む。
マントからの迎撃を防ぐべく、蛇行しながら翼は進み、マリアの懐へと飛び込もうとするが、振り下ろした刃をまたしてもマントに弾かれてしまう。
逆に振るわれた槍を防ぐと、今度は槍を頭上に掲げたマリアを中心に、マントが竜巻のように渦巻いた。
「はあぁぁぁッ!」
周囲をマントで覆っても、必然的に頭上はがら空きだ。
翼はマリアの頭上を狙って跳躍し、台風の目のように穴となっている中心部へと狙い定める。
「やああああああッ!」
しかし、マリアはそれを見越しており、翼が刀を突き立てる瞬間、中心部からアームドギアを突き上げた。
直撃を防ぐも弾かれた翼は、甲板着いた片腕を軸に回転しながら着地する。
「闇に惑う夜には──」
竜巻状態を解かれ、マントが再び刃となって翼を狙う。
バク転を繰り返して回避するも、マントは傷こそ浅いものの、船体を確実に傷付けていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
(くッ……。あの厄介なマントに加えて、適合係数を下げられているせいか……こちらからは一撃も入らぬとは……ッ!)
展開していたマントを縮小し、元のサイズへと戻すマリア。
翼は息を荒らげながらも、戦場で笑みさえ浮かべてみせるマリアを、毅然と睨み付けていた。
ff
一方、本部内ではランプが赤く点滅し、警報が鳴っていた。
「敵装者からの攻撃、本部被弾ッ!」
「被害状況、出ましたッ!」
モニターには、損傷のあった箇所が黄色く表示される。
「船体に損傷ッ! ……このままでは、潜航機能に支障がありますッ!」
「ぐッ──翼ッ! マリアを振り払うんだッ!」
ff
「覚悟を今構えたら 誇りと契れ──」
(下手に離れて戦えば、本部に流れ弾が……。ならば──ッ!)
翼はアームドギアを腿アーマーに格納すると、両足のブレードを展開し、逆立ちしながら回転し始めた。
手数と機動性に優れる、逆羅刹の構えである。
一度、二度……腕で振り下ろす刃にはない、回転力から生じる勢いに、マリアのアームドギアが弾かれた。
「勝機ッ!」
「ふざけるなッ!」
マントの裾を握り、盾とするマリア。
逆羅刹をも弾かれ、着地した翼の左脚に痛みが走った。
「くッ!?」
「マイターンッ! 受けなさいッ!」
「ッ!」
突き出される烈槍。アームドギアを抜刀するも間に合わず、翼の身体は宙を舞った。
「がはっ!」
ff
「あいつ、何をッ!?」
「最初にもらったのが効いてるんだッ!」
一瞬、翼の動きが鈍ったのを、クリス達は見逃していなかった。
初撃で投擲されたマリアのアームドギアは、翼の脚にしっかりとダメージを与えていた。
それが今になって効いて来ているのだ。
「だったら白騎士のお出ましだッ!」
アームドギアのクロスボウを構え、狙いを定めるクリス。
マリアはこちらに気付いていない。
今なら確実に不意を突く事が出来る。
しかし──
(では、こちらもそろそろ──)
ウェル博士の口元には、含みのある笑みが浮かんでいた。
「クリスちゃんッ! 皆、上だッ!」
頭上から迫る複数の丸鋸。
純の声で気づいた三人が慌てて避けるも、丸鋸は装者達とウェル博士を分断するかのように飛んで来る。
「ッ!? これって……!」
「まさかッ!?」
「なんと、イガリマアアアーーーッ!」
突然現れた翠色のギアを纏う装者、切歌がクリスを狙い、アームドギアの大鎌を振り下ろす。
「こいつらッ!?」
「警告メロディー 死神を呼ぶ 絶望の夢Death13──」
振り下ろされる鎌を跳躍で回避し、クリスは距離を取る。
しかし、鎌のリーチはそこそこ長く、近くには拘束したウェル博士、そしてRN式を解除した純がいるため下手にクロスボウを乱射できず、クリスは完全に攻めあぐねてしまっていた。
一方、丸鋸を避けきった響の方へと向かってくるのは薄紅のギアを纏う少女、調。
ギアの足部は、可動部の少ない円筒に近い形状をしたプロテクターで覆われているが、足底部はローラー状になっているらしく、形状に見合わぬ速度で移動しながら戦場を駆け回る。
「はッ! たぁッ! てやぁッ!」
再び射出された大量の丸鋸を、響は素早く叩き落とし、その両手で打ち砕いていく。
すると、遠距離では仕留めきれないと悟った調は、跳躍して一回転。
脚部・頭部から体の周囲に円形のブレードを縦向きに展開する。
SF作品によく登場する一輪バイクを乗りこなすかのようにブレードを回転させ、調は響の方へと突撃した。
〈非常Σ式・禁月輪〉
「うわぁッ!?」
慌てて横へ走り、飛び退いて回避した響の背後で、桟橋の防波堤が砕け散った。
「純ッ! ウェル博士を抑えろッ!」
「させるかよッ!」
一瞬で飛び退く翔。その足元に、数本のコンバットナイフが突き刺さる。
「また会えたな、ファルコンボーイ!」
「ジョセフ・ツェルトコーンッ!」
降り立ったツェルトの両手指の間には、コンバットナイフ型のアームドギアがそれぞれ三本ずつ握られていた。
「ウルヴァリンにでもなったつもりか?」
「さあ、どうかな? 利用出来るものはなんでも利用しなくっちゃだろッ!」
ツェルトが投擲するナイフを、翔は躱し、叩き落として接近する。
一方ツェルトも、新たなナイフを握り応戦する。
翔の繰り出す拳をいなし、逆手に持ったナイフを振るう。
対する翔もまた、構えを拳から手刀に切り替えると、腕アーマーに備え付けられたブレードを使ってナイフに対抗する。
数合の打ち合いの後、二人は距離を取った。
「どうしたファルコンボーイ? 俺を擬きだと罵った時の威勢はどこ行ったんだ?」
「安い挑発だ。だが、今ので分かった。お前のギアには弱点がある……違うか?」
「──何を根拠に?」
一瞬の沈黙。翔はそれを動揺と受け取った。
「聖遺物と適合者には、相性が存在する。確認してるだけでも、その義手に使われている聖遺物は三種類。その全てに適合しているわけではないんだろ?」
ライブ会場での一件の後、翔はツェルトModel-GEEDについて探るべく、シンフォギアに関する資料を漁っていたのだ。
その中で見つけたのは、装者とギアの相性について。
基本的に一人の人間が適合出来るギアは一つであり、また、装者は自らと適合した聖遺物以外のギアを纏えない。
ツェルトのRN式はアームドギアこそ切り替えられていたものの、プロテクターの形状に変化は見受けられなかった。
アームドギアの形成のみに特化させる事で複数の聖遺物を使用する事に成功していると仮定すれば、自ずと弱点も見えてくるものだ。
「そのプロテクター、バリアコーティングで覆っているだけで、実は防御が弱いんじゃないか?」
「だったらどうする?」
「不可避の一撃にて、押し通すッ!」
翔は跳躍し、両腕の刃にエネルギーを集中させる。
〈斬月光・廻刀乱魔〉
正面からは交差させた光刃。そして左右からも刃を飛ばして挟み込む、不可避の斬撃。
放つ角度によっては確かに、回避不能の大技だ。
「ッ!? そう来るかッ!」
迫る刃、正面を防げば側部から挟まれ、 側部からの刃を回避しても正面からの刃が残る。
回転する孤月状の光刃が迫る中、ツェルトは──
「転調・コード“エンキドゥ”ッ!」
その名を叫ぶ瞬間、光刃は彼に命中し爆発。
爆音と共に土煙がツェルトの立っていた地点を包み込んだ。
後書き
「烈槍・ガングニール」の荘厳なイントロと男性コーラスでの『Kort el fes Gungnir』が好きな人とはいいお酒が飲めそうですね。あそこクセになりますw
しかしこうして書いてると、この頃のフィーネ組って二課組を押してるように見えて、実際には連戦による疲労やAnti_LiNKERでの適合率低下というバッドコンディションを抱えさせることで二課組が万全の状態で戦えないようにしてるんですよね。
パワーバランスの調整上手いというか……。ウェル博士マジ性格悪いなぁとw
原作と比べて、伴装者がいても状況が好転してないのはそういう事です。おのれドクター!
次回はとうとう12話。深夜アニメ1クール分ですが、中身的には原作4話Aパートの残り半分です。お楽しみに。
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