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負けたとしても

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第三章

「そんな人達を子供が真似したらね」
「絶対によくないわね、真似するなら」 
 それならとだ、すみれは言った。
「黒田さんみたいな人でないと」
「カープのあの人ね」
「あの人が戻ってきてくれたから」
 それでというのだ。
「新井さんとね」
「それでカープは優勝出来たっていうのね」
「あの人達がチームを引っ張ってくれたから」
 その黒田と新井がというのだ。
「それでね」
「優勝出来たからっていうのね」
「立派な人達だから」
「それでなのね」
「どうせ真似するなら」
 それならというのだ。
「黒田さんをね」
「そして新井さんをなのね」
「真似して欲しいわ」
「あんな人達じゃなくて」
「本当にそう思うわ」
 すみれとしてはというのだ。
「私も」
「その通りね、何であんな人達をテレビに出すのかしら」
「だからテレビからどんどん人が離れてくのね」
「ああした人達を持て囃すから」
「いいところなんて何一つないのに」
 地元大阪では恥とさえ呼ばれているという。
「見事な位に」
「そうよね。一家全員がね」
 母はすみれの言葉に頷いた。
「チャンピオンでもね」
「そうよね」
「お父さんが言うには八百長してるっていうけれど」
「そうなの」
「噂ではね」
「余計に酷いわね」
「だからお父さんあの一家本当に嫌いなの」
 心底そうだというのだ。
「ボクシングどころか格闘技ひいてはスポーツを穢してるって」
「巨人みたいね」
「阪神ファンらしいけれどね」
「阪神も迷惑よね」
「あんな人達に応援されたらね」
「本当にそうよね」
 すみれも頷くことだった。
「私もそう言われない様にしないとね」
「貴女はあの人達より遥かにましよ」
 母はそのことは保証した。
「本当にね」
「だといいけれど」
「あの人達はスポーツマンでも何でもないから」
 では何かというと。
「只のチンピラだから」
「そんな人達よね」
「ボクシングをしてないの」
「喧嘩ね」
「そんな人達だから」 
 それでというのだ。
「貴女はずっと上のところにいるから」
「そんな最低限の人達よりも」
「人としてね、けれどああはなるまいと思うことはね」
 このことはというのだ。
「いいことよ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「ああした人達を反面教師にしながら」
「もっと人として上になる」
「そうした努力をしていってね」
「野球の応援でもなのね」
「そうよ、野球の応援でも品性は大事でしょ」
「ええ、さっきあんな人達に応援されて阪神もって言ったけれど」
 すみれは自分の言葉をここでまた反芻して出した。 
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