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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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023話 修学旅行編 1日目(02) 対、西の刺客

 
前書き
更新します。 

 


そしてホールに集まったのは俺、姉さん、刹那、ネギ君、アスナ、カモミールだ。
とりあえず結界を姉さんに張ってもらい話をすることにした。

「ええ!? 士郎さんにイリヤさんは刹那さんがこちらの関係者だって知っていたんですか!?」
「そうだ。ネギ君は知らなかったのかね?」
「はい……すみません」
「俺っちも勘違いしていたようで謝るぜ、剣士の姐さん!」
「いえ、それにしてもネギ先生は優秀な魔法使いと期待していたんですが、意外と対応が不甲斐なかったようなので敵も調子に乗ったようです。士郎さんとイリヤさんがうまく立ち回っていてくれて助かりました」
「あう……すみません! まだ未熟なもので……」
「いえ、もう過ぎたことはいいです。それより神楽坂さんは固まっていますがやはり話しに参加して大丈夫だったんですか?」
「え、ええ。もうすでに巻き込まれているようなものだし気にしていないわ。ただ、やっぱりオコジョが喋っても驚かない世界の人なんだなと思って……」

小声でアスナはそんなことを呟いている。まぁ、その気持ちはわかるが今は聞き流しておこう。

「とりあえず士郎さん達はご存知だとお思いですが一応ネギ先生達には伝えておきましょう。私達の敵は関西呪術協会の一部の勢力で陰陽道の『呪符使い』です」
「その、ジュフツカイ? って一体なんなの?」
「呪符使いとは京都に伝わる日本の魔法『陰陽道』を基本としていて西洋魔法使いと同様、呪文などの詠唱時に隙が出来るのは同じです。ですから魔法使いの従者(ミニステル・マギ)と同じく、こちらには善鬼・護鬼といった強力な式神をガードにつけてその間に詠唱を済ませるものが殆どでしょう」
「善鬼に護鬼……稀代の天才陰陽師と言われる役小角(えんのおずぬ)が従えていたという鬼のことか」
「ええ。士郎さんは知っていましたか。ですが今はその伝承とは違いそれほど強くはないでしょう」
「だろうな? そんなものが今の時代に暴れたら京都は焼け野原になるだろうからな」
「ねえ、シロウ? そんなにそのエンノオズヌっていう奴が使役していた鬼は強かったの?」
「ああ、伝承では山をも砕く力を持っていたと聞く。姉さん的にわかり易いように言わせればバーサーカーが何体も狂化済みで暴れまわっているようなものだ」
「それは……怖いわね」
「……バーサーカーとは?」
「私の昔の従者よ。それより話を進めましょう」
「え、ええ。それで続きですが他には私の出である京都神鳴流がバックにつくことがあります」
「それなんですけど、刹那さんはなんなんですか?」

ネギ君はどうにか頭を働かせながら質問をしている。カモミールも神妙な面構え(?)だ。アスナは……可哀想だから表記するのはよしておこう。

「京都神鳴流とはもともと京都を護り、そして魔を討つために組織された掛け値なしの戦闘集団のことです。きっと護衛についたら厄介な相手になることはあきらかでしょう」
「ええー!? それじゃやっぱり敵って事ですか?」
「はい、ですから彼らにとってみれば私は西を抜けて東についた裏切り者です」
「だが、それは理由あってのことだと信じてあげてくれ」
「そうね。セツナはコノカのことを護りたいが為にこちらについたんだから」
「士郎さん、イリヤさん……ありがとうございます」
「気にするな」

そしてしばらくしてネギ君達を見るととても感心したような眼差しを刹那に向けていた。

「よーし、わかったわ! 桜咲さん! さっきのこのかの話を聞いても正直半信半疑だったけどそれを聞いてこのかの事を嫌ってないってわかったから!」
「はい! 誤解も含めて十二分に協力します!」
「神楽坂さん、ネギ先生……」
「それじゃ“3-A防衛隊(ガーディアンエンジェルス)”結成です!」
「……なら、俺はそれに該当しないな」

俺はネギ君達の刹那に対する感情論が変わった事に内心喜んでいたが、そのネーミングに即座に否定心をこめて目を瞑りながら言った。

「そ、そんなぁ~……」

とか、そんな声が聞こえてきたが正直言ってそんなチーム名は俺はいやだ。と本心が叫んでいた。
それから姉さんの威圧も込められた説得により渋々納得させられた。って、いうか姉さん?賛成は本気ですか?
そしてネギ君はそのまま外の見回りにいってしまった。

「とりあえず今ネギ君はああなのでアスナに刹那。各部屋を頼んだぞ。俺は屋上で姉さんと陣取りを続けていよう」
「はい」
「任せて士郎さん!」

よし、これで変なことに意識を削がれないで弓兵の役割を果たすことが出来るだろう……何を考えている? 俺はアーチャーではないぞ。
そんな無駄なことを考えていないで外の意識に集中することにした。

「それで、シロウ。今回の敵はどう?」
「甘い、と言うべきなのだろうか? 聖杯戦争や今まで経験してきた戦いの時に比べればなんて軽いものだと思うよ」
「そう。でも事は慎重に動くことが大事よ? リンのように油断は現金なんだからね」
「ああ。そこはわかっているよ。いつどこに強敵がいるかわかったものではないからな」
「それならいいわ。それよりやっぱりまだ旅館内に敵がいたんじゃないかしら?」
「!!」
瞬間、俺は姉さんを抱えて屋上から飛び降りてこのかを連れ去っている輩の後を追った!


◆◇―――――――――◇◆


Side ネギ・スプリングフィールド


油断した!? まさかこのかさんがもう奪われていたなんて!
すぐにアスナさんと桜咲さんと合流してへんてこなお猿の格好をした人を追った。

「やはり! 人払いの呪符です! まったく人気が無いのはそのせいでしょう!」
「そ、そうなの?」

とりあえずなんとか猿が逃げ込んで発車しようとしてした電車に乗り込むことは出来たけどいきなり水が僕達の車両の中を飲み込んで詠唱もうまくできない!
このままじゃ! その時、刹那さんが水の中で剣を振った瞬間、

「あれ~~~!?」

水がすべて流されて駅に着いた途端、ドアが開きお猿の人も一緒に流されてきたけどすぐに体勢を整えるとまたこのかさんを抱えて走り去っていった。

「見たか! そこのデカザル女。嫌がらせはよしていい加減お嬢様を返せ!」
「なかなかやりますなぁ。しかし誰がおとなしく聞くもんかいな! お嬢様は返しませんえ?」
「待て!」

それからお猿の人を追っている間、なんでこのかさんがお嬢様なのかを聞くと、

「おそらく奴らはこのかお嬢様の力を利用して関西呪術協会を牛耳ろうと考えていると思われます!」
「え!?」
「嘘!?」
「私も学園長も士郎さん達も甘かったかもしれません。こんな暴挙に出るなんて思ってもいませんでしたから……! そうだ! 士郎さん達は!?」
「そ、それが連絡したんですが電話に出てもらえなくて……」
「ちぃッ! まさかもう士郎さん達のことを嗅ぎつけた連中がいたなんて! きっと今頃は妨害を受けているのでしょう! 今は私達だけで対処するしかありません!」

そして大きい階段の広場に出たらそこにはお猿のきぐるみを脱いで嵐山の従業員の格好をした女の人が立っていた。

「ふふ、よおここまで追ってきよったな。だけどやっぱりあの男を足止めしといて正解だったようや」
「やはり! しかしどこで士郎さん達のことを!?」
「あるツテの情報で知ったんや。しかし今頃その男はやられている頃やろな~?」
「そんな!?」
「落ち着いてください、ネギ先生! 士郎さんの実力をご存知なら冷静になるべきでしょう!」

そうだ! 刹那さんの言うとおり……士郎さんはエヴァンジェリンさん達と互角にやりあったんだから負けるわけが無いよね!

「せやけど、あんさん達だけでもやっかいや。早々に逃げさせてもらうえ!」

するとまたお札を女性の人は出して刹那さんはなにかに感づいたのかすぐに飛び掛ったけどそれは間に合わなくて、

「お札さんお札さん、ウチを逃がしておくれやす……喰らいなはれ! 三枚符術京都大文字焼き!」

お札から魔力が溢れて一気にそれは増大して炎で『大』の文字が浮かび上がったが、
僕をなめていると怒るよ?

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 吹け、一陣の風。『風花・(フランス・)風塵乱舞(サルタティオ・プルウェレア)』!!」
「な、なんやぁ!?」

女性の人が取り乱しているうちに僕はアスナさんの仮契約カードを出して、

「逃がしませんよ! このかさんは僕の生徒で……大事なお友達です! アスナさん!!」
「ええ!」
「契約執行!180秒間!ネギの従者『神楽坂明日菜』!!」

そして一気に刹那さん達と駆け上がっていってふとさっきカモ君に聞いた仮契約カードの機能を思い出したので、アスナさんにそれを発動させて渡したけど、

「って、ちょっと!? なんでハリセンなのよ!!」
「あ、あれ? おかしいなぁ……」
「こりゃハズレかもな……?」

カモ君、今だけは喋らないで。僕、へこんじゃうから。
だけどアスナさんはそれに構わずハリセンを振り下ろしたらいきなりお猿の人形が動き出して同時に攻撃を仕掛けていた刹那さんの剣も防がれてしまっていた。

「なに、こいつら!?」
「おそらく先ほど話した善鬼に護鬼です!」
「こんな間抜けな奴らが!?」
「外見で判断はしてはいけません! 見掛けに反して強いです!」
「ホホホホ! ウチの猿鬼と熊鬼をなめてかかったらあかんえ? 一生そいつらの相手をしていなはれ!」

そんな! いきなりそんな強い鬼が出てくるなんて……!
だけどアスナさんは我武者羅に振ったハリセンが鬼に直撃すると鬼は霧のように消えてしまった。
カモ君も驚いているけど、アスナさんが有利になったことで刹那さんが詰め寄った。
だけど、まだ伏兵がいたのかいきなり空から人が振ってきて刹那さんと打ち合った。

「まさか神鳴流剣士!?」
「月詠いいます~。先輩、少しお相手付き合ってもらいますね~?」

「兄貴、やべぇ! 剣士の姐さんが防戦一方でアスナの姐さんも捕まっちまってやがる!」
「え!?」
「なんや、意外に弱いんやな? さっきの威勢はどこへやら」

好きに言っていればいい。だけど僕を忘れちゃ駄目ですよ!
すぐさま僕は戒めの風矢を放ち女性を束縛しようとした。けど、このかさんを盾にされてしかたなく矢を逸らした。卑怯です!

「こいつはいいわ。これで攻撃できなくなってしもうたな」
「待て!」
「先輩、ウチを忘れてはいかんえ?」
「くっ! 邪魔をするな、月詠!」
「そうはいかんよ~? ウチ、もっと先輩と打ちあいたいんや~」
「くそ! お嬢様!!」
「ほーほほほ! まったくこの娘は役に立ちますなぁ。さぁて、これからどういった事をしてあげようか……?」

くっ! 二人とも手が出せなくてアスナさんは捕まっちゃっている……! 僕も手出しができない!
もう打つ手がないと思ったその時、……僕の隣を寒気がするような赤い何かが通り抜けていった。
その人は間違いなく士郎さんだったんだけど、その雰囲気はいつもと完全に違いひどく冷めている。
アスナさんも、刹那さんも、カモ君も、そして敵の二人もそれによって動きを停止させられた。
まるで、そうまるで体が石になったんじゃないかという錯覚すら覚えてしまった。


◆◇―――――――――◇◆


Side 桜咲刹那


「これから、どういったことをするというのだね? この外道が……」

突然後ろから士郎さんが助けに来てくれたのだが、そのあまりに濃い殺気に私……いや、その場にいたすべてのものが足を止めた。
洋弓を左手に持ち、私達の横を通り過ぎる。
こんな殺気を私は今まで体験したことはない。妖怪や化け物に殺気を向けられたこともあるがこれほどの緊張感をいまだかつて持ったことはない。
化け物と比べることがおかしな話というほどに士郎さんの殺気は尋常ではなかった。

「あ、あわわ……な、なんでや!? しこたまぎょうさん式で足止めをしておいたはずや!」
「あれか……? く、くくく、俺もずいぶんと舐められたものだな? あのような雑魚無勢……串刺しにして今頃はどこぞの壁にでも張り付いているのではないか?」

士郎さんは淡々と語っているが雰囲気はもうまるで別人だ。あれが本当の士郎さんの素顔、なのか?

「さて、このかを返させてもらおうか」
「ひ、ひぃぃぃぃいっ!?」

士郎さんはゆっくりと女に近づいていく。月詠はなんとか動けたようで士郎さんの前に立ちはだかったが、

「…ああ、抵抗はしない方がいいだろう? さもなければ、消すぞ……!」

呪符使いの女だけではなく月詠も真正面から士郎さんの殺気を浴びて戦意喪失したかのように立ち竦んでいる。……少しにやけているのが怖いが。
それよりも。カタカタと震えながら、呪符使いの女は背中が壁であることも忘れて立たぬ足の変わりに腕だけで後ろに下がろうとする。

「ひ…ひ…」

声にならない悲鳴を上げながらも、女は士郎さんから視線を外すことはなかった。
恐怖か、または眼で命乞いをしているのか……?
その立場になって見なければわからないだろう。
そしてすさまじい殺気が含まれていた眼光を浴びて敵であった二人は、そのまま士郎さんの放った弓矢で壁にまるで虫の標本のような格好にさせられて気絶してしまっていた。
すると士郎さんも殺気を霧散させてお嬢様を抱きかかえた。その顔はいつもの顔に戻っていていた。
それから遅れてイリヤさんがやってきて今の惨状を一目見て、

「……シロウ、少しやり過ぎよ? 手加減したとは言え気絶させちゃうなんて……ネギ達は大丈夫だった?」

イリヤさんに言われて私は初めて全身にどっと汗を掻いていることに気づいた。神楽坂さんもネギ先生も私以上に滝のような冷や汗を掻いていた。
これだけの殺気、慣れていない人が気絶しないだけでも大したものだろう。

「し、士郎さん。先ほどの殺気は本気ではなかったのですか?」
「まあな。お前たちまで気絶させてしまっては本末転倒だからな。それよりこのかは大丈夫だ。ただ眠らされていたらしいからな」
「そ、そうですか……よかったです」

士郎さんは神楽坂さんにお嬢様を預けた後、先ほど貼り付けにした二人を見やった。
途端、士郎さんは双剣を構えた。
見ると気絶している二人は水に飲まれて沈んでいっていた!?

「逃がすか!」

その光景に呆気にとられていたが士郎さんはいち早く疾走して剣を振り下ろした。
だが一足遅かったみたいで剣は地面に当たって辺り一面に金属の音が響き渡った。

「くっ……逃がしたか」
「厄介ね。あの二人以外にも敵はいるようよ、シロウ」
「そうだな。あれは何かはわからないが高等な転移魔法なことは確かだろうからな」

「う、ん……」
「このか!?」

そこでお嬢様が起きたらしく目を開いた。

「ん……あれ? せっちゃん……? ……ウチ…夢見たえ…変なおサルにさらわれて……でも、せっちゃんやネギ君やアスナが助けてくれるんや……」
「よかった……もう大丈夫ですよ、このかお嬢様」
「……よかった―――…せっちゃん、ウチのコト嫌ってる訳やなかったんやなー……」
「えっ…そ、そりゃ私かてこのちゃんと話し……はっ! し、失礼しました! わ、私はこのちゃ……お嬢様をお守りできればそれだけで幸せ……いや、それも影からひっそりとお支えできればそれで……その…あの……御免!!」
「あっ……せっちゃ~ん!?」

その光景を一歩下がって見ていた士郎とイリヤは、

「うん、まぁ……進展はあって良かったというところか。このかの誤解も解けたみたいだしな」
「そうね。あれならもう後は刹那次第といったところね」

するとアスナが何か思ったのか、

「桜咲さ~ん! 明日の班行動一緒に回ろうね~。約束だよ~!」と、去っていく刹那に言っていたので良き事かなと思った。

 
 

 
後書き
月詠のいけないスイッチがON。

それと、ここら辺の文章に既視感を感じる人は多分いるでしょうから補足。
『吸血鬼になったエミヤ』でも似た展開ですがこちらが本家です。 
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