剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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024話 修学旅行編 2日目(01) 二つの告白(?)
前書き
更新します。
修学旅行、二日目の朝。昨日はこのかを人質に取られてしまい、
それを姉さんと追おうとしたが見掛けがふざけているとしか言い様がない式神による妨害によって足止めを受けて、それらを一掃した後、
ネギ君達に遅れる形で駅に合流したがこのかを誘拐したと思われる呪符使いがこのかの事を物とか道具としか言えないような暴言を吐いた為に俺は久しぶりに殺気をお見舞いしてやった。
しかし、ネギ君達も感じてしまうほどの殺気を放ってしまい特に一番一般人といってもいいアスナは青い顔をしていたからこれからはもう少し感情操作をして自制しなければ。
……帰った後、遠坂よろしく姉さんによるガンドの嵐という名の洗礼はもう受けたくないからな。
過去、遠坂と姉さんによるなぜか開かれた衛宮家内ガンド鬼ごっことかいう苦いトラウマが蘇える……。
閑話休題
あれから俺はネギ君達を先に帰らして、西の奴らとの攻防により破壊された京都駅の階段、呪術によって水浸しにされてしまった列車、刹那がネギ君をくせものと勘違いして斬ったらしい露天風呂の岩を順々に修理して回った。
その後、深夜で悪いと思ったが学園長に連絡を取ってこのかが誘拐されたことを報告した。
それで色々話は交わされたが今現在タカミチさんは出張中、こちらに来ている他の魔法先生も修学旅行の引率兼警備にまわっているらしく、結局のところは自分達だけでこのかを護るという話に落ち着いてまた何かあったら連絡することになった。
そして朝の全体での朝食だが、やはりというべきか音羽の水お酒混入事件によって酔いつぶれてしまっていた面々は、
「……昨日の清水寺の滝から記憶がございませんわ」
「う゛―――……」
「頭が痛いよぅ~……」
「せっかくの旅行初日だったのに……」
と、嘆いているものが後を絶たなかった。
ま、それは運がなかったから諦めてくれとしか俺は言えん。
そんなことを楽しそうに食事を摂っているネギ君の隣で考えながらもくもくと食事をする傍らで、これからの方針を考えていた。
ちなみに姉さんは違う席で食事中だ。方針についてはレイラインで会話することにしている。
するとふと誰かに声をかけられたので意識を浮上させて声の主の方へ顔を向けるとこのかが立っていた。
「ネギ君に士郎さん、おはような」
「あ、このかさん。おはようございます」
「おはよう、このか。あれからゆっくり眠れたか?」
「はい。それなんやけど夕べはありがとな。何やよーわからんけどせっちゃんやアスナと一緒にウチのこと助けてくれて」
「い、いえ。ほとんど僕は刹那さんについていっただけで……それに最後は士郎さんが片付けてしまいましたから」
「ま、俺もたいしたことはしていないがな」
「ふ~ん? よくわからんけどほんまありがとな」
(細かいこと気にしない人で助かったっすね、士郎の旦那)
(そうだな、カモミール)
(それより士郎の旦那。夕べは凄い殺気でしたね。俺っちも思わず固まっちまったぜ)
(それについては謝罪しよう。昨晩は自制がきかず本能的に殺気を放出してお前達にも味合わせてしまったな)
(なに、気にしてないっすよ。それは裏返せばこのかの姉さんを助けたいが為の怒りだったんすから)
(む、そう言われるとなにやら恥ずかしいものだな)
(お? 士郎の旦那にしては珍しいすっね。いいもの見れ(……蒲焼)……すみません、謝りますから。ほんとうに……)
(ま、いい。それより昨日の件で敵は奴らだけではないとわかったから用心した方がいいな)
(そうっすね。他にも西の奴らはいるみたいっすからね)
(まぁ奴らは昨日の件で失敗したこともあり下準備もあることだろうし今日は仕掛けてはこないだろう。直感だがな。それに今日は観光地の場所は奈良だから早々昨日みたいな事は起こんないだろう。だが用心はしておいたほうがいいとだけ伝えておく)
(了解っす)
(それに……)
俺はカモミールとの会話を中断してある方向を見る。それにつられてカモミールも見たがどうやら納得したような顔をした。
「せっちゃ―――ん?なんで逃げるん?一緒に食べよー?」
「わ、私は別に―――!」
まだ向かい合える準備が出来ていないのか刹那は顔を赤くしながら必死にこのかから逃げていた。だが昨日とはずいぶんと二人の間の雰囲気が変わったものだ。
(あれなら刹那も隠れるに隠れられんだろう?)
(確かに……)
「カモ君に士郎さん? さっきからなにを話しているの?」
「いや、ただ微笑ましいな、という話だよ、ネギ君」
「そうっすよ、兄貴」
「うん、確かにそうですね」
ふぅ、危なかったな。俺は別段大丈夫だが昨日の件でネギ君は結構神経張り詰めていると聞くからあまり話には参加させないようにしておいているようだが正解だったようだな。
そして朝食後に俺はネギ君達とはいったん別れて姉さんと合流していた。
「それで今日姉さんはどうするんだ?」
「うーん……それなんだけどシロウと歩きたいのは山々なんだけれど、1班が昨日のお酒でまだほとんどが体調を崩しているようで私はそちらにいくことになったわ」
「そうか。ではそちらは任せた」
「う―――……少しは引き止めてよ、シロウ~……?」
「あー、すまん。だからそんな顔しないでくれ」
……危ない。泣き落とされそうになった……あれは遠坂と違って猫をかぶってないから余計性質が悪くなるんだよな。
とりあえず勃発したネギ君争奪戦の末に宮崎の誘いにネギ君は乗ることになったらしく、希しくもアスナ、このか、刹那の三人が揃っている5班にいくということなので俺もそこに着いて行くことになり話はなんとか逸らした。
◆◇―――――――――◇◆
時間は少し進んで現在、奈良公園を歩いているところだ。
それは別に構わない。特に変わったこともないからな。それなので俺はネギ君、アスナ、刹那、カモミールとともにこれからの話し合いをしていた。
だが、そこで俺は早乙女と綾瀬にアスナとともにどこかへ連れてかれてしまった。
このかの方は刹那がまた逃げているようだが一応護衛にはついているということで安心して任せた。
「それで? なんで俺はこんなところに連れてこられたのかね?」
「ん―――……士郎さん、あれを見て何か思わない?」
「……ん?」
影から早乙女と綾瀬に指差された方を見るとそこにはネギ君と宮崎が歩いていた。
だが、ただ歩いているのではなく宮崎はなにか顔を赤くしてもじもじしながらネギ君と歩いている。
ふむ、これはいわゆる……。
「そうだな。そういえば宮崎はネギ君のことが好きだったか? それで無理やり二人きりにさせたと?」
「意外ですね。てっきり士郎さんは気づいていないものだと思っていましたです」
「そんなことはない。聞くに宮崎は男性が苦手だと言われているがネギ君にはそんな仕草は見せていないからな」
「なにげに士郎さんもわかってるじゃん! そうなんだよね、のどかはネギ君が好きだからこの旅行でどうにかしちゃおうっていう話で!」
「よく俺の前で言えたものだな、早乙女。新田先生とかだったらとっくに講義しにいくものだぞ?」
「士郎さんはそんなひどいことはしないと思ったから話したです……」
そこで綾瀬にそんな返しをされてしまって思わず俺は言葉が詰まった。
「……まぁ、確かにそうだ。恋愛は個々人自由だからな。俺は何も口を挟まないことにする。これでいいか?」
「ありがとう、士郎さん! やっぱ話がわかるね!」
「ありがとです、士郎さん」
「なに、別に礼をされることはしていない。それと俺は覗き見する趣味はないんで二人も程ほどにしておくんだぞ。では俺は他のところを周っていることにするから後は頼む」
──Interlude
士郎がその場を後にしてどこかにいってしまった後、夕映とハルナはため息をつきながら、
「本当のことを言いますと士郎さんとこのかさんの事も応援したいところだったのですが……」
「そーだよね。でも今このかはなぜか桜咲さんに付きっ切りだし肝心の士郎さんも他人のことはわかるのに自分のことになると無頓着だしねぇ……」
「士郎さんはネギ先生と同じく私の知る中ではもっともまともな部類に入る男性ですからどうにかしたいのですけど」
「こればっかりはのどかみたいにこのかにも頑張ってもらう機会を待つしかないねぇ……」
「そうですね」
そして二人はネギとのどかを覗きながらも、またもやため息をついていた。
Interlude out──
◆◇―――――――――◇◆
Side 桜咲刹那
「もー、なんでこのかから逃げちゃうの、刹那さん?」
「し、式神に任せてありますのでお嬢様の身は安全ですから」
「そーじゃなくて、なんで喋ってあげないのよ?」
「そうだぜ、刹那の姐さん?」
いや、ですね。私もできることならお嬢様……このちゃんとお話したい。
士郎さんには私の真実の姿を見せたときに勇気をもらった。
だけど、まだ私は恐れている。このちゃんに拒絶されたらどうしようかと。
……士郎さんは私を受け入れてくれたけど、昔に散々言われてきたいくつもの畏怖、罵倒といった言葉が頭を巡って、そのただ一歩を踏み出せないでいる。
神楽坂さんの言葉がまるで反対の耳から抜け出ていくような錯覚を覚えながら歩いていると、ふと物音が聞こえて振り向くと木の影には涙を流している宮崎さんがいた。
「宮崎さん……?」
「ちょ! 本屋ちゃん、どうしたのよ!? なにかあった?」
神楽坂さんが宮崎さんに駆け寄ったがどうにも尋常じゃない様子でとりあえず休憩できる場所で落ち着いたところで話を聞いてみた。
だけど話の内容があまりにすごいので表面上は普段の顔をしていたが、内面は驚きでバクバクモノだった。
「マジで!? え―――!? ネ、ネギに告ったの!?」
「は、はいぃ。いえ、しようとしたんですが私トロイので何度も失敗してしまいまして……あの、すみません。桜咲さんとはあまり話したことがないのにこんな話をしちゃって」
「いえ……ですがネギ先生は見た目通りまだ子供ですがどうして……?」
「えっと、それはですね……」
それから宮崎さんはネギ先生について思っていることを語ってくれた。
まぁ確かに普段のネギ先生は子供ですが、あのエヴァンジェリンさんとも士郎さんの助けがあったが倒したといっていましたから……。
それに昨晩の行動も初動が早かったですから。そしてしっかりとした目標は持っている。
「……―――それで今日は思い切って自分の気持ちを伝えようって……、………」
ん? 宮崎さんがこちらを見て止まっている。どうしたのでしょうか? アスナさんもどうしたのか聞いているようだ。
「明日菜さん、ありがとうございます。桜咲さんも怖い人だと思ってましたけどそんな事ないんですねー」
「え……?」
私は少しぼけっとしている間に宮崎さんは「勇気をもらいました」といって駆け出していった。
「も、もしかしてホントに告白するつもりかな……?」
「そのようだぜ! いや、俺っち感動したっす! こうしちゃいられねぇぜ。早いとこ嬢ちゃんの後を追おうぜ!」
「…………」
アスナさんとカモさんが宮崎さんを追った後、私も気を取り直して二人の後を追った。
……でも、そうか。確かにそう見られてもしかたないかな?
内心で呟きながら宮崎さんがいる場所まで到着するとすでにそこにはネギ先生が一緒にいてアスナさん達は草葉の陰で展開を見守っていた。
◆◇―――――――――◇◆
Side 衛宮士郎
俺は刹那達とはわざわざ遠くまで離れてあまり人が立ちよらなそうな林道を一人歩いていた。
「さすが京都の名所だな。この季節にもかかわらず実にいい景色だ。それで……俺になにか用があるのかね?」
俺はこの奈良公園に着いてから微弱ではあるが感じていた視線と気配に「やれやれ…」とかぶりをふりながら一人になれる時間を待っていた。
そして綾瀬達と別れた後、誰にも気取られないように足を林道まで運びその視線の主に問うた。
しばらく反応はなかったがなにか周りの雰囲気が変わったと感じたときには俺の目の前に昨日気絶させた刹那が言うには敵側の神鳴流剣士が立っていた。
しかし、あらためて見て思ったことだが、このような少女向けの服装をした者が刹那のいう神鳴流剣士の姿なのかと思うとまたいらん頭痛がするのでその考えはカットした。
「やっぱりウチの視線に気づいておったんですね~…?」
「俺だけに向けられていたようだからな。刹那も気づいた素振りは一切させていなかった」
「当然です~。センパイのこともウチは気に入ってますがあんさんは別格や……ウチ、昨日の殺気を受けてとてもあんさんのこと惚れてしまいました~」
「……残念だが俺は敵と恋仲になるつもりはないぞ?」
「それもいいですがウチはあんさんとは殺し愛をしたいんですわぁ」
「くっ…まさかそちらの方とはな。まさか今ここで事を交えようなぞとは思っていまい?」
「ウチはそれでも別にいいんですが雇い主はんが今日は手を出してはだめと言われたのでせめてご挨拶だけでもと…月詠いいます。あんさんの名前はなんですか?」
「もうそちらは調べがついているだろうに……まぁいい。俺の名は衛宮士郎だ」
「士郎はんですか~。わかりましたー、ではウチはもう失礼しますね~。明日もし会うことがあるなら殺し愛……しましょうね~♪」
月詠はうふふと笑みを浮かべた後、旋風のようにその場から消えた。
そして俺はというと、
「やれやれ……また厄介な奴に目をつけられてしまったな。まさか戦闘狂だったとは。刹那達にも警戒をするだけしておくか。ああいう類は厄介だとな」
それから刹那達と合流したのはいいのだがなぜかネギ君が熱を出して倒れてしまったという話を聞いて、なんでさ…?と思わず呟いた。
後書き
月詠ロックオン。
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