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レーヴァティン

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第百三十六話 鹿児島攻めその十二

「それでもですね」
「あくまで政の拠点のみだな」
「それであした小さなお城ですか」
「華美な城、堅固な城よりもな」
「兵を繰り出して戦う」
「そうして領土を拡大していく」
「そうした考えだな」
 英雄は九州の勢力の考えを察して述べた。
 そしてだ、さらに言うのだった。
「九州全土を掌握していたがやがてな」
「本城をですか」
「薩摩は南にあり過ぎる」
 九州の南端、そこにあることにも言及した。
「それではな」
「九州全体を治めるには」
「難しい、だからな」
 それでというのだ。
「やがてな」
「九州の他の場所にですか」
「本城を移すつもりだったかもな」
 九州全体を的確に治める為にというのだ。
「そうだったかもな」
「そうした考えでしたか」
「そうかも知れない、だがあの城はな」
 英雄はその城を見続けている、そうして言うのだった。
「守るには難しい」
「もう最初からですね」
「それは考えていない、やはり攻めることと政を考えてな。そして華美もな」
「嫌っていますか」
「そうした考えだな」
「質実剛健だね」
 桜子はそこに見るべきものを見ていた、そのうえでの言葉だった。
「いい考えだね」
「武士らしいか」
「ああ、それに人の上に立つならね」
「贅沢はか」
「それに溺れるとかね」
「そうした者はか」
「やっぱり望ましくないってね」
 その様にとだ、桜子は英雄に笑って話した。
「あたしとしてはね」
「思うか」
「酒池肉林とか建築好きとかね」
 そうしたことはというのだ。
「あたしは好きじゃないんだよ」
「建築だな」
「ああ、日本じゃ建築好きな人って少なかったけれど」
 強いて言うなら豊臣秀吉であろうか、大坂城に聚楽第に伏見桃山城にと築かせている。だが他にはこれといって日本に建築好きの権力者は見当たらないと言えるだろう。
「外国は違うね」
「権力を持つと何かとな」
「派手な宮殿とか造りたがるね」
「ベルサイユ宮殿もそうだな」
「エル=ミタージュとかね」
「そうした傾向があるな」
「始皇帝なんて凄かったし」
 この人物がこうしたことで最も有名であろうか。
「阿房宮、自分の宮殿にね」
「万里の長城に驪山陵とな」
「やたら造らせていたね」
「その結果だったな」
 多くの建築の実行即ち民への労苦を強いた結果だ、それで多くの予算がかかり重税になり労働力として徴用されるからだ。
「始皇帝が死ぬとな」
「その負担に怒った人達が叛乱起こしたね」
 陳勝呉広の乱だ、中国最初の民衆叛乱でもある。
「その結果国が潰れたんだよね」
「そうなったな」
「そういうのを見てだよ」
「質実剛健な統治者はか」
「あたしは好きになったんだよ」
「そういうことか」
「酒池肉林も文字通りは好きだよ」
 即ち酒と肉をふんだんに楽しむことはというのだ。 
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