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レーヴァティン

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第百三十六話 鹿児島攻めその十三

「一番いいのは日本酒とすき焼きだね」
「この世界にもあるな」
「そういうのは好きなんだよ」
 文字通りの酒池肉林はというのだ。
「けれど途方もない贅沢の方はね」
「嫌いか」
「ああ、その言葉の意味のね」
 酒池肉林は漢字をそのまますれば酒と肉をふんだんに楽しむということでこの浮島でも桜子達が起きた世界でも何でもないことだ。だが。
 この言葉の語源である殷正式には商の国の時代では酒も肉も馳走だった、それを池にし木々に大量に吊るすまぞ途方もない贅沢だったのだ。
 その贅沢についてはだ、桜子はこう言うのだった。
「そういうのは嫌いだよ」
「それで民衆が苦しむならか」
「余計にね」
「その考えはいいな」
「そうだよね、あんたも大坂城築いたけれど」
「それでもだな」
「女の子は好きでも贅沢はしないね」
 英雄のこのことも言うのだった。
「お酒は飲んでも」
「建築もだな」
「特にしないね」
「俺は酒と女は好きだが」
 それでもというのだ。
「しかしだ」
「贅沢はだね」
「特にな」
 これといってという口調だった。
「興味はない」
「そうだよね」
「派手な内装の御殿や見事な服もだ」
 こうしたものもというのだ。
「特にな」
「興味がないね」
「酒と女は好きにしても」
 それでもというのだ。
「遊郭の様なことでだ」
「いいね」
「充分過ぎる」
「まあそれはそれで贅沢かも知れないけれど」
「国を傾ける様な贅沢はな」
「あんたは興味ないね」
「女は好きでもな」
 このことは事実であろうともというのだ。
「遊郭でいい」
「言うならハーレムはだね」
「興味がない、そして服もな」
 これもというのだ。
「絹でなくともいいしな」
「木綿でもいいね」
「別にな、御殿とやらも」
 こちらの贅沢もというのだ。
「大坂城のものでいいしな」
「別荘みたいなものもだね」
「いらない、というかだ」
 英雄は桜子にこう返した。
「そうした贅沢は楽しいか」
「その時点でだね」
「俺としてはな」
「疑問だっていうんだね」
「少なくとも俺の趣味ではない」
 こう言うのだった。
「まさにな」
「もう趣味じゃないとね」
「人は楽しまないな」
「そうだね、まああんたの好みがね」
 例えそれが酒池肉林であろうともというのだ、英雄は酒好きであり女好きであることが確かでもというのだ。
「国を傾けるものでないことはいいことだよ」
「そうした趣味を持っていたらだな」
「本当に国が傾くからね」
「ハーレムの様な酒池肉林に建築はか」
「もうその二つが重なるとね」
 それこそというのだ。 
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