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おぢばにおかえり

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第五十六話 卒業式の前その十九

「怒らない」
「その子にとって許せないことだったのかしら」
「先輩がしたことが」
「ええ、何をしたのか知らないけれど」
「あそこでね」
 ここで私は後ろを振り向きました、西の礼拝堂の方を。
「同じクラスの男の人思いきり罵ったりその人が帰る時校門のところで集団で待ち伏せして聞こえる様に陰口言ったらしいわ」
「ああ、そんなことお母さんがされたら」
 お母さんは私のお話を聞いて言いました。
「絶対に忘れられないわ」
「そうなるのね」
「だからね、若しもね」
 こう私に言うのでした。
「彼がされたらね」
「阿波野君が」
「そう思ってだと思うわ」
「そうなのね」
「それでそこまで言ったと思うわ」
 先輩に対してです。
「お母さんだってそんなことされたら立腹するし」
「けれど先輩みたいな人が」
 私は先輩について私自身が素直に思うことを言いました。
「そんなことするとは思えないし」
「誰だって間違いはあるでしょ」
「だからなの」
「それで色々な一面があるでしょ」
 人はそうしたものだというのです。
「だからね」
「先輩でもなの」
「ついつい怒り過ぎたりして」
 そうなってというのです。
「やってしまったかも知れないでしょ」
「そうなの」
「そう、それでそんなことはね」
「やったらいけないことね」
「そう、絶対にね」
 そうだったというのです。 
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