おぢばにおかえり
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第五十六話 卒業式の前その二十
「人は時としてそんなことをしてしまうものよ」
「誰だって間違いはあるから」
「それあの男の子もね、そうしたことにね」
「立腹したのね」
「自分がされたらって思ったのでしょうね」
あの時の阿波野君の気持ちがわかったかも知れないです、確かに私もそんなことをされたら一生忘れられないかも知れないです。
「それで怒ったか」
「他にもあるの」
「悪いことをしたと思って」
「先輩が」
「それでかも知れないわね」
「そうなのね」
「ええ、千里も覚えておいてね」
私の方を見て言ってきました、ここで南の礼拝堂の正面に来たのでかんろだいに対してお辞儀をしました。
それからです、私にまた言ってきました。
「どんな人でもね」
「間違えることがあって」
「それで反省したりね」
「怒られたりするの」
「間違えない人はいないから」
お母さんがよく言っていることです。
「そして反省しない人も怒られない人もね」
「いないのね」
「それで千里の先輩もよ」
「間違えてなの」
「反省してるのよ」
「それで阿波野君も怒ってるのかしら」
正直今も先輩にあんなこと言ってと思っています。
「あの時は」
「そうよ、誰だって許せないことがあるでしょ」
「そうね、けれどそこをよね」
「出来るだけ怒らないことよ」
「立腹しないことね」
「千里の顔みたら入学の時よりも穏やかになってるから」
自覚はないです、このことは。
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